SNSや気象データなどで自然災害をリアルタイムに伝えるSpecteeのAI活用術の妙
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Spectee(スペクティ、東京都千代田区)は3月23日、「東日本大震災から11年、AIが防災をどう変えたか」と題したウェビナーを開催した。
直近の国内激甚災害を振り返ると、1995年の阪神・淡路大震災、ウェビナーの表題にもある2011年の東日本大震災……豪雨被害や物流停止などを含めると枚挙に暇がない。企業の事業活動に関わる課題や社会課題に加え、生命に直結する課題解決にITを活用するのは自然の理だ。
リアルタイム危機管理情報サービス「Spectee Pro」を提供する同社代表取締役 最高経営責任者(CEO) 村上建治郎氏は、現代が「AI(人工知能)が勝手に学習をして賢くなり、進化していく世界が生まれつつある時代」と定義しつつ、テクノロジーを自然災害対応などに活用すべきだと主張した。
今テクノロジーは次の段階に進みつつある。その代表格となるのが「Web3(3.0)」と呼ばれる概念だ。
不明確に表現されがちな用語だが、村上氏はユーザーがウェブサイトへ能動的にアクセスして情報を取得するのが「Web 1.0」、情報を集約したプラットフォーマーとユーザーの間で相互的な情報交換を実現したのが「Web 2.0」と説明した上で、Web 3.0については「分散型ネットワーク」だと定義した。
「SNSなどの媒体を介して情報が飛ぶ。最近ではライブストリームなど、勝手にコンテンツが生成される」(村上氏)ように情報素材を作成するのが個人に戻りつつあるという。
インターネット黎明期を思い返せば、研究者がウェブシステムを開発し、個人がホームページと呼ばれるウェブサイトを作成。その盛況さに企業がついてきた経緯を思い返すと興味深い。
社会がWeb 3.0へ進む理由の一つが、Web 2.0は「インターネットジャイアントが、世界の大部分の情報を支配している時代」(村上氏)だと解説した。GAFAM(Google<Alphabet>、Apple、Facebook<Meta>、Amazon、Microsoft)に情報が集約され、インターネットが中央集権型の基盤になってしまったという。
だからこそSpecteeは、個人が情報素材を生み出し、データの所有権が自律分散型組織(Decentralized Autonomous Organization:DAO)化しつつ、データドリブン(駆動型)社会が加速するWeb 3.0の世界が訪れると断言した。
Web 3.0社会を支える複数の技術要素についても解説した。
その一つが「非代替性トークン(Non-Fungible Token:NFT)」。「デジタルデータは簡単にコピーできるが、これは唯一無二であると証明する技術。われわれであれば(災害に関わる)画像や動画がオリジナルなのか判断しやすくなる」(村上氏)と将来性に期待している旨を説明した。
次の技術要素は「デジタルツイン」。すでに大手IT企業が工場と研究所で同一のデータを、リアルタイムで扱うデジタルツイン基盤を提唱しているので本誌読者には目新しくないだろう。村上氏は自社の活用例として「サイバー空間に津波を作成し、災害対応計画を立てる」ようなケースにも利用可能だと説明した。
最後は「メタバース(Metaverse)」。インターネット上でユーザーのアバター(分身)が仮想空間を自由に利用できる空間を指す用語だが、「コロナ禍でリモートワークも増加し、人々のコミュニケーション接点が仮想空間」(村上氏)へ移行しつつあると予見した。
上図はSNSへ投稿された球磨川の画像に対して、降水量や地形データを入力。AIで浸水度合いを示す浸水深(しんすいしん)と位置を解析すると、10分以内に浸水測定図を作成するSpecteeのデモンストレーションである。村上氏は「避難先として指定された小学校も浸水域に含まれたことが把握できる」と主張した。