株式取引業務をユースケースに、量子暗号通信による膨大な金融取引データの高秘匿・低遅延伝送の検証実験を実施

今回は「株式取引業務をユースケースに、量子暗号通信による膨大な金融取引データの高秘匿・低遅延伝送の検証実験を実施」についてご紹介します。

関連ワード (情報通信研究機構、遜色、高速化等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


東芝は1月14日、株式取引業務をユースケースとする量子暗号技術の有効性と実用性に関する検証実験を、野村ホールディングス、野村證券、情報通信研究機構(NICT)、日本電気(NEC)と共同で実施したことを発表した。これは、実際の株式取引で標準的に使われている伝送フォーマット「FIX」に準拠し、金融取引の模擬環境において、データの高秘匿性、低遅延性、大量伝送の耐性を検証した国内で初めての試みだ。結果として、量子暗号化を適用しても従来のシステムと遜色のない通信速度が維持できること、大量の株式発注でも暗号鍵が枯渇しないことがわかった。

コンピューターによる株式のアルゴリズム取引が普及したことで、国内の証券取引所における1日の取引高は3兆円を超えるほどに拡大した。取引処理の遅延が機械損失につながるため、注文応答時間がミリ秒未満の通信ネットワーク基盤も提供されている。今後、5G・Beyond 5Gからさらに高速な通信技術が普及すると、さらなる高速化、大容量化、低遅延化が求められる。加えてサイバー攻撃の増加にともない、金融機関におけるセキュリティー対策の一層の強化が求められる。そのため、「理論上いかなる計算能力を持つ第三者でも解読できないことが保証されている唯一の暗号通信方式」である量子暗号通信の金融分野への適用が欠かせない。

共同検証にあたり、NICTが量子鍵配送(QKD。Quantum Key Distribution)装置を導入して構築した試験用通信ネットワーク環境「Tokyo QKD Network」上に投資家と証券会社を模した金融取引の模擬環境を整備。野村ホールディングスと野村證券が、FIXプロトコルに準拠した模擬データを生成するアプリケーションを開発した。

使用した暗号化方式は、ワンタイムパッド(OTP)方式と高度暗号化標準(AES)方式の弱点に対する対応を施した「高速OTP」と「SW-AES」、そしてNECが開発した回線暗号装置「COMCIPHER-Q」の3つ。それぞれの方式の違いによる影響について検証が行われた。

その結果、量子暗号通信を適用しても従来のシステムと比較して遜色のない通信速度が維持できること、大量の株式取引が発生しても暗号鍵を枯渇させることなく高秘匿と高速暗号通信が実現できることが確認された。もし、鍵の枯渇が懸念される場合には、鍵消費量の少ない方式に切り替えることで、ビジネスの継続性を維持できる。暗号化レベルや暗号通信速度などで顧客ニーズに対応できる柔軟な提案が可能になるという。

今後は、1週間程度の連続稼働と、システム障害時にシステムの切り替えが遅延なくできるかを、2021年度末までにテストするとのことだ。

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