2030年に目指すべき姿を示した富士通 時田社長の「思い」と外部から見た「懸念」
今回は「2030年に目指すべき姿を示した富士通 時田社長の「思い」と外部から見た「懸念」」についてご紹介します。
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本連載「松岡功の『今週の明言』」では毎週、ICT業界のキーパーソンたちが記者会見やイベントなどで明言した言葉を幾つか取り上げ、その意味や背景などを解説している。
今回は、富士通 代表取締役社長 CEOの時田隆仁氏と、NEC 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの森田隆之氏の「明言」を紹介する。
富士通は先頃、2023年度(2024年3月期)の決算と中期経営計画の進捗(しんちょく)状況についてメディアおよびアナリスト向けに説明会を開いた。時田氏の冒頭の発言はその会見で、2030年に同社の目指すべき姿について述べたものである。
会見の内容については関連記事をご覧いただくとして、ここでは時田氏の冒頭の発言に注目したい。
時田氏は「2030年に向けた価値創造の考え方」として図1を示し、2030年に富士通が目指すべき姿として「デジタルサービスによって『ネットポジティブ』を実現するテクノロジーカンパニー」を掲げた。これが冒頭の発言である。
同氏によると、「ネットポジティブ」とは「社会に存在する富士通が財務的なリターンの最大化に加え、地球環境問題の解決やデジタル社会の発展、そして人々のウェルビーイングの向上といったマテリアリティー(重要課題)に取り組み、テクノロジーとイノベーションによって社会全体へのインパクトをプラスにする」ことを指す。
同氏はその上で、「このビジョンの実現に向けては、事業モデル・ポートフォリオ戦略、カスタマーサクセス戦略/地域戦略、テクノロジー戦略、リソース戦略といった4つの重要戦略を軸に施策を進めている」と説明した。
図1は、富士通の事業活動と、それにおけるインプットとアウトプットの循環を示したもので、筆者の記憶では同社が今回初めて提示した図だ。まさしく企業としての「営み」を一枚の絵に集約したもので、この整理の仕方はほかの企業にも大いに参考になるのではないか。
そして、時田氏は「サステナブルな未来に向けて」と題した図2を示しながら、次のように語りかけた。
「当社は、従来のプロダクトおよび請負型のシステムインテグレーション(SI)を中心とする事業形態から、テクノロジーをベースに新たなアイデアを生み出し、次の成長につながる価値をお客さまに提供する事業モデルの変革を目指し、これからもさまざまな改革を進めていく。ビジネスにおけるサービスソリューションの比率は年々増加している。また、クロスインダストリーでお客さまのサステナビリティートランスフォーメーション(SX)に貢献するという新たな発想から生まれた『Fujitsu Uvance』も、さまざまなお客さまとの実践例がグローバルに出てきており、手応えを強く感じている」
「当社のマテリアリティーである地球環境問題の解決、デジタル社会の発展、人々のウェルビーイング向上に事業を通じて取り組みながら、当社自身がサステナブルに成長する企業となれるように引き続き取り組んでいきたい」
時田氏の今の思いを集約したメッセージといえよう。ただ、同氏の話を聞いていて筆者が抱いた懸念を述べておくと、強いリーダーシップを発揮している時田氏がもし経営トップを降りることになれば、その後の富士通の変革は果たして継続できるのか。同社はこの4月から5人の副社長体制になったが、時田氏の後はどのような経営体制で変革を進めていくのか。これが同社にとって非常に重要なリスクマネジメントではないか。引き続き、注視していきたい。