機械学習でイノシシの出没確率を予測、森林総研と岩手県立大学が岩手県におけるイノシシ出没ハザードマップを作成
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2017年~2019年の出没データを用いて作成したイノシシの出没予測図。この図をハザードマップとして用いることが可能。図中の細線は市町村界を示す
森林研究・整備機構森林総合研究所(⼤⻄尚樹氏)と岩手県立大学(今⽥⽇菜⼦氏、⼀ノ澤友⾹氏)の研究グループは2月15日、岩手県で分布域を拡大しているイノシシの出没を機械学習で予測するハザードマップを作成したと発表した。この手法は地域を限定しないため、他の地域にも応用が可能だという。
研究グループは、2007年以降の岩手県内のイノシシの出没データ(目撃・被害・捕獲情報をまとめたもの)を基に、種の分布モデル(種の分布を推定する手法)を用いた機械学習法により、出没予測図を製作した。また予測には、標高、植生、土地利用、人口、年間最大積雪深の5つの環境データ(国⼟地理院や政府が公開しているオープンデータを採用)を用いたが、このすべてを組み合わせて予測図を作ったところ、標高、植生、土地利用の3つを用いた場合がもっとも信頼度の高い予測図となった。
そして、最初の目撃例からの拡大期にあたる2007年から2017年の出没データを用いた予測図と、拡大を終え定着期に入り大きく出没件数が増えた2018年から2019年の出没データを用いた予測図とを比較したところ、予測確率が高い地域ほど出没が多いことがわかった。つまり、データ量が多いほど予測確率は高くなるということで、2019年までの全データを用いた出没予想図は、今後のイノシシ出没ハザードマップとして活用できるという。
岩手県内のイノシシの分布拡大の変遷。図中の□は5kmメッシュを示し、メッシュごとの目撃件数を色分けした
2007年~2017年の出没データから作成した出没予測図に、2018年~2019年に実際に出没した5kmメッシュ(□)を重ねたもの
この手法は地域を限定しないため、東北以外のイノシシの分布が拡大している地域でも、これを使って独自のハザードマップを作ることが可能だ。また、シカ、サル、クマなどの他の哺乳類にも応用が期待できるという。ただし、これはあくまで目撃や被害をもとにした「出没確率」であって、「生息確率」ではないため、人が関与しない場所で生息している可能性もあるとのことだ。