社会を支えるマルチクラウド–仮想化に始まるテクノロジーの基礎知識
今回は「社会を支えるマルチクラウド–仮想化に始まるテクノロジーの基礎知識」についてご紹介します。
関連ワード (マルチクラウドの意義とテクノロジー、特集・解説等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「不確実な現代、企業はデジタルテクノロジーを積極的に活用していかなくては、ビジネスを維持し、さらに成長することができない」――このようなメッセージがさまざまな形で発信され、デジタルトランスフォーメーション(DX)やデジタル変革というキーワードを聞くことが珍しいことではなくなりました。デジタル庁が国全体をデジタル化すべく、私たちの生活に密接な行政の仕組みに、いよいよテクノロジーでメスを入れ始めていることも関係しているかもしれません。しかし、日本全体のデジタル化を待つ前に、私たちの社会が既にデジタルテクノロジーなしでは生活が成り立たないことは、みなさんも容易に想像できるでしょう。
例えば、ネット上のおすすめ情報をスマートフォンで調べ、旅行サイトから気に入った宿を予約します。出かける際に、スマートスピーカーで天気を確認し、目的地に向かう途中にカーナビが周辺のおすすめのランチスポットを提案してくれます。途中で仕事のメールチェックも忘れずに……。
このような週末旅行のよくある場面は、どれもデジタルテクノロジーで構成されたサービスを利用しています。そして、これらのサービスを構成するテクノロジーの中でも、非常に重要なものがクラウドです。ユーザーがさまざまなクラウドで提供されるサービスにインターネット経由でアクセスし利用することで、ユーザーの行動やサービスの利用履歴がクラウドに保存され、より好みに合ったサービスの提供に利用されます。
サービス提供者側も、やはりクラウドを活用しています。じっくり時間をかけ、オーダーメイドでイチからサービスを作り上げるのではなく、既にクラウドで提供されている複数の機能・サービスを組み合わせることで、より早く、安く、新たなサービスとして提供するということが珍しくありません。
つまり、私たちはさまざまな種類のクラウドを利用するユーザーであり、サービスの提供者でもあるということになります。そして、デジタル化に後戻りはありません。このような状況は、新しい社会のインフラがマルチクラウドの上に実現され、これらも続くといっても、言い過ぎではないと思います。
新しい社会を支えるインフラであるマルチクラウドは、その定義が使う人によって微妙に違うことがあり、時々会話がかみ合わないということがあります。その他にも、クラウドを意味する表現が多く存在し、私たちを混乱させることがあります。よく使われるクラウドにまつわる表現を下記の表1にまとめました。
これらの表現の意味を理解する上で重要なポイントは次の3つです。
サービスの提供と運用の責任主体によって、「パブリッククラウド」と「プライベートクラウド」の違いがあります。パブリッククラウドには、管理の「責任分界点」があり、クラウドサービスの提供者が管理している領域を利用者がカスタマイズしたり、メンテナンスの時期や内容を決定したりすることはできませんが、いつでも自由にサービス利用を開始したり終了したりすることができ、俊敏に要件を満たすことができます。一方で、プライベートクラウドは変更や個別要件に対する自由度が高く、利用者の要件に柔軟に対応することができますが、その構築から運用までの全てを利用者自身で実施する必要があります。
異なる種類のクラウドサービスを幾つ、どのように使っているかで、「マルチクラウド」と「ハイブリッドクラウド」の違いがあります。ハイブリッドクラウドは、2つ以上のクラウドを使うことになるので、マルチクラウドの中の1つの形態とみなすことができます。
「as a Service」で表現されるのは、クラウドで提供されるサービスの種類と考えることができます。これらのサービスはパブリッククラウド、プライベートクラウドを問わず提供されます。どのようなサービスが提供されているかは、クラウドによって違いがありますし、提供サービスの内容も異なる場合があります。
誰が、何を、どこで提供しているのかを意識すると、現在の読者の皆さんの環境がどのようなクラウドで構成された「マルチクラウドな状態なのか」が見えてくるのではないでしょうか。