大塚商会が決算発表–「大戦略II」で今後の成長を継続

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 大塚商会は2月1日、2021年度(2021年1~12月)連結業績を発表。その中で、営業支援システムである「大戦略II」を活用した今後の成長戦略について時間を割いて説明した。

 同社の大塚裕司社長は、「このままでは、大塚商会は8000億円の企業で終わってしまう。大戦略IIを活用して、成長できる姿に変えていきたい。新たな成長のために、2022年度の事業計画は踊り場ともいえるものにしたが、業績があがれば損益分岐点を大きく超えてくる。大戦略IIとともに、永続的に存続し、成長できる会社を目指す」と宣言した。

 大塚商会は、1998年から生産性向上と財務体質強化を目的とした「大戦略」を稼働。さらに、2003年からは、科学的営業スタイルを実現する「Sales Process Re-engineering(SPR)」を本格稼働させ、現在、これをSPR2へと進化させている。また、2015年以降は、顧客との新たな関係創りを主軸とした「大戦略II」をスタート。社員1人当たりの売上高は1998年に比べて2.2倍、営業利益は20.3倍にまで拡大させている。

 だが、今回の会見での大塚社長の発言は、コロナ禍における環境変化を捉えて、改めて、大戦略IIのコンセプトと狙いを社内に徹底させ、活用を促進しようという意図が感じられる。中長期では売上高1兆円が視野に入る同社が、ここでギアーを入れ替えた格好だ。

 大塚社長は、「大戦略II を活用することで、1企業当たりの商材数や人工知能(AI)による商談を増やすことなどに取り組んできたが、現場では、この1年間、複合商談比率やAI商談率が横ばいになっている。売上高8000億円の企業で終わらないためには、お客さまに寄り添った新たなやり方に変わらなくてはならない。不振ともいえるデータから、課題に対する気づきが得られ、やり方を変えなくてはならないと決意することができた」などと語り、「私が銀行員だった時には、目の前で会社が倒産する様子を何度も見た。成長を止めた時に問題が発生する。企業は成長しなくてはならない。今は厳しい環境だが、大戦略IIの準備ができている。今後1、2年でこれを生かせる体質へと変革していく」と述べた。

 具体的には、AIを活用した営業支援活動を強化。以前から活用するAIで訪問先を発掘する「行き先・商材推奨」、初期営業活動から受注までをサポートする「商談プロセス促進」に加えて、現在試行展開する、導入から顧客満足度の向上までを支援する「導入後フォロー」の活用により、顧客との関係性をさらに深化させるという。また、独自のiPhoneアプリ「AIアシスタント」により、営業担当者をサポートするパーソナル秘書としての活用を強化するほか、ウェルビーイングの実現に向けて、日立グループで開発を進めている心理学や経営学の学術成果に基づいて設計した「Happiness Planet」を新たに活用し、社員の幸福度を測りながら、人と組織の活性化を図る考えも示した。

 「AIを活用した営業プロセス支援は数年前から行い、AIが訪問先を推奨し、商談プロセスを支援するところまではできている。これを活用できているかどうかが課題。AIが提案したものを営業が考えて、きちんと提案できるのかといったように、AIに使われるのではなく、AIを使いこなすことが大切だ。AIで気づきを得て複写機だけの販売をしていた営業が、意思を持って複数の商品を扱えるようにしたい。AI活用スキルを高め、知識や経験、意欲の向上を含めてお客さま目線でのソリューション提案力を育成し、より生産性を高めていく」とした。

 大塚商会は、現在約2400社の国内外のパートナー企業の商品を取り扱っており、これらを自社で活用し経験を生かしながら、28万7000社の顧客にソリューションとして提案している。このうち約80%が、年商10億円未満の中小企業だという。

 「自社での活用経験や、多くの組み合わせによって、大塚商会ならではの提案も多い」としながら、「だが28万7000社のうち、3分の2は『たのめーる』だけのお付き合い。オフィスでは、複写機、ネットワーク、コンピューターなどさまざまなものが必要だが、1品しか取引がないということは、残りは他社から購入していることになる。また、それらを組み合わせて提案できる会社が少ないことを考えれば、個別に購入したものを単品で利用しているケースが多い。大塚商会の総合力を生かせるビジネス体制に切り替えていきたい。そのためには、お客さまとの関係をもっと深いものにし、営業やサポート担当者個人の付き合いではなく、会社全体としてしっかりグリップすることを意識しなくてはならない。これは大戦略IIで目指したものであり、その手法を推進したい」と述べた。

 もともと大戦略IIは、リアルの営業だけでは、全ての顧客を維持できないという課題からスタートしたものだ。そこにインバウンドセンターやアウトバウンドセンターといったセンターによるサポート、「お客様マイページ」を活用したウェブによるアプローチで顧客接点の維持、拡大を目指している。

 「現場のマネジメントも、昭和の時代の成功体験だけでは通用しない。売り方や営業プロセスについても見直しが必要であり、そのための対策づくりを行っていかなくてはならない」とする。ここでは、現状の「モノ」から入る営業プロセスを、課題解決である「コト」から入るプロセスへと変革することを目指す。

 「新たな働き方で世の中が変わる中、今までの単品型や価格提案型では通用しなくなってきた。また、月末になると売りたいものを売りに行くという現場の営業スタイルからの脱却も必要。お客さまに寄り添った困り事を解決することができていない現場の状況を変えなくてはならない。小さな困り事を商談につなげ、それを解決し、それによって次の困り事を話してもらえる体制を作ることで、さまざまな商材を買っていただけるようになる。商品ありきではない営業活動へと軸足をシフトしていくことになる」などとした。

 また、営業に対してコーチングができるマネジメントへの改革のほか、2022年1月からは売りたいものを売ることから脱却し、幅広い商品を売ることを評価する新たな評価制度を採用。労働分配率の引き上げを含めて、社員が働きがいのある会社に変革する取り組みも示した。

 さらに、今回の説明会では、初めて「大塚ID」の登録者数が約22万8000件に達したと発表した。「2020年12月比で約6万件増加している。コロナ禍では、リアルの活動だけでは顧客接点を維持するのは難しい。『大塚ID』と『お客様マイページ』は、お客さまと大塚商会をつなぐツールに位置づけていく」とした。

 大塚IDは、「お客様マイページ」で提供するさまざまなサービスが利用できる無料IDで、ウェブ請求書の利用や、エンジニア対応状況の確認、サポート作業報告書などのほか、ビジネスeラーニングの受講や、製品やサービスの試用、資料ダウンロード、フェアやセミナー申し込みなど、顧客接点の重要な窓口になる。「もっと利用してもらえるようにブラシュアップしたい」と述べた。

 また、大塚社長は、こうした取り組みを通じて、「リアル、ウェブ、センターによるお客さま接点の拡大、関係創りファーストの体制を再構築することにより、『オール大塚』でお客さまに寄り添うことができる体制づくりを目指す」とも語った。

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