大学入試の小論文を採点するAIツール、研究者らが開発–その利点とは?
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
毎年多くの学生が、希望の大学に入学するための小論文を記述し、自らの考えを語るだけでなく、入試担当者に是非ともわが大学に入学してほしいと思ってもらえるような際立った内容にしようと取り組んでいる。そうした中で今回、こうした小論文の採点プロセスを大きく変える可能性のある人工知能(AI)ツールが新たに開発されたという。
米コロラド州ボルダーの地方紙であるDaily Cameraによると、大学入試の小論文を読み込み、評価するAIツールをコロラド大学ボルダー校の研究者らが開発したという。
研究者らは非営利団体The Common Applicationと協力し、2008年と2009年に大学への入学を希望した学生約30万人のデータを集積した上で、それらの中から小論文を無作為で抽出し、人間の手によってリーダーシップやマインドセット、チームワークといった個人の資質を評価した。
そして、同様の作業を実行するAIモデルを搭載したツールで検証したところ、AIによる評価は人間のものと近い結果になったという。また同記事によると、このAIの評価は学生が卒業できたかどうかまで極めて正確に予測できたという。
このツールは、小論文自体の完成度がそれほど高くなくても、優れた入学候補者となり得るような高い質を有した部分を強調し、ともすれば見過ごされてしまいがちな学生に光を当てることが目的となっている。
こうしたツールにはもう1つの利点がある。それは、入試担当事務局の人間が持っているかもしれない人種や性別、社会経済的背景に関する個人的な偏見を排除できるというものだ。
同校の教授であり、Science Advancesに掲載されたこの調査論文の共著者でもあるSidney D’Mello氏はDaily Cameraの取材に対し、「小論文には、記述されている以上の志望者に関する物事が潜んでいる」と述べるとともに、「こうしたツールは、それがなければ見逃されてしまうような、向上心を有し、入学に値する素晴らしい学生を浮き彫りにする上で役立つと考えている」と述べた。
このAIツールは偏見のないフィードバックを提供できるとはいえ、人間の入試担当者を置き換えるものではないという。
むしろこのツールは、上手に記述された小論文を追い求めるが故に入試担当者が見過ごしてしまいがちな優れた部分に光を当て、志望者の性格的な資質を浮き彫りにすることで判断を補うためのものであるとD’Mello氏は述べた。
どのようなAIモデルにもリスクは存在している。このため研究者らは人々が不安を覚えないよう、こうしたツールの採用に先立って正確さと効率を保証するための作業を実施しておく必要があるとしている。