ヤマト運輸のデータドリブン経営を支える4階層の組織(前編)

今回は「ヤマト運輸のデータドリブン経営を支える4階層の組織(前編)」についてご紹介します。

関連ワード (先進企業が語る「DX組織論」、経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 この数年で多くの企業が事業戦略の中核にデジタルトランスフォーメーション(DX)を据えるようになり、昨今では少しずつ成果も現れ始めている。ただし、ほとんどの企業は組織作りやデジタル活用はできても、DXの本質である「デジタル技術によるビジネスモデルの変革」まではたどり着けていないのが実情である。

 DXで着実に成果を上げている企業とそうでない企業は、一体何が違うのだろうか。当連載では、「DXの成功の鍵は実効性が備わった“専任の推進組織”にある」との仮説のもと、先進企業のDX組織が持つミッションや機能、設置の背景などを紹介し、機能するDX推進体制の構築と運用のポイントを探っていく。

 今回は、データドリブン経営を実践するヤマト運輸の取り組みを紹介する。

 この数年間、コロナ禍で人々の行動が制限され、宅配サービスの利用者が大きく増加している。実際に宅配大手、ヤマト運輸の宅急便は、コロナ禍前の2019年と比べて利用者が2割から3割増加しているというが、従来通りにお届け先に荷物が届いている。

 その背景にあるのが、ヤマト運輸が推進するDXとデータドリブン経営だ。2020年に開始したEC向けの配送商品「EAZY(イージー)」やオープン型宅配便ロッカー「PUDOステーション」などといった配送サービス面での工夫もさることながら、予測モデルとリアルタイムデータを活用した配車計画や人員配置など、データ駆動型のオペレーション改革が現在の同社の物流とサービスを支えている。

 ヤマト運輸を傘下に持つヤマトホールディングス(HD)は、創業100年の翌年である2020年1月に、次の100年を見据えたグループの経営構造改革プラン「YAMATO NEXT 100」を策定。中長期のグランドデザインとして、「コーポレートトランスフォーメーション(CX)」「デジタルトランスフォーメーション(DX)」「イノベーション」という3領域での改革を表明している。

 その上で具体的な方針として「『宅急便』のDX」「ECエコシステムの確立」「法人向け物流事業の強化」という3つの事業構造改革と、それらを実現するための3つの基盤構造改革として「グループ経営体制の刷新」「データ・ドリブン経営への転換」「サステナビリティの取り組み」を掲げている。

 新たな中長期戦略策定の背景にあったのが市場環境の変化である。まずヤマト運輸の主力商品である宅急便は1976年に誕生した。右肩上がりで荷物が増えていく市場環境の中、時流に乗って事業を拡大することができた。しかし近年では、顧客や社会のニーズが変化し、EC需要の拡大によって、従来の「経験と勘」に頼ったアナログなオペレーションからデータに基づいた経営への転換が必要になった。

 そこで同社は2019年に市場環境と内部環境を整理して経営課題を洗い出し、経営層が構造改革について議論を行っていた。その過程でデジタル戦略、特にデータドリブン経営の立案と実行の担い手として外部から招かれたのが、現ヤマト運輸の執行役員で輸配送データ活用推進担当の中林紀彦氏である。中林氏は日本IBMでデータサイエンティストとして活躍し、その後事業会社に転じて複数の企業でデータ活用戦略をけん引してきた実績を持つ。

 「構造改革の議論が進む中でまず13の経営課題が明らかになったが、内部人材だけでそれらの課題を解決するのは難しい部分もあり、事業戦略を検討する段階でお声がけいただきました。私はその経営課題を解決するため、デジタル分野やデータドリブン経営の戦略立案を担いました」と中林氏は当時を振り返る。

 そして2021年4月からヤマトグループ会社8社をヤマト運輸に統合することで、各社の多様な経営資源を結集した。中林氏主導の下でグループ全体を通じたデータドリブン経営に向けたデジタル組織やデータ基盤の整備が進み、宅急便やEC商品への対応、新たな法人向け物流サービスにその成果が反映されている。

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