フォーミュラEのポルシェチーム、東京で10GbpsのSASE環境を導入

今回は「フォーミュラEのポルシェチーム、東京で10GbpsのSASE環境を導入」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 電気自動車レースの最高峰と呼ばれる「Formula e」に参戦しているドイツの「TAG Heuer Porsche Formula E Team」(以下、ポルシェFormula E)は、3月30日に東京・ビッグサイト周辺で開催された日本初のレース「東京 E-Prix」で、チームのセキュアアクセスサービスエッジ(SASE)環境のスループットを10Gbpsに高速化した。同チームの技術パートナーを務めるCato Networksが発表した。

 Formula eは、走行時に温室効果ガスを排出しない電気自動車の普及を目的に開催されている自動車レースの選手権の1つ。同じ自動車レースの「Formula 1」は、ガソリンエンジンと電気モーター/バッテリーのハイブリッド動力だが、Formula eは電気モーター/バッテリーだけを使う点が異なる。2023~2024年シーズンは10カ国で16レースが開催されている。

 ポルシェFormula Eチームは、2019年から参戦しており、ドイツに本拠を置く。Formula eでは、移動に伴う温室効果ガスの排出を抑制するという目的で、レース開催地に派遣するチームの人数を制限しており、レース期間中は開催地と本拠をネットワークで接続し、リアルタイムにコミュニケーションをしながら膨大なデータを転送し、そのデータの解析、シミュレーションの実行、レースに勝つための戦略の立案・検証などを頻繁に行っている。

 レースは原則として1日開催(土曜日)だが、開催地により2日間(土日)で2レースを行う。初開催の東京 E-Prixは、前日の3月29日夕方に練習走行、30日に練習走行と予選、決勝が行われた。チームは、コースやレースカーなどの膨大なデータを現場から本拠に送り、本拠で分析とシミュレーターによるレースカーの設定方法や戦略の立案・検証、現場へのフィードバック、現場での実行と検証というサイクルを繰り返す。レース期間中にレースカーで発生するデータポイントは1000億~5000億に上り、数百もの車体のセンサーから取得するデータは400GBほどという。このデータを現場から本拠に転送するには、高速ネットワークが必要になる。

 Cato Networksは、2015年にイスラエルで創業し、世界で約2200社の顧客を有するという。当初よりSASEおよびSD-WANのサービスを主力しており、同社サービスへの接続拠点(Point of Presence=PoP)は、世界で約90カ所、日本では東京に3つのPoP、大阪に2つのPoPの計5つを確保している。同社は、2022~2023年シーズンからポルシェFormula EチームにSASEのサービスを提供している。

 東京 E-Prix開催に合わせて来日した同社 脅威分析およびセキュリティ戦略担当シニアディレクターのEtay Maor氏は、「Formula eおよびポルシェFormula Eチームが掲げる(環境への貢献や温室効果ガス排出の削減などの)理念や価値観が当社と同じことからチームへの技術支援とスポンサードを行っている」と述べる。

 ポルシェFormula Eチームは、世界各地のレース開催地とドイツの本拠とのネットワークに、Cato NetworksのSASEを導入している。上述の各種データは、レースの戦略案やレースカーの技術など極めて機密性の高い情報であり、強固なセキュリティ対策が必須になる。他方で、レースの開催地は世界中に分散し、しかも現地で通信が必要なのは数日間に過ぎない。このためレースチームのネットワーク環境は、クラウド、SASE、SD-WANが最適となる。

 Maor氏によれば、SASEを導入する以前のポルシェFormula Eチームは、ネットワークで大型のアプライアンスを使用しており、シーズンを通じて世界各地のレース開催地で搬送、設置・構築、運用、撤収を繰り返していた。通信環境も開催地で異なり、通信速度の遅い開催地ではドイツの拠点とのデータの転送に長い時間がかかり、データの分析やシミュレーションの実行、戦略立案に活用するには制約が大きいことから、レースでの勝利も難しくなってしまうという。このため、チームの通信インフラをCato NetworksのSASEに切替えた。

 Maor氏は、「われわれのサービスのアプライアンスは、とても小さく(弁当箱サイズ)、レース会場ではピット内に設置し、ネットワークにつないですぐに機能する。昔のように、複雑な構成のルーターやスイッチを構築する必要がない」と胸を張る。

 また、SASEのセキュリティ機能については、「シングルパスプロセッシングエンジン」と呼ぶ、一気通貫での処理によって高速のスループットを実現しているという。

 「パケットの暗号化と復号、ファイアフォール、マルウェア検査、コンテンツ検査などのセキュリティ検査を1つのプロセス内で実施することにより、都度暗号化と復号を行うような競合のサービスよりもスループットが極めて高速になっている。また、PoPからユーザーの接続先までの経路の選択と、接続中の障害による経路の変更は、長年の運用実績で開発するAIモデルに自動化しており、ユーザーも当社も人手を動かす手間がほぼない」(Maor氏)

 Maor氏は、世界各地のTier1の通信事業者と提携して、高速のネットワークサービスを確保しており、日本ではKDDIと協業している。2023年秋には、ソフトバンクグループの「ソフトバンク・ビジョン・ファンド2」による出資も獲得している。

 こうしたビジネス成長の背景も踏まえて同社は、ポルシェFormula Eチーム向けSASEのスループットを、アプライアンスのソフトウェアアップデートによって、東京 E-Prixから10Gbpsに高速化した。これは、チームがシーズン全体を通じて取得している巨大な全てのデータ転送に要する時間が、Cato導入以前の約3.5日から2.5時間以内になるという。シーズン全体のチームの総データ量は、前述の1レース当たり約400GBだとすれば、16レースが行われる2023~2024年シーズンの場合で約6.4TBと試算される。

 Maor氏によれば、今後は札幌市に日本で6番目のPoPを開設し、日本の顧客向けサービスを強化する。現在の日本の顧客数は大手の製造や流通、金融など約350社で、2024年中に500社の獲得を予定する。同氏は、「日本への投資を継続して強化している。機能面でも、2023年だけで約5260件の追加、強化を行っている」など話している。

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