ソフトバンクと日建設計、「SynapSpark」を設立–自律的に進化するスマートビル構築へ

今回は「ソフトバンクと日建設計、「SynapSpark」を設立–自律的に進化するスマートビル構築へ」についてご紹介します。

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 ソフトバンクと日建設計は、スマートビル「Autonomous Building」(Autonomousビル)の構築を支援する合弁会社「SynapSpark」を12月1日に設立すると発表した。設立に当たり、両社は10月25日に記者発表会を開催した。

 SynapSparkは、新築/既存のスマートビルの構築支援と、スマートビル向けのアプリケーションやデータ連携基盤(ビルOS)の企画・提供を行う。AIやIoTなどを活用し、人や建築、都市、パートナーのアプリケーションやソリューションなどと連携することで、ビルの機能をリアルタイムに最適化して自律的に進化し続けるAutonomousビルの構築を目指すという。

 今回、ソフトバンクと日建設計が協業することで、これまで個別に最適化されていた各ビルの設備システムのデータを一元的に管理・連携する仕組みを、ビルの基本機能として組み込む。これにより、ビル全体で設備の稼働やエネルギーの利用などを最適化できるほか、ビルの機能を拡張するために外部アプリケーションと連携できるとしている。

 日建設計では多種多様な社会課題の中でも特に、気候変動とそれを抑制するための脱炭素化に貢献するビルの設立や行動変容を促すアプリケーションを開発してきた。行動変容アプリ「Asapp」は、建物のデータと連携し、屋外の環境や建物内のエネルギー使用状況を可視化する。

 しかし、「人の行動を変えるだけでなく、同時にオフィスにいる人の活動に合わせて、ビルそのもの、もしくはビルの設備機器が自動的に脱炭素に向けた運転調整やマネジメントができるようにしたい」と日建設計代表取締役社長 社長執行役員の大松敦氏は言う。

 同氏によると、既存のビルでは各設備が個別最適化されており、相互連携は非常に難しい状況にあるという。ここにビルOSを加えることで、ビル内の設備を連携して運転データを蓄積し、そのデータを分析して運転の全体最適化を図れるとしている。また、さまざまなアプリケーションを活用することで、ビルの管理者やオフィスで働く人の利便性や快適性、安全性の向上に寄与できると語る。

 このような構想は以前から挙がっていたが、建設業界には情報通信系の技術者が圧倒的に不足しているのだという。同氏は「今回、ソフトバンクと共同で取り組むことで、最先端の建築設備の知見とデジタルの知見を掛け合わせるという社会にとっての長年の課題を解決したい」と合弁会社設立の背景を説明した。

 ソフトバンクでもこれまでスマートビルの構築に取り組んできた。実際に同社の本社移転があり、その際にAutonomousビルを実現するため、ビル全体に1400個のセンサーを導入し、ビルを丸ごとセンシングするプロジェクトを実施したという。

 しかし、ソフトバンク 代表取締役 社長執行役員 兼 最高経営責任者(CEO)の宮川潤一氏は「やりきれなかったと思うことがたくさんある」と話す。Autonomousビルの実現に向けた議論は設計が終わった段階で開始したため、既に空調や照明など各設備が独立しており、横連携ができなかったという。

 同氏はこの経験を基に、「Autonomousビルの実現には、設計の段階から入ることが重要だと分かった」といい「ビルを知り尽くし、設計士や建築士を多く抱えている日建設計と組むことに決めた」と説明した。

 既にAutonomousビルの第1号として「赤坂グリーンクロス」の建設が終わりつつあるという。両社と積水ハウス、日本生命、東京大学が共同で進めるプロジェクトで、ソフトバンクは設備の仕様の共通化やサイバーセキュリティを考慮したネットワーク構築など、設計の段階から参画した。

 赤坂グリーンクロスでは、LANなどのケーブルを共通のプロトコル制御によって配線を集約し、従来の技術と比較して約50%削減できたという。また、今後さまざまなソリューションの実装により、消費電力を15%削減、ビルの運営工数を30%削減できる想定だとした。

 SynapSparkは、沼田周氏が代表取締役社長を務める。資本金は4億円で持ち株比率はソフトバンクと日建設計でそれぞれ51%、49%となっている。

 具体的な事業内容としては、ビル設備とビルOS、アプリケーション群の高度な連携を行うためのコンサルティングと設計支援を行い、ビル設備の各データがシームレスに連携し、全体最適となる機能を随時追加・更新できる仕組みを構築する。

 また、ビルの利用者や不動産の所有者、管理者などのビルに関わる多様なステークホルダー向けのソリューションとして、ビルOSとそのOS上で動作するアプリケーションを企画・提供し、不動産やユーザーの体験を継続的に向上させるためのビジネスを展開する。

 既設の「渋谷ソラスタ」と「渋谷フクラス」からはスマートビル化の支援を依頼されており、ビルメンテナンスの効率化や防災・警備の強化などを通してAutonomousビルに進化させていくという。

 赤坂グリーンクロスや渋谷ソラスタ、渋谷フクラスを所有する東急不動産は、ソフトバンクの本社移転にも共同で取り組んだ。同社 取締役 常務執行役員の榎戸明子氏は「Autonomousビルは、われわれデベロッパーにとって、単体のビルはもちろん、複数のビルや商業施設が相互に連携し合い、より広い範囲で費用面や人的側面での最適化を促進することになる。それは、施設やエリアの魅力や活力を大きく高められると期待している」と述べた。

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