第2回:企業に蓄積されたデータをクラウドで活用するメリット
今回は「第2回:企業に蓄積されたデータをクラウドで活用するメリット」についてご紹介します。
関連ワード (CIO・情シス部長が知っておきたい「データクラウド」の基本と構造、ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
前回は、クラウドネイティブなデータ基盤の特徴や設計のポイントについて解説しました。では、実際の企業が、このデータ基盤を活用することで、どのようにビジネス価値を生み出すことができるのでしょうか。本稿では、企業がデータを活用する際の具体的な課題と、クラウドネイティブなデータ基盤を活用した解決方法、そしてその次のステップで広がる可能性について解説していきます。
多くの企業では、長年にわたり組織や業務システムごとにデータが個別に管理され、拡大していく「データサイロ化」の問題を抱えています。例えば、営業部門は顧客関係管理(CRM)システムで顧客データを管理し、マーケティング部門は顧客データ基盤(CDP)やマーケティングオートメーション(MA)システムで顧客の行動データを収集・管理し、製造部門は生産管理システムでオペレーションデータを管理しています。このようなサイロ化が進むと、組織間での連携が難しくなり、データの活用が妨げられ、さらに新たなデータサイロが生まれるという悪循環に陥ります。
特に深刻な問題として、顧客理解の断片化が挙げられます。同じ顧客に関するデータが複数のシステムに分散していることで、その顧客との関係を正確に理解することが難しくなります。その結果、顧客に対する適切な営業活動やプロモーションができなくなったり、顧客に価値を届けるタイミングを逃したりする可能性があります。
さらに、データの重複や正確なデータの特定が困難になることも大きな問題です。複数のシステムで同様のデータを保持することは、ストレージコストの増加だけでなく、データパイプラインの重複や、システム間でのデータ整合性の確保といった運用負荷の増大と処理速度の低下を引き起こします。加えて、一元化されていないデータは組織のガバナンスルールが適用されず、情報漏えいなどのセキュリティリスクを高めることになります。
このようなデータサイロ化に起因するさまざまな課題に対して、クラウドネイティブなデータ基盤は効果的な解決策を提供します。前回で説明したように、クラウドネイティブなデータ基盤の拡張性により、データのサイズや種類を問わず蓄積することが可能です。これにより、データの発生元である組織や業務システムに依存せず、データの一元管理を実現できます。
データの一元管理が実現すると、データガバナンスも容易になります。データの重複が減り、信頼できる単一のデータソースを定義することが可能です。その結果、ストレージコストが削減され、データ管理の運用負荷が軽減されます。さらに、信頼性の高いデータを基に顧客分析や企業の意思決定のスピードと品質が向上します。
では、データサイロ化が解消されれば全ての問題が解決するのでしょうか。そうではありません。データサイロ化の解消は、データを活用して価値を創出するための準備段階にすぎません。クラウドネイティブなデータ基盤の真の価値は、その次のステップで明らかになります。
データの一元管理が実現し、運用が容易になり、データの信頼性が向上することで、データからビジネス価値を引き出すことが可能になります。特に注目すべきは、組織を越えたデータコラボレーションと人工知能/機械学習(AI/ML)の活用による高度な分析の実現です。
データコラボレーションについてもう少し具体的に見ていきましょう。これまで、組織外とのデータ共有にはネットワークの準備、セキュリティ対策、プロトコルの統一など、多くの障壁がありました。しかし、クラウドネイティブなデータ基盤にはエンタープライズレベルのネットワークやセキュリティ機能が組み込まれており、統一されたインターフェースを通じて複雑な準備をせずにデータを共有することが可能です。
例えば、製造業におけるサプライチェーンの最適化では、メーカーと部品サプライヤーがリアルタイムに在庫データや需要予測を共有することで、より効率的な生産計画を立てることができます。また、小売業では、メーカーと販売データを共有することで、売り場の品ぞろえや在庫の最適化が可能になります。さらに、サードパーティーの市場データや気象データ、法人データ、流動人口データなども組み合わせることで、より正確な需要予測やマーケティングが実現します。
AI/MLの活用も、クラウドネイティブなデータ基盤がもたらす重要な価値の一つです。統合されたデータ基盤では、これまで個別に管理されていたさまざまなデータを組み合わせて分析できます。例えば、製造現場のセンサーデータ、品質検査データ、保守履歴などを統合的に分析することで、製造装置の故障を事前に予測し、予防保全を実現できます。このような分析では、予測する値に影響を与える変数の数が多いため、MLモデルによる推論が役立ちます。
最近では、データ分析の世界で生成AIの活用も急速に広がっています。時系列予測や分類、異常値検出など、データと分析結果の関係にある程度パターンが見えている場合にはMLモデルが活躍します。一方で、多種多様な背景情報から答えを推測するような創造性を伴うタスクは生成AIが得意とする領域です。例えば、社内文章から特定の観点でデータを構造化したり、対話形式でデータの価値を探ったり、データの表記揺れを吸収して分類したりすることが可能です。