第1回:PLG(プロダクトレッドグロース)とは?–アプリ時代の必須ビジネス成長モデル

今回は「第1回:PLG(プロダクトレッドグロース)とは?–アプリ時代の必須ビジネス成長モデル」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 私たちは日々のあらゆることにアプリを使うようになりました。コンテンツ視聴やショッピングをはじめ、銀行での取引、仕事のやりとりなど、枚挙にいとまがありません。スマートフォン1台で全ての作業が完結する時代、企業の立場から見ると、アプリやウェブサービスこそが顧客との主な接点となっています。商材の性質にかかわらず、アプリに対する顧客の評価がその企業全体に対する評価につながることも珍しくありません。アプリやウェブサイトの体験が顧客の獲得や維持に与えるインパクトは大きくなるばかりです。

 世界では、アプリやウェブサービスをデジタルプロダクトとまとめ、ビジネスの成功を左右する主要因として捉える見方が、常識になりつつあります。実際、調査会社のIDCによると、2026年にはアジアを拠点とする企業の40%の収益がデジタルプロダクトから創出されると予想されています。時代に合わせてビジネスが成長を続けるには、デジタルプロダクトを事業の中核に据え、そこにおけるユーザー体験をより良いものに進化させていく必要があります。

 この現状にかなった事業成長モデルが、「プロダクトレッドグロース(PLG、製品主導型の成長)」です。PLGとは、デジタルプロダクトをビジネスの成長の軸としたモデルを意味し、プロダクト自体が営業やマーケティングの機能を持ち、グロース(成長)を目指す、体系化した新しい成長戦略です。具体的に見ていきましょう。

 PLGの生命線の一つの例として、「フリーミアム」という料金体系が挙げられます。ユーザーにサービスを無料で体験してもらい、そこから購入や有料のサブスクリプションへのアップグレードを促す仕組みです。フリーミアムでは、ユーザーの体験が顧客訴求の核となります。ユーザーは商談などから購入を判断するのではなく、実際に利用/体験することで購入を促します。いうなれば、プロダクト自体が営業としてユーザーに訴求している状態です。これがPLGです。

 PLG以外の成長モデルとしては、営業担当者の実績が鍵を握る「営業主導型モデル」、あるいは広告やキャンペーンなどのマーケティング施策のコンバージョンを収益の原動力とする「マーケティング主導型モデル」が挙げられます。これらのモデルも、事業やプロダクトの性質によっては機能しますが、顧客満足や顧客維持までを視野に入れれば、PLGの特徴である、プロダクト自体が顧客を囲い込み、非常に効率的に事業成長を促すモデルとなるでしょう。

 実際、Bain&Companyの調査によると、PLGに重点的に取り組んでいる企業は、限定的に取り組んでいる企業、または全く注力していない企業よりも成長スピードが速いと言われています。また、近年、デジタルプロダクトは開発や改善が容易になりました。プロダクトに問題があってもすぐに解決、強化できるため、PLGはより導入しやすい戦略モデルとなったのです。

 ここでよく疑問に思われるのが、「プロダクト主導型モデルであれば、開発担当しか事業に必要ないのではないか」という点です。そうではありません。PLGでは、マーケティング、営業、カスタマーサポートなどを含め、顧客と接点のある各部署が連携し、プロダクトの価値向上を目指すことが重要です。

 マーケティングは、顧客が有料会員にアップグレードする準備ができた時に、パーソナライズされたキャンペーンを実行することができます。営業は、顧客が個別サポートを必要とするような複雑なケースに直面していることを特定できます。カスタマーサポートは、顧客がアプリ内で困っていることを察知し、支援を行うことができます。これらは全て、顧客のプロダクト体験に関わってきます。

 社内全体で上手に活用すれば急速な成長につながるPLGですが、その運用につまずいている企業が多いのもまた事実です。そこで、次にPLG戦略を実践する上で知っておきたいポイントを紹介します。

 まず、良いプロダクトが一般的にどのような特長を備えているか、理解しておきましょう。1つ目の条件は「Accessibility(アクセシビリティー)」です。日本語にすると、「近づきやすさ」や「使いやすさ」を表す言葉ですが、例えばアカウント設定が面倒だったり、インターフェースが分かりにくかったりすると、顧客は離脱してしまいます。一方、利用しやすく、簡単に使えるプロダクトは利用のストレスがないため、当然顧客を長時間サイト内に引き留めておくことができます。

 次に重要なことが「Essentiality(エッセンシャリティー)」という概念です。これは、「必要不可欠である」ことを意味する英語ですが、つまり顧客がプロダクトを日々の生活や仕事に不可欠だと感じることが大切である、ということです。このような顧客の感覚は、プロダクトが問題を解決した時に生まれます。

 例えば、フードデリバリーのサービスは一般的に便利と思われていますが、必要性を感じない人がいることも事実です。しかし、買い出しを忘れて冷蔵庫に食材が何もない夜、または、突然コンロが壊れたようなタイミングであれば、どうでしょう。フードデリバリーの価値が一気に伝わるチャンスとなるのです。

 このチャンスを、われわれは「アハモーメント」と呼んでいます。このような「必要とされる瞬間」のプロダクト体験が、次回以降のリピートを左右します。良いデジタルプロダクトは、理想的な利用場面が入念に想定されており、そのシーンで最大の利用価値が発揮されるよう計算されています。言うはやすく行うは難しですが、顧客を獲得/維持する上では重要な考え方です。

 最後の条件は「Monetizability(マネタイザビリティー)」、日本語にすると「収益可能性」です。いくら顧客を獲得/維持できても、利益を産まなければビジネスとして成り立ちません。良いプロダクトは顧客に高い価値を提供しながら、同時に利益も最大化します。

 デジタルプロダクトを運用する上では、無料体験から有料サブスクリプション、またはより高額なプランへのアップグレード件数を増やすことが重要です。広告収入がメインのプロダクトであれば、1人当たりの広告閲覧時間などの指標を、しっかり重要視していく必要があるでしょう。

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