「修理する権利」とは–概念、メリット、反対意見、企業の対応
今回は「「修理する権利」とは–概念、メリット、反対意見、企業の対応」についてご紹介します。
関連ワード (テクノロジーとサステナブルな未来、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
スマートフォン、タブレット、ノートブックなどのデバイスが損傷または故障すると、修理が非常に大変で、高額な費用がかかることが多い。メーカーが指定した特定のサプライヤーを利用しなければならず、修理料金があまりに高額なので、新しいデバイスを購入した方が楽だということがよくある。自分で修理するのは不可能に近い。というのも、スペアパーツの入手は非常に困難であり(ごく単純な問題の解決に必要なマニュアルや工具類も簡単には手に入らない)、部品が接着剤で固定されていることもあるからだ。
これはすべての人にとっての問題だ。
安く修理することができないために、デバイスの所有コストが大幅に高くなっている。修理できないということは、スマートフォンやノートブックが捨てられる羽目になるということだ。安い小さな部品が1つ故障しただけで廃棄されることもあるかもしれない。その決断によって電子ごみが増加し、希少な素材の供給がさらに圧迫されてしまう。
修理する権利に関する法律の主な目的の1つは、誰もがもっと簡単に修理サービスを利用できるようにすることだ。この変化が実現すれば、消費者はデバイスを好きなところで修理してもらえるようになるし、何より重要なことに、製品をできるだけ長く利用することが可能になるため、お金を節約しやすくなるだろう。これらの法律は、修理する権利の対象をノートブックやスマートフォンだけでなく、トラクターのような巨大なものまで、可能な限り多くの機器に広げることを目指している。
この法律が対処しようとしている重大な問題が、電子ごみの削減だ。米環境保護庁(EPA)によると、消費者と企業が2009年に廃棄したテレビ、コンピューター、携帯電話などの電子ごみは237万トンだという。スマートフォンを自分で修理するか、より安価な選択肢を見つけられれば、使用中の製品を頻繁に処分せずに済み、電子ごみを減らせるだろう。ハードウェアの長寿命化と電子ごみの削減という点から、修理する権利は多くの人にとって魅力的な提案となっている。
米国のほとんどの州が何らかの形で修理する権利法を検討しているが、最初の法案は2022年にニューヨーク州で可決された。これらの法律は「Fair Repair Act」(公正修理法)と呼ばれることが多く、製品の修理に必要な素材をOEMが消費者に提供しなければならないという責任に言及している。OEMはこれらの法律により、修理に必要な部品の消費者への提供、マニュアルの配布、消費者自身による修理とサードパーティー修理サービスを妨げる要因の排除を義務付けられる。
電子ごみは環境にとって有毒であり、人間を含む生物に害を及ぼすおそれがある。EPAによると、電子機器の製造に使用される材料には、ベリリウム、鉛、水銀、ニッケル、亜鉛など、人間の健康を脅かす金属や化学物質が含まれているという。
米国立環境健康科学研究所(NIEHS)によれば、電子ごみは、金、銀、銅などの有価金属を含む貴重な物質を回収する目的で、酸浸出やケーブルの燃焼といった粗雑なリサイクル手法を用いる開発途上国に運ばれることがよくあるという。インフォーマルセクターのリサイクル分野で働く人々は、健康に深刻な影響を及ぼす大量の有毒物質にさらされている。さらに、女性と子どもはこれらの汚染物質の影響を非常に受けやすい。世界保健機関(WHO)によると、約1290万人の女性がインフォーマルセクターのリサイクル分野で働いており、自分自身と胎児を危険にさらしているほか、1800万人以上の子どもと青年が何らかの形でそうした作業に従事しているという。
下の地図から分かるように、修理する権利法を実際に可決したのは、ニューヨーク州とコロラド州の2州だけだ。法律と保護の内容は州ごとにわずかに異なる。
ニューヨーク州は2022年12月、修理する権利法を可決した最初の州となった。この法律は2023年7月に発効する。法案では、OEMが部品やマニュアル、設計図などをデバイス所有者や独立修理業者に提供して、修理を容易にしなければならない、とされている。