ベネッセのCDXOが説く「DXによって目指すべきものとは何か」
今回は「ベネッセのCDXOが説く「DXによって目指すべきものとは何か」」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、ベネッセホールディングス 専務執行役員 CDXOの橋本英知氏と、富士通 執行役員EVP グローバルソリューション担当のTim White氏の発言を紹介する。
ベネッセホールディングスは先頃、ベネッセグループのデジタルトランスフォーメーション(DX)戦略についてオンラインで記者説明会を開いた。同社の専務執行役員 CDXO(チーフDXオフィサー)でDigital Innovation Partners本部長を兼務する橋本氏の冒頭の発言は、その会見で同社のDXに取り組む姿勢について語ったものである。
橋本氏はベネッセグループのDX戦略に関し、まず同社の事業の特徴について、「顧客もビジネスモデルも異なる多様な事業を展開」している一方、「企業理念、人を重んじ成長支援を行って社会貢献することは共通」していると説明。これらを両立させるため、「事業フェーズに合わせたDX推進」と「組織のDX能力向上」を相互にスパイラルアップしていくように取り組むことでDXを加速させるという考え方を示した(図1)。
また、主力の教育事業のDX戦略については、「既存のサービスで圧倒的なトップシェアであることを生かす戦略を前面に押し出し、そのアセットを生かしてデジタルサービスの利用者を一気に拡大していく」(橋本氏)との姿勢を強調。そうしたアクションの中で、「デジタル技術を活用したユーザーエクスペリエンス(UX)改革による“顧客満足度向上”」「データ活用による“収益性向上”」「圧倒的な事業規模を生かした“プラットフォームビジネス展開”」に注力していく構えだ(図2)。
会見の質疑応答で、筆者は「ベネッセは教育分野のデジタル企業になろうとしているのか」と聞いてみた。これに対し、橋本氏は次のように答えた。
「デジタル企業になろうというより、デジタル技術を活用してお客さまに提供するサービスをもっと良くしていきたいというのが、私たちの率直な思いだ。デジタル技術はその手段であって、お客さまに満足していただけるならどんな技術でも使っていく。ただ、技術一辺倒ということではなく、例えば紙を使った方がお客さまに満足していただけるなら紙を使う。その意味では、デジタル企業になろうと考えているわけではない」
冒頭の発言はこのコメントから抜粋したものである。最近は「デジタル企業への変身」が美辞麗句のように使われているように感じるが、橋本氏は「デジタル技術はお客さまに満足していただくための手段」と明確に述べていたのが印象的だった。
冒頭の発言と共に、もう一つ印象深かった同氏のコメントを紹介しておこう。教育分野において直近で大きな課題となっているのは「子どもの学習意欲の低下」だ。それに対し、同氏は「子どものやる気を引き出すことを目的に商品やサービスのDXをさらに推進していきたい」と力を込めた。「DXでやる気を引き出す」という考え方は、他の企業においても社員に対して何か適用できるのではないか。「人」を軸とした企業理念を掲げる同社らしい発想だと感じた。