AIに顧客が期待するのは業務支援–BlackLineタッカー共同CEO
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クラウド型経理業務変革プラットフォームを提供するBlackLineの共同最高経営責任者(CEO)でTherese Tucker氏が先頃来日した。同氏は、2001年に同社を設立。CEO職を2020年8月に離れたが、2023年3月に復帰している。製品面で特に力を入れていること、CEO職復帰の背景、製品へのAI導入などについて聞いた。
同社は米国時間11月2日、2023年度第3四半期決算を発表し、前年同期比で総収益が12%増加、新規顧客が89件純増し、顧客総数は4368件となった。この結果について、Tucker氏は、多くの企業は2022年に業績面で苦労したが、マクロ環境が変わりつつあると述べる。
顧客増の要因としては、Data Interconnectの買収によるシナジー効果を挙げる。同買収は、売掛債権回収(I2C)製品サービススイートを完成させる位置付けにあるとする。
同社製品の中核を担っているのは決算管理だが、関係会社間取引は大きな可能性を秘めていると同氏。同分野は初期段階にあるが、多くのグローバル企業が課題を抱えており、税務当局も目を光らせているという。
また、「Financial Reporting Analytics」機能にもTucker氏は言及。CEO職を離れていた2年半、貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書をリアルタイムで取得することが可能な同機能に注力していたという。「顧客と密接に協力し、彼らが必要としているものを定義し、開発しているものが役立っているかを確認するため、継続的なフィードバックループを持つことができた」(同氏)。
Tucker氏は2023年、CEO職に復帰した。Owen Ryan氏とともに共同CEOとして取締役会から任命されたと同氏は説明する。その目的は、同社が持つ可能性を最大化することにあったという。同社は、この2年半で2社を買収したが、製品面において、顧客により役立つ統合プラットフォームを必要としていたと同氏。また、パートナー戦略といった領域なども最大化の余地があったという。
同社はかつてコントローラーに注力していたが、製品ラインは現在、最高財務責任者(CFO)の領域に軸足を移したものになっているとTucker氏。CFOが高い関心を寄せる分野として経理、財務業務のデジタル変革があるが、それは、BlackLineの導入で得られる効果の一つだとアピールする。
BlackLineが設立された2001年当時、米国では、米国企業改革法、いわゆるSOX法への対応が非常に迫られていたと同氏は振り返る。現在、世界の多くで同様の法律に対応することが求められており、規制が厳しくなっているとした。
当時との別の違いとして、財務・経理部門は、テクノロジーの利用について、良い可能性を秘めていると考え、好意的に受け入れていることを指摘する。「設立当初、(受け入れてもらうのは)非常に大きな難しさを伴った」(同氏)
現在、財務・経理部門がテクノロジーを導入する際、システムを単一のベンダーで統一したいという考えがある一方で、入手可能な機能のうち最良なものを選ぶという傾向があるという。ただし、この傾向は、市場の成熟度合いによって違いがあり、その違いに影響を与えている一つが規制だという。規制が厳しくなるほど、手作業での対応は難しくなるとTucker氏は述べる。
財務・経理部門にとって変化はリスクであり、そのようなリスクを回避したいと考える。このような、何もせず漫然とやり過ごそうとする「現状維持バイアス」とBlackLineは戦っているという。しかし、コロナ禍によって、一部の企業では紙中心のやり方を変えざるを得なくなり、市場をある程度成熟させる手助けになったとTucker氏はいい、「変わること以上に変わらないリスクの方が大きくなった」との考えを示す。
日本でのBlackLineは、この数年において好評価を得ているが、そこで大きな役割を果たしているのが「口コミ」だという。ユーザー企業の社長や経理部長が他の企業に利用を勧めるケースがあるという。また、ユーザー企業に勤めていた経理担当者が転職し、転職先の企業で導入を求めるということで利用が広がる場合もあるとTucker氏は語る。
この流れは、グローバルでも見られるが、日本では特に大きく、現状維持バイアスの強さが背景にあるという。「顧客の声ほど強いものはない」(Tucker氏)
同社は現在、AIの利用に注力している。同社は9月にAIを活用した会社間取引管理ソリューションを発表している。
「大規模言語モデルが進化するにつれ、顧客に真の価値を提供できる」。Tucker氏はこう語る一方で、顧客はAIを導入しても、判断までも委ねたいとは考えていないと強調する。顧客がAIに期待するのは、財務・経理業務を簡単にすることに加え、大量にあるデータを使うことでリスクや懸念事項となり得る領域を浮き彫りにすることだと同氏。言い換えれば、AIによる業務支援を顧客は希望している。
当然、そこには顧客の同意が必要だが、これはAI利用における成熟度が関係してくるという。AIによる業務支援機能を1〜2年間使ってみて、期待通りの機能してくれることが分かれば、AIによる提案をより迅速に受け入れるようになるとの考えをTucker氏は示す。
AI導入で注力している領域として、潜在的なリスクや懸念事項を浮き彫りにすることに加え、作業を容易にして迅速に終えられるよう提案を示すこと、大量にあるデータセットから異常を検出することを同氏は挙げる。
「経理業務は、ロール主導型で非常に多くのデータがある。そのため、AIの応用先として適している」とTucker氏は語る。