スペースデブリの軌道を精緻に把握–富士通の新解析システムがJAXAで運用開始
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富士通は、地球の周回軌道上にある宇宙ゴミ(スペースデブリ)の軌道を計算する解析システムを新たに構築した。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が運用する「宇宙状況把握システム」(SSAシステム)上で利用する。新解析システムは4月1日に筑波宇宙センターで稼働を開始している。富士通が4月5日に発表した。
新解析システムは、スペースデブリの効果的な観測を行うための観測計画を作成し、光学望遠鏡とレーダーによる観測から得られたデータに基づいて計算したスペースデブリの軌道を、JAXAの衛星軌道と比較解析する。両者の接近を検知した場合は、衝突確率に加え、衝突を回避するための軌道制御に必要な情報を添えて、JAXAの衛星運用者に自動で通知する。
人工衛星の安定運用においては、宇宙空間に1億個以上存在するとされる、ロケットの残骸や運用を終了した人工衛星、これらの衝突などにより生じた破片などのスペースデブリが脅威となっており、その数は増加の一途をたどっている。スペースデブリは秒速7km以上の超高速で地球を周回しており、万一運用中の人工衛星に衝突すると、破損や故障を招き必要な情報が得られなくなるなど、生活に甚大な被害を及ぼす恐れがあるため国際的に解決すべき社会課題となっている。
SSAシステムでJAXAが刷新したレーダーでは、より小さな物体を観測できるため、1日当たりの観測可能な物体数が従来の10倍以上に相当する約1万件に及ぶ。そのため、新解析システムでは、大量の物体を最大限に観測できるよう、各物体の観測結果や観測データの処理結果も考慮して常時最適な観測計画を作成できるアルゴリズムを新規に開発した。また、処理能力も従来比50倍以上の向上を図り、膨大な観測データのタイムリーな処理を実現する。
さらに観測物体や処理数の飛躍的な増加に伴う運用負荷の軽減施策として、これまで解析運用者が主に手動で行っていた観測計画の策定や観測データの処理など定常的な作業を自動で行う機能を新規に開発した。
観測データなどの連携では、JAXAのSSAシステムのほか、国が運用管理しているSSAシステムとの連携が可能な機能を新たに搭載している。