MetaMoJiと大林組、建設現場の安全管理を高度化する「安全AIソリューション」を開発

今回は「MetaMoJiと大林組、建設現場の安全管理を高度化する「安全AIソリューション」を開発」についてご紹介します。

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 MetaMoJiは、大林組および労働者健康安全機構 労働安全衛生総合研究所(安衛研)と共同で、建設現場などで利用できる「安全AIソリューション」を開発、2023年から正式サービスを開始すると発表した。2022年10月末まで先行試用企業を数社程度募集し、検証結果を製品化に生かす予定だ。

 安全AIソリューションは、MetaMoJiが開発した建設現場向け業務アプリ「eYACHO」や、デジタルノートアプリ「GEMBA Note」に対応する。独自の「Dynamic Checklist(ダイナミックチェックリスト)」により、労災データなどを基に情報を分析、抽出し、アプリ上の安全衛生日報や作業計画書などに安全管理情報を表示できる。作業者や現場の状況に最適な内容を表示し、個人の経験や勘に依存しがちな安全管理業務を改善する。リスクの可視化と安全管理の高度化を実現するという。

 MetaMoJi 代表取締役社長の浮川和宣氏は、「事故や災害は頻発するわけではなく、使い慣れていないツールで準備しても事故発生時などには使えないといった事態を招く。日常的に現場で使うeYACHOやGEMBA Noteの重要機能の一つとして安全管理のソリューションを提供すべく、AI(人工知能)を活用して高度にできることを目指した」と語った。

 ここでは独自の安全リスク評価モデルAIを構築。建設現場の実際の状況や工法、作業者の状況に応じて注意すべき項目を表示するダイナミックチェックリストを同社の自然言語処理技術などを駆使して実現した。そこに、労働災害管理の方法論を持つ安衛研と大林組の現場の知見を組み合わせて、安全AIソリューションとして提供する。

 専務取締役の浮川和初子氏によると、労災情報からベテランの経験やノウハウを労働災害データベースとして構築し、リスク予測ベースも構築。この2つの共同研究による成果をeYACHOやGEMBA Noteで活用しやすいようにしている。労働安全衛生管理プロセスに対応して、安全本部から現場への安全注意に関する管理プロセスにも活用したり、安全教育のためのツールとしても活用できたりするという。

 安全AIソリューションは、「利用データ作成」「リスク予測データベース構築」「危険予知と安全対策の実施」の3つのフェーズで構成される。

 「利用データの作成」は、厚生労働省の労災事例データや企業が蓄積した労災事例データを利用、組織内外に散在しているこれらの労働災害情報を安衛研の「IMTOC」表現によってデータベース化した。MetaMoJiでは、この部分的に詳細化した拡張版IMTOCモデルを用いて、知識の構造化を実現しているという。

 「リスク予測データベース構築」では、労働災害データを基に自然言語処理AIがリスク予測データベースを自動構築し、さまざまなデータサイエンスに基づく分析によってリスクを自動判定する。構造化データと非構造化データを用いて、災害傾向の把握、状況のパターンの抽出、原因の類型を捉えるといった分析を行うという。MetaMojiの自然言語解析技術を活用して、リスク文章の意味を解析することも可能。ここでは、データサイエンスと知識工学を基礎とし、リスク知識の構造化に基づくAI技術を採用しているとした。

 「危険予知と安全対策の実施」では、現場利用されるeYACHOやGEMBA Not上で、新たな労災情報を登録する一方、個社向けのリスク予測システムとして最適化した分析を行い、ダイナミックチェックリストによる帳票生成を通じて、徹底した安全対策を効率的に行えるとした。

 実際に建設現場では、朝礼や工種ごとの作業手順の確認、現場責任者による安全衛生の打ち合わせ、安全衛生の巡視などの活動が行われているが、安全AIソリューションでは、これらの活動の際に使用する帳票に、安全管理に関する情報を表示できるという。

 例えば、作業予定記入票では、作業内容や使用機材、作業人数などを記入し、「リスク」のボタンを押すと、それらの内容から予測される危険を重要度順に一覧表示、作業予定記入票に危険予測項目と対策方法を表示できる。また、「事例」というボタンを押すと詳しい内容を参照できる。

 作業内容を「足場解体組み立て」とした場合でも、鉄筋工と鳶工では予測リスクの内容が異なるほか、同じ鳶工でも20代と50代でも予測されるリスクが異なるため、それぞれの状況に合わせた安全管理情報を表示できる点も特徴になる。

 安全AIソリューションが稼働するeYACHOは、2015年8月に発売され、大林組や前田建設、鉄建建設、東日本高速道路などの建設業界に導入されている。建設現場で利用されていた野帳(レベルブック)をデジタル化したもので、現場での備忘録や打ち合わせmpメモ、測量結果の記録などをタブレット端末に手書き入力できる。瞬時にメモしたり、必要な箇所を検索したりでき、共有したい内容をそのまま転送したりといったこともできる。現場で使いやすいテンプレートやアイテムを用意し、野帳の手軽さと、デジタルによる管理性の高さを両立している。

 また、GEMBA Noteは、eYACHOと同様の技術を活用し、あらゆる現場記録ができるほか、これらのデータを適切に処理する各種編集機能を搭載している。事務所に戻ることなく現場で完了する業務を増やし、作業の生産性や業務品質の向上、ミスの削減に大きく貢献できるという。システムの専門家でなくても、ワープロ感覚で簡単に帳票を作成でき、現場に即した業務アプリの構築が容易に行える点も特徴となっている。

 発売当初からeYACHOを活用し、今回のソリューションを共同開発した大林組は、安全AIソリューション向けに現場での災害シートを提供。大林組 DX本部 本部長室部長の堀内英行氏は、「現場の暗黙知を形式知にしたいと考え、さまざまな分野の検討を行ってきたが、eYACHOの共有ノートの中でも体系的にデータを蓄積する『安全』をターゲットに分析し、東京本店建築現場における2008~2019年の12年分、2155件の災害シートから属性ごとのリスク発生確率分布や発生ルールを導出した」と説明する。

 これをeYACHOの帳票/アグリゲーション機能によって、建設労働災害危険予測(リスクウェアネスツール)のプロトタイプを構築し、ここから現場作業に潜む危険やリスクを事前に作業員に周知し、気づきを与えるようにしたという。「今後は全国の土木、建設現場の災害シートを学習させ、より精度の高い安全AIソリューションの開発につなげたい」と話した。

 発表の記者会見では、明治大学の向殿政男名誉教授もコメントを寄せ、「情報通信技術は、システムや作業の効率化、スピード化、コスト削減、機能の高度化などに活用されることが多いが、安全確保に直接用いる試みは少ない。労働者の安全確保に特化することは素晴らしい取り組み。厚生労働省の災害データベースは、内容がかなり丸められているが、大林組の具体的な災害事例データを活用できている点も重要で、MetaMoJiが労働災害防止におけるICT活用プラットフォームを作り上げていくことに期待したい」などと述べた。

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