原材料から廃棄まで–「ThinkPad」の環境対策と工夫の数々
今回は「原材料から廃棄まで–「ThinkPad」の環境対策と工夫の数々」についてご紹介します。
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レノボ・ジャパンは、「ThinkPad」のもの作りにおける環境への取り組みについて説明会を開催した。Lenovoは、日本の大和研究所(横浜市)と米国ノースカロライナ州のRaleigh、中国の北京に開発拠点を持ち、3拠点を総称して「イノベーション・トライアングル」と呼んでいる。その中で大和研究所は、ノートPCのThinkPadやコラボレーション機器の「ThinkSmart」の開発を主導している。
レノボ・ジャパン 大和研究所 執行役員 Distinguished Engineerの塚本泰通氏は、「お客さまや従業員、コミュニティー、そして地球の明るくより持続的な未来を築くために『Smarter technology』の提供に注力している。大和研究所も日本のもの作りの力を世界の環境に役立てたいと考えている」と述べ、環境への取り組みを強調した。
ThinkPadの製品開発においては、「Think Green」という考え方を打ち出し、設計、生産、利用、廃棄までのエンドツーエンドの観点から環境に取り組んでいるとする。
設計では、「環境配慮の設計」を実施。リサイクル材料(PCC)や環境にやさしい材料の採用、高電力効率設計、二酸化炭素の排出削減などに取り組む。ここでは、ソニーセミコンダクタソリューションズと協業し、同社の環境配慮型難燃再生プラスチック「SORPLAS(ソープラス)」をThinkPadに採用している事例を紹介した。
レノボ・ジャパンは、2017年に電源アダプターへの採用を目的に、ソニーセミコンダクタソリューションズと協業を開始した。2019年に「UL(Underwriters Laboratories)認証」を取得し、2020年からSORPLASを採用するThinkPadを出荷している。
コマーシャルソリューション製品開発 コマーシャルサブシステム開発 ディスティングイッシュドエンジニア&エグゼクティブディレクターの小菅正氏は、「2017年時点で30%のリサイクル材使用率の材料を用いる電源アダプターを出荷していたが、95%を超えるという高いハードルの材料を活用するべく金型の細かいチューニングや射出成型の改良などを経て量産化に成功した」と説明する。2021年にはThinkPadの評価基準を満たつつ95%のリサイクル材使用率を実現したプラスチックを業界で初めて採用した。「他社は50%の水準にとどまっており、2023年でも80%ほどと予想される。他社に比べ3年以上のアドバンテージがある」とした。
ThinkPadでは、電源アダプター、スピーカーユニット、アンテナホルダー、ケーブルホルダー、バッテリーパックに、95%以上のリサイクル材を使用したプラスチックを採用している。今後は、キーボードカバーや筐体への適用も検討しており、1年以内に技術を完成させたいという。
ソニーセミコンダクタソリューションズ IoTソリューション事業部長の中村俊之氏は、「ThinkPadは堅牢性の高さを特徴とするだけに、求められる品質基準は非常に高い。既存のSORPLASのラインアップでは対応できず、新たなSORPLASを開発した。アダプターは高耐久性に加え、高い衝撃強度にも対応する。スピーカーボックスなどでは、薄肉構造への対応と高難燃性、成形加工性が求められた。これら高い品質基準を満たす上で、レノボさんによる成形条件の最適化も大きな効果があった。2017年からの長い取り組みだが、ようやく2020年から製品への採用ができるようになった」と述べる。
ソニーは、1995年に工場から排出される廃材、廃液を有効活用する技術の開発に着手。2004年にプラスチックを化学処理したものがポリカーボネイトに高い難燃性を付与できることを偶然に発見し、これがSORPLASの誕生につながっているという。
「独自の難燃添加剤『PSS-K』とリサイクル素材を組み合わせることで、最大99%の高再生材率を実現した。添加剤が微量で済み、ポリカーボネイト本来の特性を維持して高耐久性を実現したのがSORPLASになる。溶融混錬(高分子材料の物性を決める操作)を繰り返しても、初期の物性を保持できることも大きな特徴で、回収したThinkPadから、さらに再利用でき、調色の自由度も高い。リサイクルにも適した技術で、将来は20年以上に渡ってリサイクルすることも視野に入れたい」(中村氏)
また、多様な回収材のデータベースと回収材に合わせて多様な形で調合できるエンジニアリング技術により、顧客が求めるさまざまなニーズや品質を実現できるという。さらに、シンプルな製造工程で環境貢献につながるという。「難燃バージンポリカーボネイトに比べ約75%二酸化炭素の排出量を削減でき、レノボさんの環境負荷の低減活動にも貢献できている」(中村氏)