【コラム】イーロン・マスクとテスラには「ティム・クック」が必要、今こそ「大人」が跡を継ぐときだ

今回は「【コラム】イーロン・マスクとテスラには「ティム・クック」が必要、今こそ「大人」が跡を継ぐときだ」についてご紹介します。

関連ワード (外部、好調、比較等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


同じ物語が何十年も演じられている。

スタートアップは偉大な個性のリーダーの下で開花し繁栄する。すぐに停滞が訪れる。会社の焦点は、無限に続く新製品を販売することから、顧客の要求を満たすものを作っていることの確認へと移り変わっていく。幸福な期間は終わり、新しい時代は、一貫して高品質な製品を大規模に出荷するために必要な退屈な日々から始まる。

ある時点で、あらゆる会社にTim Cook(ティム・クック)が必要になる。今、その会社はTesla(テスラ)だ。

たった今、Teslaの階層に明確な後継者はいない。もし、CEO(兼テクノキング)のElon Musk(イーロン・マスク)氏が潮時と判断して彼の別の会社か音楽活動に焦点を移すと決めたら、引き継ぐ人間は誰もいない。Teslaはマスク氏。すべては彼の手に導かれている。

マスク氏は広報部門を解体し、会社のニュースとTwitter経由で発信している。ファルコンウイングドアをModel Xに採用したのは彼の土壇場のアイデアだった。彼はほぼ完全自動化された自動車工場を作れることを頑なに貫いた。Teslaのクルマとサービスの購入を暗号資産で支払う仕組みも実装し、後に取りやめ、また再び導入した。

マスク氏は、会社のほとんどの新規事業を自身が推し進めているのは「そうしたいからではなく、しなければならないから」だと公に認めている。こうした深いレベルの関わりは、会社の創成期には有効だ。しかし、会社の未来が良質な製品をつくることにかかっているのであれば、1人の人物がすべてを支配していることは破滅的といえる。

Dave, I know you’re a fan, but this is a silly question. I don’t drive programs because I want to, but because I have to.

— Elon Musk (@elonmusk) January 31, 2022

デーブ、君がファンなのは知っている、でもそれは愚問だ。私がプログラムを進めているのは、そうしたいからではなく、しなければならないからだ。

例えばマシンを作るマシンを作るという決断は、Model 3の生産を何カ月も遅らせ、CEOいうところの「生産地獄(production hell)」をもたらした。マスク氏は、完全自動に近い工場を作るのは間違いだったことを最終的に認めた。Model 3の生産はあの決断のために遅延した。

現在、Teslaが好調であり、四半期黒字を達成し出荷台数の新記録を打ち立てていることは事実だ。吉報にはそれ相応の問題がついてくる。1人の人間が成長する組織をこと細かく管理していると、生産の拡大とともに発生する問題に対処しきれなくなる。ある時点で、信頼された人たちに自分たちが仕事を成し遂げ、かつ問題を制御し、報復を恐れることなくCEOの思い付きのアイデアを阻止できる機会が与えられる必要がある。

関連記事:テスラ、予想を上回る2021年第4四半期決算を発表

たった今、Teslaは過去数カ月におきた複数のリコールの対応に追われており、製造問題に見舞われているクルマのレポートに今も悩まされている。加えて、新型車(サイバートラックを含む)の出荷は少なくとも来年、2023年まで延期された。これらは、CEOが個々に動くことのできるチームの力を借りて取り組むべき問題だ。

そして、あの一連のツイート。あまりにも多くのツイートがある。

マスク氏のTwitterでの存在に対する評価は二分されている。ブランドに害をもたらしている恐れも大きい。Teslaに広報部門というものはない。あらゆる情報が、Tesla公式アカウントまたはマスク氏から流れ出す。それは悪くはない、もしCEOの個人アカウントが標的となってTeslaを所有していることによる多くの利益を引き出すのであれば。実際にはそうではなく、それはミームと悪い冗談と侮辱とおべっかへの返信と政治色の強い見解と、それにときたまTeslaのニュースが入り混じったものだ。

CEOとして、Twitterで誰かをヒトラーと比較し、それが会社に悪影響を与えないと考えることはありえない。

会社のために、TeslaはCEOの次の気まぐれより先の未来を見据える必要がある。マスク氏が舵をとっていない時期のことを。最良の状態が、Appleで起きたことだろう。

長年、AppleのビジネスはCEOであるSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)氏と深く関わってきた。彼は会社を倒産の瀬戸際から引き上げ、率いるチームとともに、スマートフォン革命の一端を担った長続きする会社を作り上げた。ジョブズ氏なくしてAppleはなかった、といって間違いない。しかし、企業は永久に1人の人間であり続けることはできない。

ティム・クック氏は、1998年にワールドワイドオペレーションズ担当上級副社長としてAppleに入った。具体的には、会社全体の日常業務を取り仕切る役割だ。2011年、彼はスティーブ・ジョブズ氏が亡くなる前にCEOに指名された。クック氏の指揮の下、会社は売上と利益を2倍以上に伸ばした。クック氏に、ジョブズ氏のような虚勢やビジョンはない。その代わりにクック氏は、自分の仕事を全うする賢い人々を雇い、Appleが利益を上げ良質の製品を届け続けることに専念した。

Teslaには「ティム・クック」が必要だ。この自動車メーカーには、おならの音やビデオゲームなどの楽しい機能を作り続けながら、自動車を予定通り問題なく顧客に出荷できるリーダー(あるいは訓練中のリーダー)が必要だ。Teslaは、この先ずっと、顧客がサービスセンターをいつでも呼び出し、タイムリーにクルマを交換できる仕組みを確実に維持していく必要がある。否が応でも、追いかけてくる他の自動車メーカーが喜んでModel 3オーナーに求愛して自社のEVを売り込むだろう。

会社の売上は好調だが、適切な育成がなければ、Tesla EVの優位性はいつでもライバルに取って代わられる。マスク氏は実際、育てるタイプではない。彼のルールの下、新車出荷台数は史上最高を記録しているが、今も製造品質に関わる問題の報告を受け続けている。これは数年前に解決すべきだった問題だ。

最近の報告によると、Teslaは冗長なステアリング・コントローラーを付けずにクルマを出荷しており、そのことを顧客に伝えていない。このコントローラーは、クルマがFSD(フルセルフ・ドライビング)対応になった際に必要になる。この種の判断は顧客の忠誠心を損ない、購入を考えている人たちを遠ざける。

現在の顧客がTesla車の問題に遭遇した時、未だにサービスを受けるためには不十分な伝達や長い待ち時間とイライラがともなう。修理を終えた顧客は、自分たちの経験をTwitterでシェアしようとするが、マスク氏にへつらうフォロワーたちから攻撃を受けて終わる。マスク氏自身でさえ扱いきれていない連中だ。

そしてリコールがある。過去数年、Teslaは米国幹線道路交通安全局の強い要請を受けて、FSDのソフトウェア問題に関する数々のリコールを発行した。Model 3とModel Yの予告なくブレーキが作動する問題、シートベルト警告音の不具合、サスペンション問題、Model SおよびModel Xのパワーステアリングボルト腐食などだ。最近では、Teslaが追加した機能が後に削除された例もある。このリコールが最も厄介だ。

どの自動車メーカーにもリコールはつきものだが、安全ではないとされたために元に戻さなければならなかったメーカーはあまり聞かない。マスク氏の下でTeslaは、路上走行中、ドライバーが望んだ音を外部スピーカーで鳴らせる機能を推奨した。歩行者への警告音を邪魔する可能性のある機能だ。さらに同社は、自動運転中に一時停止標識を通過(停止ではない!)させるアップデートを配信した。そして、運転中にメイン情報スクリーンでビデオゲームをプレイできる機能を削除するよう言い渡されなくてはならなかった。

一連のリコールについてマスク氏は、NHTSAは「たのしみ警察」だとツイートした。もちろん実際には同機関は安全警察であり、Tesla、および市民の一番の関心事は、自動車メーカーがNHTSAと協力して、道路を全員にとって安全に保つことであり、近隣を走りながらハンプティ・ダンスを流したいTeslaドライバーを喜ばすことではない。

マスク氏、Tesla、そして顧客にとって最善のシナリオは、誰かがCEOと何年か一緒に働き、社内と取締役会の信頼、そして何よりも大切なのは顧客の信頼を築き上げていくことだ。マスク氏を取り巻く個人崇拝は、マスク氏がこの人物をリーダーとして心から受け入れることを必要としている。そうすればマスク氏が会社を去るかCEOを辞任した時も、崇拝者の気持ちも和らぐだろう。

マスク氏が、所有する会社を完全支配するのを止めた前例はある。彼はSpaceX(スペースエックス)のCEOではあるが、経営責任はプレジデント兼COOのGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏と分け合っている。SpaceXについてツイートするのはマスク氏でも、ショーを演出しているのはショットウェル氏だ。彼女は、カンファレンスやイベントでSpaceXを代表することの最も多い幹部でありStarlink(スターリンク)計画のビジョンと戦略を明確に述べる最適の人材であるが、会社の外向きの顔であるだけではない。プレジデント兼COOとして、ショットウェル氏は日々の実務をこなしている。もしマスク氏がCEOを降りると決めたなら、ショットウェル氏には後を引き継ぐ用意がある。

SpaceX、取締役会、米国政府、および提携企業にとって、それは救いの源だ。宇宙旅行を1人の人間に賭けるのは、恐ろしい博打だ、なぜならいずれその人はいなくなるのだから。

残念ながら、Teslaとマスク氏は1つである。一般に知られている限り、現時点でプランBはなく、何かあった時、駆動装置とエネルギー工学担当上級副社長のAndrew Baglino(アンドリュー・バグリノ)氏がCEOを引き継ぐかもしれないことくらいだ。後継者育成計画が進められている可能性はある。しかし、透明性なくしてその計画を遂行することは混乱を呼ぶだけであり、株価に壊滅的打撃を与えかねない。

マスク氏は現在Teslaを動かしており、我々の知る限り、今後も末永く続くだろう。しかし、彼は永遠には存在しない。仮に存在したとしても、蓄積された彼の不幸がついには会社に到達しない保証はない。社員のため、株主のため、そして顧客のためには何か計画が必要であり、即座に行動する必要がある。

画像クレジット:Britta Pedersen-Pool/Getty Images / Getty Images


【原文】

The same story has played out for decades.

A startup blossoms and thrives under the leadership of a larger-than-life personality. A plateau soon follows. The company’s focus moves from introducing an endless string of new products to making sure what it is building meets the demands of customers. The honeymoon period ends and a new era begins that is focused on the banal daily tasks required to consistently deliver quality products at a mass scale.

At some point, every company needs a Tim Cook. Today, that company is Tesla.

Right now, there is no heir apparent within the Tesla hierarchy. No one is poised to take over if CEO (and Technoking of Tesla) Elon Musk decides to call it quits and focus on some of his other companies or his music career. Tesla is Musk. His hands are in everything.

He dismantled the PR department and is disseminating company news via Twitter. Adding the Falcon Wing doors to the Model X was his last-minute idea. He was adamant that the company could build a car factory that was almost entirely automated. He also implemented the ability to pay with cryptocurrency, then took the option away, and then reintroduced it for Tesla vehicles and services.

Musk admits that he drives most new programs at the company, “not because I want to, but because I have to.” That deep level of involvement early on in a company’s history is helpful. But if the future of the company relies on building quality products, one person ruling over everything can be disastrous.

For example, the decision to build the machine that builds the machine delayed Model 3 production for months and created what the CEO said was a “production hell.” Musk eventually admitted creating a nearly completely automated factory was a mistake. The production of the Model 3 was delayed because of that decision.

It’s true that today Tesla is riding high, posting quarterly profits and record vehicle deliveries. That good news comes with its own set of problems. A single person micromanaging a growing organization can’t possibly keep up with the issues that arise as production grows. At some point, trusted individuals need to be given the opportunity to do their jobs and rein in issues — and be able to push back on whatever random idea the CEO comes up with without fear of reprisal.

Right now, Tesla is dealing with multiple recalls issued in the past few months, and the automaker is still dogged by reports of vehicles suffering from manufacturing issues. Plus, new vehicles (including the Cybertruck) have been delayed until at least next year. These are problems a CEO needs to tackle with the help of a team that can work independently.

And then there are the tweets. So many tweets.

Musk’s Twitter presence is… polarizing. It’s also likely detrimental to the brand. There is no press department within Tesla. All information flows from either the Tesla official account or Musk. That would be fine if the CEO’s personal account stayed on target and only evoked the many benefits of owning a Tesla. Instead, it’s a mix of memes, bad jokes, insults, replies to sycophants, politically charged takes, and the occasional piece of Tesla news.

You can’t as a CEO compare someone to Hitler on Twitter and not think that it’s going to reflect badly on your company.

For the sake of the company, Tesla needs to look toward a future beyond the next whim of its CEO. A time where Musk isn’t at the helm. The best situation would be what happened at Apple.

For years, Apple’s business was deeply intertwined with its CEO, Steve Jobs. He pulled the company from the brink of bankruptcy and, with his team, built a lasting company that helped launch the smartphone revolution. It’s safe to say there would be no Apple without Jobs. But a company can’t be one person forever.

Tim Cook joined Apple in 1998 as the senior vice president for worldwide operations — essentially day-to-day management of the entire company. In 2011, he was named CEO ahead of Steve Jobs’ death. Under his leadership, Cook has more than doubled revenue and profit. Cook does not have the bravado or vision of Jobs. Instead, Cook hires smart people to do their job and makes sure that Apple continues to be profitable and deliver quality products.

Tesla needs a Tim Cook. The automaker needs a leader (or leader in training) that can continue to deliver fun features like fart noises and video games and is also laser-focused on making sure vehicles are delivered on time to customers without issues. Tesla needs to make sure that for years to come, its customers have readily accessible service centers and can replace their vehicle in a timely fashion. Like it or not, other automakers are catching up and are happy to woo Model 3 owners with their own EV.

The automaker may be riding high on profits, but without proper nurturing, Tesla’s EV dominance could be usurped by one of its rivals. Musk isn’t really the nurturing type. Under his rule, vehicle deliveries are at an all-time high, but they’re still being met with continued reports of issues with vehicle build quality. That’s a problem that should have been solved years ago.

Recent reports show that Tesla has been delivering vehicles without a redundant steering controller — and failing to inform customers of this missing item. That controller is needed if the vehicles are to be FSD-ready. That type of decision erodes customer loyalty and turns away others looking to enter the brand.

If a current customer has an issue with their Tesla, getting it serviced is still fraught with miscommunication, long wait times and frustration. Customers tired of trying to have repairs done have taken to Twitter to share their experiences, only to be attacked by Musk’s sycophantic followers, a group that Musk himself has failed to even attempt to reign in.

Then there are the recalls. In the past few years, Tesla has issued recalls at the behest of the U.S. National Highway Traffic Safety Administration for software issues with FSD that could cause the brakes to engage without warning, faulty seat belt chimes, suspension issues with the Model 3 and Y, and corroded power steering bolts on the Model S and X, just to name a few. More recently, features that Tesla added to vehicles now have to be removed. These recalls are the most troubling.

Every automaker has to deal with recalls, but not every automaker has to reverse features because they are deemed unsafe. Under Musk, Tesla pushed the ability for its cars to play whatever sound the driver wanted from the external speakers while driving down the road, potentially obscuring pedestrian warning sounds. It also pushed an update that allowed vehicles to roll through stop signs instead of stopping. Plus, it had to be told to remove the ability for video games to be played on the main infotainment screen while someone is driving the vehicle.

In response to the recalls, Musk tweeted that NHTSA is the “fun police.” Actually, the agency is the safety police, and it’s in Tesla and the public’s best interest for the automaker to work with them to keep our roads safe for everyone, not just Tesla drivers wanting to play the Humpty Dance as they roll through a neighborhood.

To help Musk, Tesla and its customers, the best scenario is someone who works with the CEO for a few years and can build up trust within the company, with the board, and, more importantly, with customers. The cult of personality around Musk requires that he wholeheartedly embrace this person as a leader so when Musk leaves or steps back from the CEO position, the masses are appeased.

Musk ceding complete control of one of his companies isn’t without precedence. He may be the CEO of SpaceX, but he shares leadership responsibility with the president and COO, Gwynne Shotwell. Musk might tweet about SpaceX, but it is Shotwell who runs the show. She is not just the public face of the company, although she is the executive who most frequently represents SpaceX at conferences and events and seems best able to articulate the vision and strategy behind its Starlink product. As president and COO, it’s Shotwell who runs day-to-day operations. If Musk ever decides to step down as CEO, Shotwell is ready to take over.

For SpaceX, its board, the U.S. government, and partner companies, that has to be a source of relief. Betting space travel on a single person is a horrible wager because eventually, that person will be gone.

Unfortunately, Tesla and Musk are one. As far as the public knows, there is no plan B right now, except maybe having Andrew Baglino, the senior VP of powertrain and energy engineering, take over if something happens to the CEO. It’s possible that there is a succession plan in place. But without transparency, enacting that scheme could result in confusion, which could be devastating to the stock price.

Musk is running Tesla for now, and as far as we know, far into the future. But he won’t be forever — and even if he is, there’s no guarantee his accumulated missteps won’t finally catch up to the company. For the good of its employees, stockholders and customers, there needs to be a plan — and immediate action.

(文:Roberto Baldwin、翻訳:Nob Takahashi / facebook )

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