インテルが直面する課題–競合の台頭とAI時代への適応

今回は「インテルが直面する課題–競合の台頭とAI時代への適応」についてご紹介します。

関連ワード (セキュリティ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 かつては誰もが認めるコンピューター業界の巨人だったIntelが、前例のない困難に直面している。9月下旬、衝撃的なニュースに業界が揺れた。ApolloがIntelに膨大な額のエクイティー投資を提案したと報じられたほか、The Wall Street Journalは、Qualcommが時価総額900億ドルの企業であるIntelの買収の可能性を探っていると伝えた。

 Intelが苦境に立たされた原因は、ArmやNVIDIAなどの電力効率に優れたAI駆動のアーキテクチャーがテクノロジー業界を席巻したという劇的な変化だ。

 この変化は10年以上にわたり続いている。筆者は2011年に執筆した記事「Post-PC: Why Intel Can No Longer Live in Denial」で、x86がいずれアーキテクチャーの王座を追われ、コンピューティングの需要が進化するにもかかわらず、同社は存在感を維持するのが難しくなると予想した。現在、それらの予想は現実のものとなり、Intelは生成AI時代に自社の地位を維持しようと奮闘している。

 x86は、40年以上にわたってPCアーキテクチャーとサーバーアーキテクチャーで優位に立っていた。しかし、クラウドネイティブアプリケーション、AIワークロード、並列処理の需要が拡大する中で、x86の弱みが浮き彫りになった。現代のコンピューティングワークロードには、より効率的でスケーラブルなアーキテクチャーが求められており、そのニーズはIntelによるx86の漸進的な改善を上回るペースで拡大している。

 Intelは「Intel 18A」製造プロセスで主導権を取り戻そうとしたが、遅延や技術的課題に阻まれ、競争力がさらに低下した。対照的に、NVIDIAはAIハードウェアで優位に立ち、Armはハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)、モバイル、データセンターの市場に進出し、Intelは追う側に回った。

 Armは当初、モバイルデバイスで注目を集めたが、同社のアーキテクチャーはより強力なコンピューティングシステムに広く浸透していった。転機となったのは、Appleが2020年に「Apple Silicon」に移行したことだ。筆者が2012年の記事「Apple Semiconductors: Brave New Macs」で予測したように、AppleのArmベースの「M1」「M2」チップは、Intelのx86プロセッサーを上回る電力効率と演算能力を備えていた。これは大きな変化であり、ArmベースのシステムでコンシューマータスクとHPCタスクの両方を処理できることが証明された。

 Appleが自社のArmベースチップを中心にハードウェアとソフトウェアを統合できるようになったため、Intelのx86アーキテクチャーはパーソナルコンピューティング分野で苦戦を強いられ、Armベースのソリューションへの移行が業界全体で加速した。

 これまでモバイルチップ分野のリーダーだったQualcommが、スマートフォンという枠を越えて、デスクトップコンピューティングとデータセンターに進出している。新しい「Snapdragon X」プロセッサーを搭載する「Copilot+ PC」の発表で、Qualcommはデスクトップ分野への重要な一歩を踏み出し、AIとクラウド中心のワークロード向けに設計された新世代のArmベース「Windows」PCが提供されるようになった。このプラットフォームは、デスクトップ分野の根本的な変化を象徴するものだ。すなわち、より効率的でAIに最適化されたArmのアーキテクチャーが、x86の地位を奪いつつある。

 Qualcommはデータセンターでの役割も大きくなっている。モバイルとエッジコンピューティングの専門知識を活用することで、クラウドとAI駆動のタスクに特化し、電力効率とスケーラビリティーに重点を置いたプロセッサーを開発中だ。AIワークロードが引き続きクラウドインフラストラクチャーの未来を推進していく中で、Qualcommは自社をデータセンターにおけるIntelとNVIDIAの有力な対抗馬と位置付けている。

 AIワークロードがデータセンター運用の中心となり、NVIDIAやAppleといった企業が、こうしたタスクを処理するカスタムインフラストラクチャー構築の最先端に立っている。

 NVIDIAの「Grace Hopper」プラットフォームはCPUとGPUの機能を組み合わせることで、AIタスクに最適化された並列処理能力を提供する。従来のx86ベースのサーバーは、AIに求められる複雑な並列ワークロードを効率的に処理することができない。しかし、NVIDIAのプラットフォームはそうしたワークロードを効率的に管理できるように構築されているため、AIが多用されるデータセンターでの最適な選択肢となっている。

 同様に、Appleもコンシューマーデバイスの枠を越えて、Apple Siliconを「Apple Intelligence」の「Private Cloud Compute」イニシアチブに活用している。Appleのインフラストラクチャーは、「macOS」「Darwin」を使用してカスタム設計されたサーバー上で稼働し、同社のAIと機械学習のワークロード向けに最適化されている。NVIDIAと同じく、Appleもハードウェアとソフトウェアの両方を管理することで、非常に効率的なシステムを構築し、AIとクラウドに関する自社の特定のニーズに対応できるようになった。

 このような動きは総じて、AIとクラウドインフラストラクチャーの未来が、AIに最適化されたカスタム構築ハードウェアプラットフォームへと向かい、x86が取り残されつつあることを示している。

 コンテナー化、マイクロサービス、Platform as a Service(PaaS)などのクラウドネイティブテクノロジーの採用が進むにつれて、x86ベースのシステムへの依存度が下がっている。こうした発展によって、開発者はハードウェアに依存しないアプリケーションを構築できるようになり、クラウドでのx86仮想マシンの必要性が低下した。

 このx86アーキテクチャー離れが原因で、より特化型のシステムが登場する道が開かれた。例えば、Ampereなどの企業のArmベースサーバーは、大幅なエネルギー節約とスケーラビリティーを実現する。こうした状況の中、Intelの従来のx86製品は、より効率的で、最新のクラウドネイティブアプリケーションのニーズにさらに効果的に対応できるソリューションに押されている。

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