日本NPOセンター、NTTデータらIT企業4社とNPOにおけるデジタル人材育成を促進
今回は「日本NPOセンター、NTTデータらIT企業4社とNPOにおけるデジタル人材育成を促進」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
日本NPOセンターとNTTデータグループ、デル・テクノロジーズは9月5日、「NPTechイニシアティブ」に関する記者説明会を開催した。NPTech(NonProfit Technology)は、非営利団体(NPO)のデジタル活用を目指した活動のこと。日本NPOセンターのほかにインテル、TIS、デル・テクノロジーズ、NTTデータの4社が参画し、NPOのDX化を支援していくという。
NTTデータグループと日本NPOセンターは2019年から、経営視点でIT導入を担うIT人材の育成に向けた「ソーシャルテクノロジーオフィサー(STO)創出プロジェクト」に取り組んできた。2022年にはデル・テクノロジーズが参画し、プロジェクトの強化を進めてきたという。
日本NPOセンターが2020年に行った「日本のNPOにおけるIT活用とSTOに対するニーズに関する調査」によると、NPOの事業活動におけるIT活用状況は2020年の時点で「インターネットを通じた広報の強化」「団体ウェブサイトの改善・機能強化」「オンラインでのセミナーや研修・体験、相談対応」が中心になっており、将来的には「オンライン教材の開発・導入」や「オンラインでの会話・相談等の自動応答の開発・導入」など、より細分化された課題解決に向けた活用に関心があることが分かったという。
また、組織運営におけるIT活用は、「データ・書類の保存、共有」「会計」「テレワーク」が中心であるが、将来的にはテレワークの進展を見越した各スタッフの「業務の可視化」や業務効率の向上に向けた「電子契約」での活用を期待しているという。
一方でITの有給職員がいる団体は全体の35%にとどまっており、約70%の団体がITの有給職員の「人数」と「質」に対して「大幅に不足している」または「やや不足している」と回答。IT人材の人数や質を確保できない理由について、40%の団体が「原資や予算の不足」と回答し、20%の団体が「事業活動や組織運営でのIT活用に関する情報や知識が少ない」を挙げた。
日本NPOセンター 事務局次長の上田英司氏は、STO創出プロジェクトの3年間の活動を振り返り、「NPOのDXを支援する人材育成を行い、83人のSTOを生み出すことができた。しかし、NPOの経営側の課題が見えてきた。ITに関する知識や活用のノウハウが十分でなかったり、セキュリティを含むIT基盤が整備されていなかったりと、IT基盤が整っていない現状が浮き彫りになった」と話す。
このような課題を踏まえて、今回NPTechイニシアティブでは、STO創出プロジェクトの発展型として、NPO職員のデジタルスキル向上に特化した研修プログラムを開発。9月からNPO職員のスキルアップに向けた研修を開始する。
研修は、NTTデータ、デル・テクノロジーズ、インテル、TISの4社持ち回りで合計4回の開催を予定している。第1回は9月5日に行われ、「ITリテラシー入門講座~用語説明からパソコン選び~」と題した研修をNTTデータとインテルが実施する。まずはITに関する基本的な用語や背景を知り、これから学ぶための基礎固めをする。また、業務に合ったPCの選び方やソフトウェアの違いなどを解説するという。
NPTechイニシアティブの参画について、NTTデータグループ サステナビリティ経営推進部 シニア・スペシャリストの金田晃一氏は「社会課題に取り組むNPOがデジタルを活用することで、社会課題の解決力の飛躍的な向上が期待できる。さらに、IT企業4社が協働することによるコレクティブインパクト(さまざまな立場の参加者が社会課題の解決に取り組むスキーム)の創出にも着目したい」と述べた。
また、NTTデータグループにとってNPTechイニシアティブへの参画は、サステナビリティー経営の「フィランソロピー」(戦略的な社会貢献活動)に当たるとし、企業価値への貢献も望めるとしている。「従業員が企画や講師としてイニシアチブに参加することで、従業員のプロボノ(職業上のスキルや経験を生かして取り組む社会貢献活動)の参画にもつながり、従業員の社会参画文化の醸成になると思う。そして、企業とNPOの協働により、予想できない結果が出てくると思うので、創発という観点でも注目したい」と説明した。
以前から日本NPOセンターとパートナー関係にあるデル・テクノロジーズでは、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標の中で2030年までにデジタルインクルージョンを通して10億人の生活を向上させること。また、慈善活動とボランティア活動では、2030年までにチームメンバーの75%が地域社会において寄付またはボランティア活動に参加することを掲げており、同社の専門知識とテクノロジーを駆使して、非営利パートナー1000団体のDXを支援するという。
デル・テクノロジーズ Japan CDO Office ESG エンゲージメントジャパンリードの松本笑美氏は、NPTechイニシアティブの参画について「デジタルインクルージョンに加えて、プロボノに着目した」と説明。「NPOの課題感を考えるには、NPOと一緒に働くことが最も良いと感じ、日本NPOセンターとパートナーになり活動を進めてきた。NPOが抱える課題をITの発展につなげていくかが今後のNPTechの発展につながると思う」と語る。また、IT企業4社が協働することについて「ソーシャルインパクトを大きくするには協働が欠かせないと思っており、これをいかにNPTechでも実現させていくかが重要だと考えている」とした。
インテル 執行役員 パートナー事業本部 本部長の高橋大造氏は、「NPOのDX化とデジタル人材の育成に貢献したい」とNPTechイニシアティブへの参画理由を明らかにした。同社では、さまざまなステークホルダーと協働しながら地球規模で共通する社会課題の解決を目指す「インテルRISE戦略」の策定や、デジタル人材育成を推進する「インテル・デジタルラボ構想」を掲げ、多様な人材が平等にデジタルテクノロジーを活用できる世界の実現を目指している。
インテル・デジタルラボ構想では、「STEAM Lab」「Creative Lab」「AI Lab」「DX/DcX Lab」の4つのラボを立ち上げ、コンテンツ制作やDX研修などを各機関に提供し、デジタル人材育成を進めている。今回、同社は同構想で使用しているカリキュラムや教材をNPTechイニシアティブを通してNPOに広げ、NPOのDX推進に貢献していくという。
最後に、TIS 企画本部 企画部 コーポレートサステナビリティ推進室 室長の芝村仁氏が、同社の社会貢献活動を説明。同社はこれまで、NPOや自治体を介して同社サービスの恩恵を受けられない人への支援を行ってきた。日本NPOセンターと共に、デジタルツールの開発や使用しているデジタルツールの改良などに対する資金助成を実施したり、自治体と共に若年層のITリテラシー向上の支援をしたりしている。
芝村氏は「当社はNPOおよび自治体を介してさまざまなプログラムを実施し、当社サービスの恩恵を受けられない人への支援を行っている。誰一人取り残すことなく、デジタル技術の恩恵を享受できる世界を作りたいという思いが、NPTechイニシアティブへの参加の背景だ」と説明した。