クラウドで“お堅い会社”が変わり始めた–関西電力送配電の体験記

今回は「クラウドで“お堅い会社”が変わり始めた–関西電力送配電の体験記」についてご紹介します。

関連ワード (クラウド等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


(※編集部よりお詫びと訂正:初出時に社名記載に誤りがございました。訂正しますとともに関係者さま、読者の皆さまにお詫びいたします。)

 関西電力グループで電気の送電・配電事業を手掛ける関西電力送配電は、社会インフラを支える使命のもと、そのビジネスを支える業務システムを信頼と実績のあるスクラッチで長年開発し続けてきた“お堅い会社”だった。だが、2021年にクラウドサービスの本格導入に挑戦。新しい方法に取り組む中で、少しずつ変化が生まれているという。テラスカイが10月5日に開催したイベント「TerraSkyDay 2022」では、関西電力送配電 情報技術部 託送システムグループ チーフマネジャーの南浦大輔氏が、クラウド導入によって同社にもたらされた変化や効果を明かしてくれた。

 関西電力送配電は、電力事業での発電と送電・配電の事業分離に伴い2020年4月に発足した。南浦氏は、1994年に関西電力に入社。各種システムの業務設計を中心に開発・維持運用に従事し、2020年7月から現職としてレガシーとなりつつある社内システムの刷新を推進している。その取り組みの1つが、2021年に表明した託送営業部門における現地訪問での管理業務の変革になる。

 この取り組みでは、顧客から申し込みがあった電気工事などおける現地訪問の手配、準備、現場作業、結果入力という業務フローを管理するシステムを、スクラッチ開発による従来のものからセールスフォースのフィールドサービス管理サービス「Salesforce Field Service」に刷新した。従来システムで現場における情報管理の中心だったハンディーターミナルのリプレースに伴うものだが、南浦氏によると、システムをクラウド化するだけにとどまらない変化をもたらし始めているという。

 以前の業務フローでは、顧客の依頼を基に拠点の管理担当者が作業担当者を手配する。その管理はホワイトボードやExcelでしていた。顧客の依頼は1件ごとに帳票で管理され、作業担当者は帳票を紙に印刷して内容や手順などを把握し、その日に訪問する現場の場所や訪問ルートなどを自身で準備する。現場作業時の確認や相談などは電話で行い、作業を終えると、報告を帳票やハンディーターミナルに入力する。1日の作業を終えると拠点に戻り、帳票やハンディーターミナルの登録内容を管理システムに入力していた。現場で追加訪問が発生した場合には、拠点の管理担当者が現場の作業担当者に都度対応可能かどうかなどの確認を電話で行っていた。

 新しいシステムによる業務フローでは、Salesforce Field ServiceやiPhoneを利用している。顧客の依頼を基にSalesforce Field Serviceで作業担当者が自動的に手配され、作業担当者のiPhoneにその情報が共有される。訪問先の場所や訪問ルートもシステム側で組み立て、iPhone経由で営業車両のカーナビに登録されるようになっている。現場での作業結果はiPhoneに入力し、Salesforce Field Serviceへ反映される。追加訪問の確認や調整はチャットで行えるようになった。作業担当者は拠点に戻る手間がなくなり、現在では直行・直帰ができるようになったとのことだ。

 紙文書や部分的なシステムによる業務フローをクラウドで効率化したり生産的にしたりしていく事例自体は、それほど珍しいものではないかもしれない。だが、同社のような社会インフラを支える使命を担う企業にとっては、古くても信頼と安全において実績ある仕組みを使い続けることが正しいやり方であり、それ自体が企業風土・文化となっているところが少なくない。

 南浦氏によれば、同社のシステムでは長年スクラッチ開発が文化として定着していた。過去にパッケージソフトウェアを導入した経験もあるが、購入費用が非常に高額で、業務内容をパッケージソフトウェアに合せることが大きなストレスになり、システム部門は従来のやり方に慣れていて新しい技術や方法には消極的だったという。コスト面からも業務ニーズのみに対応してスクラッチで開発した方が安価であり、システムの変化も大抵は想定内に収まるのでリスクが小さく、不安が少なかったという。システムの入れ替えは、「今まで通りの方法で良い」という状況だったようだ。

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