CIOが掲げるIT課題とコンテナー採用で検討される技術要素(後編)
今回は「CIOが掲げるIT課題とコンテナー採用で検討される技術要素(後編)」についてご紹介します。
関連ワード (クラウド、古賀政純「Dockerがもたらすビジネス変革」等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
こんにちは。日本ヒューレット・パッカードのオープンソース・Linuxテクノロジーエバンジェリストの古賀政純です。前回は、欧米の最高情報責任者(CIO)がITベンダーと協議する際に掲げるITの課題と技術要素、コンテナー技術のメリットを紹介しました。
今回も引き続き、欧米のCIOが掲げるITの課題とコンテナー採用に向けて検討される技術要素、そして、それらの技術要素で得られるメリットを生かしたデジタルトランスフォーメーション(DX)推進について簡単に紹介します。
複数の企業や部門などが相乗りするIT基盤自体の急激な肥大化に伴い、データセンターの電力消費の増大や使用効率の低下が問題になっています。近年は、地球環境を配慮した持続可能な社会の実現を達成するための取り組みが世界的に求められています。例えば、高密度サーバーや省電力サーバーの導入による高密度化や高効率化が検討されます。また、電力消費や設置面積の問題だけでなく、更改時期を迎えたハードウェアの廃棄時にリサイクリングプログラムを利用するといった「IT基盤の持続可能性」(サステナビリティー)が以前よりも高いレベルで求められています。
このような世界的な潮流に対して、欧米のCIOは、持続可能な社会の実現を後押しする企業活動の具体的な手段の一つとして、「Docker」に代表されるコンテナーエンジンや、「Kubernetes」に代表されるオーケストレーションエンジンを搭載したスケールアウト型(複数のコンピューターを増設して、稼働中のIT基盤全体の性能向上を図る方式)のコンテナー基盤ソフトウェアを挙げています。
コンテナーは、仮想マシン(VM)に比べて性能劣化が少なく非常に軽量であるため、業務アプリケーションが稼働する実行環境を高密度に統合できます。アプリケーションが稼働する物理サーバーの集約度がVMよりも高いため、結果的にシステム全体の消費電力の削減に大きく寄与します。また、物理サーバーの計算資源やストレージ資源が足りなくなり、サーバーを追加して性能向上を図る場合でも、コンテナーであれば高密度にアプリケーションを実装できるため、スケールアウト型のIT基盤におけるサーバー追加台数の節約に大きく寄与します。
商用のコンテナー基盤ソフトウェアでは、現在稼働している業務アプリケーションを維持したまま、電力効率の高い物理マシンを追加し、同時に古くなった電力効率の悪い物理マシンを引退させるという運用が可能です。これにより、現在のソフトウェア資産を捨てることなく、より電力効率の高いIT基盤に生まれ変わりながら、業務システム全体を持続させることが可能です。
また、電力効率の悪い物理マシンは、資源の有効利用の観点から、プロセッサーを省電力モードに再設定し、あまり処理能力を必要としないデータ保管専用のストレージ基盤の物理ホストとして再利用する方法もあります。そのような、省電力モードを再設定した物理マシンを再びスケールアウト型のコンテナー基盤ソフトウェアの外部ストレージとして利用すれば、廃棄物を減らしつつ電力消費を抑えながら、現在のシステムを持続させることが可能です。
サーバーとストレージが固定化された従来型のIT基盤に比べ、アプリケーションが稼働するサーバーのコンピュート資源とデータを保管するストレージ資源を分離できるコンテナー基盤ソフトウェアの活用は、電力コスト削減とIT資源の有効利用の両立という観点で高い柔軟性を備えています。