キヤノンMJ、好業績で通期見通しを上方修正–懸念は半導体不足
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キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)が10月25日に発表した2022年度第3四半期累計業績(2022年1月~9月)は、営業利益、経常利益、純利益で過去最高を更新した。売上高が前年同期比7.5%増の4280億円、営業利益が42.0%増の378億円、経常利益が38.9%増の386億円、当期純利益が31.5%増の266億円の高成長を見せた。全セグメントで増収、2桁増益となっている。通期見通しは売上高、最終利益など全項目を上方修正し、全セグメントで増収増益を目指す計画を打ち出す好調ぶりだ。
だが、こうした業績好調の裏で、半導体不足の影響が依然として影響していることが浮き彫りになった決算内容でもあった。
キヤノンMJ 取締役 上席執行役員の蛭川初巳氏は、「一部製品で半導体不足やサプライチェーンの混乱による供給制約が継続している。ウクライナ情勢による資源高や為替の影響による商品仕入れ価格上昇の状況も続いている。価格転嫁を急いでいるが、商品やサービスにより適用に時間がかかるものもある。通期見通しは、第3四半期の上振れ分を上方修正した形にとどめている」とした。
第3四半期業績では、特に全国の中小企業を対象にしたエリアセグメントのITソリューション分野で、一部製品が半導体不足による影響を受けたほか、第4四半期は、仕入れ価格の上昇により減益を想定する。今後はビジネス機器の価格転嫁を進めていく考えを示す。
実際、通期の販売台数計画を下方修正した製品もある。オフィスMFP(複合機)は当初計画で前年比29%増を見込んだが、上期の前年割れの影響をカバーできず、前年比10%増にとどまる。
「主要なビジネス機器のオフィスMFPやレーザープリンターは、上期まで商品の供給不足の影響を大きく受けたが、第3四半期から供給が回復し、売り上げが大幅に増加した。第4四半期も増加を見込むが、第3四半期も予定台数は出せず、大手企業に対して納入時期などをずらしてもらい、それに沿って納入をしている段階」(蛭川氏)といい、バックオーダーへの対応が精一杯だったとした。さらに、半導体不足が新たに発生して顧客やビジネスパートナーに影響。「これが発生したことで上期までの減少を挽回できないと判断した」(蛭川氏)としている。
オフィスMFPは、第4四半期に特定メーカーからの半導体入手量が少なく事態が新たに発生。蛭川氏は「これは汎用的な半導体で、需要拡大による影響と見ている。この半導体の調達はメーカーと話し合い中」と、対策に取り組んでいることを示した。
また、レンズ交換式デジタルカメラは、期初計画で販売台数を前年比26%増としたが、16%増に下方修正した。「第3四半期にエントリーモデルを販売しようとしたが、供給制約があまりうまく行かなかった。第4四半期の回復を見込んでいる」と蛭川氏。なお、2022年6月発売の「EOS R7」や、7月発売の「EOS R10」は計画以上の販売台数になり、好調な売れ行きだ。販売単価の上昇に貢献しているという。
ネットワークカメラは、非対面・リモートでの利用需要が堅調に推移しているものの、やはり一部製品の供給不足が続き、ネットワークカメラと連携するPCやサーバー、ネットワーク機器などの外部仕入れ商品にも供給不足があるため、第3四半期の売上高が前年同期比13%減となった。第4四半期は前年実績を上回る想定としているが、年間売上高は当初計画の前年比22%増から4%増に下方修正した。「ネットワークカメラの供給制約が続き、お客さまを待たせている状況。営業も納期で大変な思いをしている」(蛭川氏)
一方で、インクジェットプリンターは供給状態が回復しつつあり、第4四半期の販売台数は増加を想定。PC周辺機器でも一部で供給が回復している。蛭川氏は、「供給昨年下期から今年上期のようにひどい状況にならないと見ているが、一部の汎用的な半導体が取り合いになり、不足があり得るだろう。いつ落ち着くのかは見えない」と危機感を募らせた。
ちなみに、プリントボリュームは、大手企業でテレワークが継続して引き続き減少傾向にあるが、出社傾向が戻る中小企業で堅調に推移し始めたという。今後ペーパーレスが進むとし、「大手先行で1台当たりのプリントボリュームは年率数%で減少するだろう。少し遅れて中小企業のプリントボリュームが下がると見ている。収益をどう上げていき、価値提供すべきか考えたい」(蛭川氏)と予想している。
なお産業機器は、国内半導体メーカーの投資が引き続き堅調で、半導体製造装置が好調に推移。第3四半期の売上高は前年同期比79%増の50億円と大幅な伸長を見せ、。第4四半期は前年割れ実績を見込むが、今後も計画通りの投資が継続していくと予想する。
ただし材料費や半導体価格の高騰、円安などの影響で仕入れ価格が上昇し、今後のビジネスや業績に大きな影響を及ぼすことになりそうだ。
蛭川氏は、「第3四半期までを振り返ると、仕入れ価格や物流費などのコスト上昇の中でも、提案力強化で高付加価値商品・サービスの比率を高め、粗利率の維持に努めてきた。販売管理費削減に取り組み、筋肉質へ転換した結果、増収・大幅増益を達成している。カメラやインクジェットプリンターは高付加価値製品の販売に注力し、収益力が向上した」とする。
だが、第4四半期のコンスーマセグメントで、仕入れ価格上昇による粗利率の悪化が影響し、減益を計画する。「仕入れ価格上昇は2021年に始まりコンスーマー製品やプリンター消耗品などを値上げしている。輸入製品では産業機器の規模が大きいが、1年前から商談を進めているような製品なので急激な為替変動の影響はない。半導体価格も今年上期までの高騰ぶりからは落ち着いたと聞いているが、円安やウクライナ情勢の影響でコスト上昇が多方面で起きており、見通しを立てていない。IT投資を通じて生産性を高め、仕入れ価格の上昇に対応できる筋肉質な体質にしていかなくてはならない」(蛭川氏)とした。
この他に主要ビジネス機器などについては、直販の顧客に対して年初から営業が価格転嫁を丁寧に説明し理解を得ているとのこと。ビジネスパートナーにも案内を開始しており、「2023年早々に値上げする予定で、付加価値提案によりこれをカバーする形にしたい」と蛭川氏は述べる。
半導体不足は徐々に緩和すると見られているが、今回ようにオフィスMFPの一部半導体が突然供給不足に陥り、調達に影響が出た。キヤノンMJは、インクジェットプリンター、レーザープリンター、ネットワークカメラの受注残を解消し切れていないとし、オフィスMFPも大手企業向けの受注残を抱えている。さらに今後は、価格転嫁の影響がビジネスにどう影響するのかも注視しておく必要がある。旺盛な需要と好業績の裏で、半導体不足や供給制約、仕入れ価格の上昇、価格転嫁といった課題に適切に対応した舵取りが引き続き求められている。