契約情報を活用して“企業力”を高めるリーガルテック
今回は「契約情報を活用して“企業力”を高めるリーガルテック」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、企業の「守り」を固め、「攻め」に活用するリーガルテック等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
当連載第1回の記事では、リーガルテックの導入によってまずは法務部門の業務効率化が図れること、さらに法務以外の部門へも大いにメリットがあることについて述べた。今回は、リーガルテックの具体的な活用方法について、「守り」と「攻め」の両面から解説する。
リーガルテックを導入すると、法務部門の業務が効率化するのに加え、営業などの事業部門でも契約書などの法律的な情報を確認・管理しやすくなる。それまで漠然と「自分の専門外」だと感じていた契約に対するハードルが下がり、身近で扱いやすい情報として活用することまで可能になる。
こうした環境が整備されると、何か行動を起こす時に「契約を確認してみよう」「契約のまき直しを検討しよう」といった意識が働くようになり、企業全体のリーガルリテラシーが高まる。起こり得るトラブルを未然に防ぐことができ、大小さまざまなリスクから企業を守ることにつながるのだ。企業のESG(環境、社会、ガバナンス)経営が叫ばれる中、ガバナンスの強化は多くの企業にとっての喫緊の課題だ。ガバナンスが効いているかどうかが、企業評価の物差しにもなっている。
アニメや映画などのコンテンツ産業を一例に挙げると、もし企業が契約をずさんに管理していたことで問題を起こしてしまった場合、ネガティブなイメージとコンテンツがひも付けられ、その影響範囲は計り知れないものとなる。コンテンツ自体が同罪のように見なされてしまう風潮があり、自社だけの問題ではなくなってしまうほど、大きなトラブルに発展してしまう危険性をはらんでいる。
そうしたリスクを回避するためにも、適切な権限管理下で契約情報へ簡易にアクセスできる環境を整備していくことが重要だ。例えば契約情報をデータ化してクラウド上で管理できるサービスや、難解な契約書を要約してくれるAIを搭載したリーガルテックを導入すれば、「契約内容を確認する」という作業が普段の業務に組み込みやすくなり、リスクマネジメントを実現でき、企業を守る盾となる。
リーガルテックの導入は、契約違反や法律違反などの大きなリスクを回避するための「守り」に使われる印象が強いが、実は「攻め」の使い方と表裏一体をなしてもいる。契約情報を例に取り、「攻め」のリーガルテック活用を見てみよう。
契約の締結はあらゆるビジネスの起点となる重要な節目だ。できるだけ早く、そしてできるだけ自社に有利に(または、不利にならないように)契約を結びたいというのが、共通する思いだろう。リーガルテックは、まさにこの部分をサポートすることも可能なのだ。
リーガルテックの導入により適切な権限管理のもと、契約情報を「見られる・触れられる」環境があることで、商談前に過去の類似プロジェクトの契約情報を確認するといったことが可能になる。商談の具体性と進行スピードが格段に上がる上、論点となりそうなポイントを早めにつかむこともできる。取引する企業によっては、別件の契約が存在するかもしない。締結ハードルの高い契約を既に結んでいる場合、新たな商談を進めるリードタイムが短くて済むこともあるだろう。
取引先と大まかな合意が取れ、「やりましょう!」と熱く握手をしたのに、社内に持ち帰って一つ一つ確認している間に時間が経過し熱が冷めてしまった、というのはよく聞くケースだが、実にもったいない話でもある。
日本では、契約書のフォーマットを用意するのは主に力を持っている企業側だ。発注する側や、コンテンツの権利を所有する側が契約を有利に進められるケースが多い。例えば、従来のコンテンツ産業においては、基本契約を結んだ制作物の範囲を超えて、そこから派生した制作物(例えばサイズ違いのポスターやフライヤーなど)を依頼するケースなどが見受けられた。