トライポッドワークス、モビリティーと建設向けIoTビジネスにフォーカスした理由

今回は「トライポッドワークス、モビリティーと建設向けIoTビジネスにフォーカスした理由」についてご紹介します。

関連ワード (CIO/経営、デジタル岡目八目等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 IoTデバイスを活用したITサービスとセキュリティ関連ビジネスを展開するトライポッドワークスが、IoT活用のターゲットをモビリティーと建設に絞り込んで、事業拡大を図る方針を打ち出した。

 2005年に創業した同社は、ドローンなどを活用したIoTビジネスを模索してきたが、「マネタイズが難しい。新しい技術が出てくると、行政や大手企業などが実証実験(PoC)するが、時期尚早となり、ビジネスにならない」と同社 代表取締役社長の佐々木賢一氏は、行政や大手企業に振り回されてきたと話す。

 そうした中でも、幾つかビジネスに結び付く分野が見えてきた。それがモビリティーと建設だ。モビリティーは自動車にセンサーを取り付けて、データを収集・分析し、活用する。建設はIoTカメラによる映像の解析、活用になる。同氏は「そこにフォーカスし、それ以外はやらない」のだという。

 理由は、建設がモビリティーの1つであり、運輸もいわば人海戦術の業種ということにある。また、労働人口が減少する中で、人材の採用はますます難しくなっている業界でもある。両業界とも仕事が増える一方、ネット通販の利用拡大によって物流量が急増する運輸は、モノをどのように効率的に運ぶのかが喫緊の課題だ。建設においても、建物のメンテンナンスなど小規模な工事が増加している。しかし同氏によると、「自動化はまだ先のこと。省力化も限定的で、どうしても人が必要になる」という。

 さらに働き方改革を迫られており、その対応時間の猶予のない業種でもある。仕事量が増加するにもかかわらず、労働時間が限られ、かつ安全性の担保を求められる。これまでのようなスキルを持つ人材を雇えなくなれば、事故が起きる可能性が高まるかもしれない。そのため、「政府は働き方の制度を改革する一方、ITで生産性と安全性を上げる仕組みを後押ししている」のだと佐々木氏は説明し、加えて「同じPoCでも、この2つはビジネスにつながりはじめている」という。そこで、同社は建設や運輸の現場にセンサーを取り付けて、さまざまな情報を取得し、生産性と安全性の向上を図ることができるITサービスの共同開発を提案している。

 例えば、住友ゴム工業と共に、タイヤにIoTデバイスを組込んだバスやトラック向けのクラウドサービスを共同で開発、提供し始めているという。タイヤの空気圧や温度などを監視し、日々の点検作業を軽減する一方で安全性を向上させる。

 佐々木氏によると、「12輪ある大型トラックの点検は1台当たり15分かかる。それが10台、20台あればドライバーにも運転管理者にも負担がかかる」と指摘する。センサーからクラウドに空気圧だけではなく、摩耗や脱輪などと関係のあるデータを取得できれば、安全性はより増す。こうしたサービスの拡充や、タイヤの個体管理を実現できれば、新たなビジネスが生まれることも期待できるだろう。

 もう1つは、自動車用品販売を展開するオートバックスセブンと共同開発した、ドライバーのアルコール検査を遠隔地から行えるクラウドサービスだ。同氏によると、消費者らに車関連商品を店舗販売する同社にとって、企業間取引(B2B)へ進出する最初のITサービスになったという。社用車の管理サービスも共同で開発している。

 実は、これらクラウドサービスは、センサーとエッジサーバーからデータを集める車両向けIoTプラットフォームを応用したもので、タイヤにセンサーを付けたり、アルコール検査のセンサーを付けたりし、異なるアプリケーションに仕立てているという。「そして、その分野に強い企業と組んで、幅広くデリバリーするのが当社の戦略になる」と佐々木氏はいう。

 例えば、トライポッドワークスがタイヤにセンサーを安全に取り付けて、全国展開するノウハウも力もないだろう。だからこそ、住友ゴムやオートバックスと関係を深めるために資本提携をするという。出資は数%程度だが、先行投資型の同社にとって資金調達の有効手段の1つにもなっている。「機密性の高い関係をつくるためにも出資してもらう」と同氏は述べる。

 違う言い方をすると、「システムを作って終わりではない」ということ。レベニューをシェアする。もちろん、トライポッドワークスもシステム開発に投資し、その運用・維持費を負担するという。サービスを売る主体が協業企業、システム作りがトライポッドワークスという役割で、ビジネスを一体で展開する。つまり、同社はシステム開発を請け負っているわけではない。

 佐々木氏によると、ユーザーの成功や失敗とは関係なしに、収益になる受託開発のビジネスモデルは不自然で、「売れたら、当社がもうかる。売れなければ、当社は投資で終わる」。それが真のITサービスということだろう。

 日本オラクルで東北支社長を務めた佐々木氏が、東北出身らの優秀な技術者の受け皿として2005年に立ち上げたトライポッドワークスは、従業員約50人、売り上げ約14億円の規模になり、第3、第4のパートナーと仕掛ける時期が近づいているように思える。

COMMENTS


Recommended

TITLE
CATEGORY
DATE
2022年はインフレ、地政学的混乱、為替変動などによりPC出荷が前年比で10%近く下落。中国ゼロコロナ政策の影響も大。ガートナーの予測
業界動向
2022-07-06 02:54
東京都、契約マネジメントプラットフォームの試行運用をスタート
IT関連
2022-10-21 20:29
ソフトウェア開発の新たな変化–さらに多様なスキルを求められる開発者
IT関連
2022-04-07 16:49
OPSWAT、製造業など3領域のインフラ保護に注力–国内事業戦略を発表
IT関連
2024-07-06 07:56
調査に見る日系企業の海外拠点のITやデジタル化の動向
IT関連
2022-03-24 04:28
インドのソーシャルコマースMeeshoが新たに330.3億円の資金を調達、評価額は約2312億円に
ネットサービス
2021-04-07 20:40
ザトウクジラの尾びれ写真から個体を見分けるAI自動識別システム開発、Diagence・阪大・慶應・沖縄美ら海財団で実用化へ
IT関連
2022-02-09 16:53
「UIは終わりのない改善、AIの旅路は始まったばかり」–ServiceNowのケーシーCTO
IT関連
2022-10-27 14:41
サイバーセキュリティ対策、より深刻にリスクを想定するべき–NCSC責任者
IT関連
2021-04-02 11:37
NEC、AI活用した業務改善の支援サービス–現場作業の可視化データから業務課題を分析
IT関連
2024-06-06 11:28
CoinbaseがNASDAQ上場 ティッカーシンボルは「COIN」
企業・業界動向
2021-04-16 03:30
SAP、テクノロジーによる人材活用策を紹介–KDDIのジョブ型人事構築の事例も
IT関連
2021-06-30 07:55
マイクロソフトが「.NET Aspire」発表。クラウドネイティブの開発と運用を容易にする新ソフトウェアスタック。.NET 8の一部として提供予定
.NET
2023-11-16 23:51
カスタマーデータプラットフォームのLexerがグローバル展開に向け27億円調達
ソフトウェア
2021-02-28 03:21