「AIがプラットフォームになる時代の始まり」–米マイクロソフト沼本EVP
今回は「「AIがプラットフォームになる時代の始まり」–米マイクロソフト沼本EVP」についてご紹介します。
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日本マイクロソフトは10月2日、報道機関向けの説明会を開催し、来日中の米Microsoftのエグゼクティブ バイスプレジデント(EVP)兼コマーシャル チーフ マーケティング オフィサーである沼本健氏が同社のAI戦略を明らかにした。
沼本氏はまず、現在は「AIがプラットフォームになる時代の始まりにある」と切り出し、その特徴となる大きな技術要素として「Natural User Interface」と「Reasoning(推論)Engine」の2つを挙げた。「この2つが合わさることで、プラットフォームとしてのAI時代の幕開けを迎えている」
Microsoftでは、インフラストラクチャーやデータ&AIサービス、ビジネスアプリケーション、セキュリティのほか、モダンワークに分類される「Word」や「Excel」「PowerPoint」「Teams」といったプロダクティビティツールなど、既存製品へのAI導入を進めている。
沼本氏は、AI導入に当たって企業が抱える課題として、(1)Unlock productivity with Copilot、(2)Build your own AI capability、(3)Safeguard your business and data――の3つを挙げる。
沼本氏は「『Microsoft 365 Copilot』で生産性を劇的に向上させる」といい、PowerPointや「Teams Meetings」「Microsoft 365 Chat」などのデモを交えながらユースケースなどを紹介した。
Copilotは、同社が提供する対話型AIサービスであり、PowerPointにWordやExcelなどの他のアプリケーションからデータを取り込んで、プレゼンテーションを自動的に作成したり、自然言語で指示を出すことで、アニメーションやデザインを変更したりできる。また、会議の要約や議事録の作成など、Teams Meetingsでも活躍する。Microsoft 365 Chatと連携して、メールやPowerPointなどのさまざまなドキュメントを横断的に検索したり、共有したりもできる。
沼本氏によると、Copilotは開発者だけでなく、営業やサポートなどのさまざまな職種や業務にも適用できる。同社では、ア―リーアクセスプログラムを通じて、Copilotの事例や効果を公開している。AIの力で生産性を高めるとともに、利用者の足度や創造性も向上させるという。
Microsoftは、企業が自社のAIケイパビリティーを構築するのを支援する、さまざまなサービスやツールを「Copilot stack」として提供しており、その基盤となるのが「Microsoft Azure」
である。Azureは世界に60以上のリージョンがあり、200以上のデータセンターで運営されているクラウドプラットフォームになる。
沼本氏は「データをうまく持ってきて、有機的に活用しないと良いAIは作れない」といい、そのために最も必要になるのがデータサービスであると強調した。同社は、「Azure SQL Database」「Azure Cosmos DB」「Microsoft Fabric」「Azure AI」「Microsoft Purview」などの一連のデータサービスをラインアップしているだけでなく、OracleやSnowflake、Databricksといったパートナーとの協業も積極的に行っている。
「企業が保有しているデータをまずクラウドにもってきていただき、そこで有機的に統合することで、AIアプリケーションの導入・開発を加速させていきたい」(同氏)
大規模言語モデル(LLM)についても「Azure OpenAI Service」だけでなく、MetaやHugging Faceとの提携によって、オープンソースのAIモデルも含めて、最適なものを選べるようにしている。その他にも、プロンプトエンジニアリングの支援ツールやAIの安全性を担保するためのコンテンツフィルタリングなどを「Azure AI Studio」という形でツールチェーンにまとめている。
AIの事業導入においては、ビジネスデータの安全確保が欠かせない。Micorosoftは「責任あるAIの基本原則」として、「公平性」「信頼性と安全性」「プライバシーとセキュリティ」「包括性」「透明性」「アカウンタビリティー」の6つを社内で徹底しているとし、顧客データをモデルのトレーニングに利用せず、エンタープライズ級のセキュリティとコンプライアンスを確保しているとのこと。
また、Microsoftは9月に「Copilot Copyright Commitment」を発表している。これは、Copilotや同機能で生成されたものを顧客が使用し、それによって著作権侵害で訴えられた場合、一定の条件の下、同社が顧客を弁護するとともに訴訟で生じた不利な判決や和解金などを支払うというものだ。
「運用面でも、モニタリング、レポーティング、オーディット、コンプライアンスなどの仕組みを整え、社内一丸となってAIセーフティーを担保した形での技術提供を心掛けている」(沼本氏)
沼本氏は最後に、AI導入に向けた第一歩として、まずは自社の現状を把握することが重要だと話す。特に日本では、AIの活用を検討する前にクラウドへの移行が先決であると指摘する。
次に、実際にCopilotなどのAIツールを導入して生産性を向上させてみることだ。コードを自動的に生成する「GitHub Copilot」を使えば、開発者の生産性向上につながるし、11月にはMicrosoft 365 Copilotの一般提供が開始される。
また、AIの導入効果を測定することも必要だ。AIの導入によってどのような成果が出たのか、どのような影響があったのかを評価するため、事前に重要業績評価指標(KPI)を設定しておくことが大切になる。そうした指標を基に投資対効果(ROI)を計算することで、AIの価値を客観的に判断する材料となるだろう。