ServiceNowのマクダーモットCEOに聞く、生成AIの戦略や日本のビジネス
今回は「ServiceNowのマクダーモットCEOに聞く、生成AIの戦略や日本のビジネス」についてご紹介します。
関連ワード (CIO/経営、トップインタビュー等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
ServiceNowの最高経営責任者(CEO)を務めるBill McDermott氏は、「ServiceNowが21世紀を代表するエンタープライズソフトウェアになる」と自信を見せる。前職のSAPでCEOとしてクラウドビジネスへの変革を主導し、Appleとの提携、Qualtricsの買収など、エンタープライズ領域でのモバイルやコンシューマー化の波を先取りした実績を持つ。2019年のServiceNow CEO就任から5年。McDermott氏は、「日本は重要な市場だ」とコミットする。McDermott氏に同社のビジネスについて話を聞いた。
–ServiceNowは、「AIを企業の全ての業務が利用できるようにする」というメッセージを打ち出しています。生成AIの戦略を教えてください。
ビジネスを変革するためには、ビジネスとAIが動くプラットフォームが不可欠であり、ServiceNowは、ビジネス変革のためのAIプラットフォームを提供します。
なぜ、それが可能なのか――ServiceNowは、IT管理からビジネスの安全性、管理、オペレーションのための技術を備えているからになります。これを利用することで、従業員の体験を改善し、顧客満足を高め、開発者のイノベーションを支援できます。ServiceNowは、単一プラットフォームでこれらを支え、生成AIを組み込んでいますから、ServiceNowの全ユーザーがAIを利用できます。
業界を問わず、あらゆる企業がこのプラットフォームを利用して、ビジネスを変革できます。つまり、(ビジネスで)勝つためのプラットフォームです。
–生成AIのフォーカスがアプリケーション側に移り始めています。ServiceNowのチャンスはどこにありますか。
ドメイン固有型のAIが重要になるでしょう。われわれの場合、ServiceNowが持つプロセスなどのデータでトレーニングしたAIをプラットフォームに組み込んでいます。新しい機能やリリースによって生産性とシステムの応答性やスピードが相乗し改善されていきます。ドメイン固有のAIを組み込むことで、顧客はスピード、安全性、コストなどのメリットを得られます。実に無駄のない手法と言えます。
われわれは、NVIDIAと5年以上も企業向けのAI開発で協業しています。これはかなり早期からのものでわれわれの優位性につながっています。Jensen(NVIDIA 共同創業者兼CEOのJensen Huang氏、イベントの基調講演にゲストとして登場した)が示したように、「ムーアの法則」を考慮すれば、今後10年でAIは、歴史上のどの技術革新よりも高速に進展します。そこで早期にスタートしたわれわれは、先行者利益を享受できます。
–一方で、現在の生成AIのメリットは、効率性や自動化にとどまっています。ServiceNowは、顧客が変革的なメリットを得られるようにどう支援しますか。
AIでは、漸進的にではなく指数関数的な思考が求められます。多くの企業は、まだ漸進的な思考です。1mの歩幅で3歩・3m、30歩・30m進むのと、30歩で10億m進むのでは、実に大きな違いで、それがビジネスに与える影響は大きいのです。
ここでServiceNowは大きな役割を果たします。ServiceNowは、ERP、CRM、人事、財務などの上にあるクリーンなエンゲージメントレイヤーであり、IT部門に対しては、「システムオブレコード(SoR)」としても機能します。これがわれわれの競争優位性で、顧客の変革的な思考を支えます。
基調講演で私は、保険会社が保険金の支払い管理や引き受け業務を生成AIで再構築している例を紹介しました。それだけではありません。例えば、製薬の臨床試験には6年半かかり、試験を通過する薬はごくわずかです。ServiceNowで複雑な手続きや文書化を効率的にすれば、5年短縮できます。5年の短縮でどれだけ多くの命が助かるかを想像してみてください。製造なら、設計、マーケティング、市場への投入、注文プロセスといったワークフロー全体を見直し、それにより生まれる時間やコストをほかのことに充てることができます。メーカーは、製品自体の利益が少なく、消費者と直接つながり、サービスから収益を得ようとしています。しかし、人がサービスを提供している限り拡大させるのは容易ではありません。しかしライフサイクル全体を追跡し、生成AIや予知保全を使うことで、可能性が大きく広がります。
このように、あらゆる業界がAIでビジネスプロセスを再考することができます。そしてServiceNowは、コントロールタワーのような役割を果たします。つまり、われわれだけではなく、さまざまなベンダーのAIも範囲に入れ、管理や測定を可能にしていきます。
ServiceNowを使えば、製品や市場全体を理解でき、予測ができ、プロセスを柔軟に変えることもできます。顧客は、即日配達のような優れたサービスに高い料金を支払うことを厭わないのです。ServiceNowを使って、同じ人数でより優れたサービスを提供すれば、利益率を大きく改善できます。これは生産性の問題だけでなく、人の数と業務という点で、ビジネスモデルの見直すという問題にも応えられます。
–生成AIを活用する際に、セキュリティ上の懸念や従業員の受け入れなど、幾つかの障害が考えられます。この点をどう見ていますか。
確かにわれわれは、まだAIの取り組みの早期段階にあり、顧客側の受け入れもこれからです。しかし、技術そのものはそれを上回るペースで成熟しつつあり、いまスタートしなければ、大きく遅れてしまいます。
Jensen(NVIDIA CEOのJensen Huang氏)が、「電車を外から見ると高速移動しているように見えるが、乗客は高速に感じない」と例えており、まさにその通りです。
われわれは、プラットフォームに生成AIを組み込むことで、顧客が意識することなくメリットを活かせるようにしています。AIを使っているのかどうかを考える必要はありません。
生成AI市場は、3年後に11兆ドル規模になると言われています。たくさん喧伝され、誇大広告をしているベンダーも少なくありません。本当に先行者利益を得られる企業はNVIDIA、Microsoft、ServiceNowぐらいでしょう。われわれは、(ライバルより)5年以上も(早く)、(速い)“新幹線”に乗っているので、(ライバルが)追い付くのは困難です。その成果を「機能」という形で顧客へ迅速に提供しています。