「小売業こそリターンが見えるAI投資を」–日本MS・津坂社長が提言

今回は「「小売業こそリターンが見えるAI投資を」–日本MS・津坂社長が提言」についてご紹介します。

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 日本マイクロソフトは2月20日、東京・有明の東京ビッグサイトで、AIに関するワールドツアーイベント「Microsoft AI Tour-Tokyo」を開催した。会場では、基調講演のほか、27のセッションが用意され、業界やソリューションごとにAIを活用したビジネス機会創出のメソッドやメリットなどについて解説した。

 「AIが放つ、小売業の未来とその可能性」と題したセッションでは、日本マイクロソフト 代表取締役 社長の津坂美樹氏が登壇し、小売および消費財分野でのAI活用について提言した。

 津坂氏は、2023年2月に日本マイクロソフト社長に就任する以前、ボストン コンサルティング グループ(BCG)のシニアパートナー&マネージングダイレクターとして、国内外の幅広い業界のクライアント企業に対して、成長戦略策定や実行支援、DXに関するコンサルティング業務に従事してきたが、消費財や小売分野は得意領域の一つであり、自らも「小売、物流、消費財は一番好きなセクター」と発言。長年にわたって培った知見を生かした講演内容となった。

 津坂氏は「1年前に日本マイクロソフトの社長に就任し、最初にしたのは『ChatGPT』を有料で使い始めたこと。入社初日から現在までの1年で、ものすごい変化が起き、生成AIは大きく進化している」と切り出しながら、「AIはあらゆる場所に導入が進んでいる。Microsoftでも2023年春からさまざまなAIを提供している。社内でも、カスタマーサービスや開発、財務、営業、マーケティングなどの部門において、効果が発揮できそうなところから生成AIを利用している」などと語った。

 同氏は、2024年1月に米ニューヨークで開催された小売業界向けイベント「NRF 2024」の展示内容がAI一色になっていたことに触れ、「小売業界におけるAI活用というと生産性の改善がテーマになりがちだが、NRFの会場では売上拡大やビジネスのイノベーションといった話題が多くなっていた」とする一方、「最初の12カ月で結果が見えないとIT投資をしてもらえないケースは全体の90%を占める。企業のIT予算が厳しくなる中、リターンが見えるAIへの投資は極めて有効であると示す必要がある」と見解を述べた。

 調査によると、小売業ではAI投資によって3.45倍の投資利益率(ROI)を実現しているという。また、先行してAIに投資した小売企業や消費財企業では、約8倍のリターンを得ている。「これは小売業界にとって心強い数字になる。小売業界こそ、売上拡大という観点からAI投資を考えた方がいい」と同氏は提言した。

 小売および消費財分野においては、AIの活用によって「データによる新たな価値」「顧客エンゲージメントの向上」「リアルタイムなサプライチェーン」「従業員の業務効率化・働き方改革」の4つのメリットが生まれると述べた。

 「特に日本の小売業では、データは山のようにあるが活用されていないという実態がある。AIを活用してインサイト(洞察)を出し、アクションにつなげることが大切である。また、日本はECの活用が遅れていたが、コロナ禍で一気に進展し、世界に少し追い付きつつある。だが、サプライチェーンの流動性に対応する必要があり、川上/川下でもっとAIを活用していかなくてはならない」(津坂氏)

 ここでは、「Microsoft Fabric」によって提供される小売データソリューションについても触れ、一つのデータレイクに分断された業務システムの小売データを統合することで、生成AIの活用を促進でき、データを活用した新たなショッピング体験の創造が可能になるとした。

 中でも時間を割いて説明したのが、顧客エンゲージメントの向上に「Copilot」を活用するという提案だ。テンプレートを活用してCopilotを自社システムに搭載。顧客は自然言語によって対話することで、よりパーソナルな体験を得られるという。

 米国では約60%の顧客が、ウェブサイトで検索するより、チャットボットでのやりとりに慣れているという結果が出ており、「自分がどのぐらいのレベルのスキーヤーで、どんなスキー場に行きたいか、どんなブランドが好きか」といったことを話すと、在庫データに基づいて最適なものを提案してくれる。

 例えば「3月にオーストラリアで行われる結婚式に出席するためにお勧めの服を教えてほしい」と聞くだけで、現地の季節や気温を調べたり、結婚式に最適なスタイルや素材を選んだりするといったことについて、検索することなく最適な提案が得られる。

 Walmartは、Microsoftとの提携によってショッピングアシスタントを導入し、顧客体験(CX)を向上させた。子供の誕生日パーティーを計画している際、子供がシンデレラを好きな場合は、従来方法では「シンデレラ」と検索エンジンに入力して関連する商品を探すが、生成AIでは「シンデレラが好きな5歳の子供の誕生日パーティーはどうすればいいか」と聞けば、ショッピングアシスタント側がこれまでの購買データなども活用しながら、さまざまな商材を提案し、ECの体験が大きく変わるとした。

 また、従業員の働き方改革では、タブレットやスマートフォンなどのデバイスを利用しながら、あらゆる問い合わせに対応できるバーチャルコンパニオンをテンプレートとして提供し、従業員向けの生成AI利用環境を簡単に構築できるように支援。既に店舗の生産性向上や従業員の満足度向上などの成果が出ているという。

 「店舗などのフロントラインでAIを活用したいという人は3割程度おり、AIが助けてくれるならば使ってみたいという人は約7割に達する。だが、AIが怖いと言っている人も49%いる。これからは、店長から従業員まで一気通貫でデータを手に入れ、業務に利用できる環境が必要であり、ここに生成AIが活用できる」と同氏は述べた。

 従業員が使用する50以上の社内アプリケーションを、生成AIによってインターフェースを統一し、自然言語によるテキスト入力や音声で操作できるようになった例もあるという。

 さらに、津坂氏はコンサルタント時代に使っていた「10、20、70の法則」についても説明した。これは「ロミンガーの法則」になぞらえたものだが、「DXに置き換えると、10はアルゴリズム、20がITなどのデジタルインフラであり、70がプロセスやカルチャーとなる。DXにおいては、テクノロジーよりもプロセスやカルチャーが大切になる。日本マイクロソフトはテクノロジーを提供するだけでなく、プロセスとカルチャー変革においてもお客さまに寄り添っていく」などと語った。

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