スマホ必携の中国でスマホが使えない高齢者向け観光ソリューション

今回は「スマホ必携の中国でスマホが使えない高齢者向け観光ソリューション」についてご紹介します。

関連ワード (中国ビジネス四方山話、開発等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2022年末、中国は新型コロナウイルス感染症を徹底的に封じ込める「ゼロコロナ政策」を実現するための移動制限を実質上撤廃した。これによって、老若男女を問わず、日常的な移動や旅行を自由にできるようになった。中国では、スマートフォンやモバイルサービスが生活に欠かせないものになっている。旅行先でも特別な事情がない限り、観光施設の利用に「微信」(ウィーチャット、WeChat)や「支付宝」(アリペイ、Alipay)などが必要になるケースが増えている。加えて、ゼロコロナ政策の期間中は緑色・黄色・赤色の3色いずれかで表示される2次元コードで安全であることを示す必要があった。

 このように中国の生活においてスマートフォンが必需品である一方で、うまく使えない高齢者はまだまだ多い。また、外国人の利用を想定していないアプリもあり、利用登録できないケースもある。このうちの高齢者への対応については、2021年からの5カ年政策を背景に、スマートフォンでの各種証明書などがなくても旅行ができるように手続きを簡素化しようとしている。今回はこの取り組みを紹介する。

 中国人は基本的に外出時に身分証を携えている。身分証はカードタイプの物理的なものもあるが、ウィーチャットなどのミニプログラムを用いた電子化も可能だ。つまり、スマートフォンを持っていれば、身分証も携えていることになる。加えて、社会保障カードや養老助残カード(高齢者向けの支援制度)などもある。スマートフォンをうまく活用できない高齢者向けに物理カードでサービスを利用できるソリューションを多くの地域で採用している。

 例えば、北京市では観光地のほか、住宅団地の入口、スーパーマーケット、バス停といった各所に高齢者向けのスマート端末が用意されていて、カードをかざすだけで体温測定と訪問登録を行い、健康状態を照会する仕組みになっている。病院の場合は、カードをかざして健康コードに相当するデータに問題がなければそのまま施設に入ることができ、問題があれば病院職員が専用の場所に誘導するといった措置がとられている。山東省の観光地でも高齢者は物理カードで入場できるようにしたほか、同行者のスマートフォンで健康コードを処理できるようにした。

 福建省泉州市の観光地では高齢者専用のレーンを用意し、身分証カードとチケットで入場可能にした。また、年間パスポート(地元住民は公園の年間パスポートを買うことが多い)を購入したり、一定の年齢を超えたりすると、事前登録しておけば顔認証だけで入場できるようになる。泉州市は「顔認証と検温を同時にすることで高齢者を待たせず、スマートフォンを使わないで通れるようにすることで余計なストレスを減らせる。また、人の流れが止まって感染のリスクが高もあるのを防ぐこともできる」としている。

 観光地では、パンフレットやガイドの類もデジタル化が進んでいる。ただ、スマートフォンで閲覧しても高齢者には文字が小さくて読みにくかったり、思い通りに操作できなかったりするのは想像に難くないだろう。中国では、公園の広場や観光地で大音量を流して活動する高齢者に出会うことがある。周りもしぶしぶ受け入れている状況であることから、そうした高齢者に向けてソリューションを提供する自治体もある。

 福建省福州市平潭県の観光アプリでは、高齢者向けに観光名所の音声ガイド機能を用意している。アプリの画面で名所をタップすると、その説明が音声で流れるというものだ。加えて、文字の入力の苦手な高齢者は、ウィーチャットで音声メッセージを送りあってやりとりすることがよくある。それと同じ要領で、観光アプリも音声入力で操作できるようにしている。ただ、スマートスピーカーをうまく使いこなせない、思い通りに音声で操作できないということもある。そこで、音声で入力した内容を文字で表示することで、利用者が確認しやすいようにした。また、作りっぱなしにはせず、音声入力で取得した言語データやさまざまな問題点を定期的に整理し、システムの学習と改良を継続している。

 ゼロコロナ政策下で、非高齢者はスマートフォンを常時携帯し、そこにインストールされたウィーチャットなどに身分証や各種証明書を登録しておく必要があった。そんな状況の中、高齢者向けのソリューションは、高齢者の移動履歴や健康履歴、登録情報をカード一つにひも付け、場所によっては顔認証で対応するなど、スマートフォンを不要とする仕組みが中国で評価された。また、スマートフォンを利用する場合でも、観光案内の画面を見やすくシンプルにしたり、音声で操作できるようにしたりする手法が好評を得たのである。

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