リモートワークか、オフィス回帰か–経営者のこれまでの常識は通じなくなる
今回は「リモートワークか、オフィス回帰か–経営者のこれまでの常識は通じなくなる」についてご紹介します。
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今後、従業員をオフィスに復帰させる予定の経営者は、予定通りにはいかないことを覚悟しておいた方がいいだろう。
その最大の理由は、オフィスの政治力のバランスが、(少なくとも現時点では)以前とは変わってしまっているからだ。そしてその変化は、使用者側ではなく、労働者側に有利に働いている。
今起こっているのはこういうことだ。多くの知識労働者は、これまでに多くの時間をリモートワークで過ごし、自宅でもオフィスと同じように仕事ができることを証明した(あるいは少なくとも、自分たちはそう信じている)。
さらに、リモートワークへの移行は、多くの労働者(全員ではないにせよ)の柔軟性を高め、ワークライフバランスを改善した。労働者はそのことに気づいてしまっている。
それに加えて、移動がなくなることは、家計にとっても環境にとっても良いことだ。生活費が上がっている中で、上司からオフィスでのフルタイム労働に戻るように命じられれば、こうしたことが労働者の脳裏に浮かぶことになる。
労働者にオフィスに戻るように命じた際に、ワークライフバランスの問題や生活費の上昇に苦しむ従業員の間で不安が生じるのは当然のことだろう。
多くの労働者は、上司側がオフィスでのフルタイム労働に復帰するよう要求するのであれば、給料も上げるべきだとさえ考えている。
しかも、しぶしぶオフィスに戻った社員が、人もまばらなオフィスで、いまだに自宅で働いている上司とビデオ会議をすることになるケースも多い。
上司側が認識しているかどうかはさておき、これらのさまざまな要因は、多くの労働者がオフィスへの復帰についてどう考えるかを再び変えてしまった。
上司は部下がオフィスに戻ることを期待しているかもしれないが、その多くは予想以上の抵抗に遭っている。そして、多くの労働者(特に開発者などの技術者)には転職のチャンスが豊富にあることも忘れてはならない。
以前と同じ考え方で組織を運営し続けようとする上司は、今後大いに悩むことになるだろう。
第1に、社員はオフィスでなければ効率的に仕事が出来ないという前提は成立しないと考えておく必要がある(実際、もし生産性が低下するとすれば、それは上司側のスキルや共感が不足していることを反映しているのかもしれない)。
第2に、少なくとも現時点では、従業員がいつどのように働くかを決めるに当たって、上司側が優位に立っているという前提は崩れている。
そして第3に、技術だけで問題を解決できると考えるべきではない。ZoomやSlackを導入すれば仕事はこなせるかもしれないが、調査によれば、スタッフが心配しているのは、むしろ企業文化が変わってしまうことや、従業員が達成した仕事に見合った評価を得られるかどうかだという。確かに、リモートで働きたいという考えと、チームワークや企業文化について心配する声の間には矛盾があるように見える。そこには実際に矛盾があり、それを解決するのは非常に困難だ。
また最後に、非常に重要なこととして、上司は今までのやり方に戻れると考えるべきではない。
多くの従業員にとって、職場まで通勤するという古い習慣は、すでに過去のものになっている。そもそも、この2年間に社会人になった労働者は、オフィスで9時から5時まで働くという経験をしたことがない。Airbnbの最高経営責任者(CEO)Brian Chesky氏は先ごろ、「私たちが知っているオフィスは終わった」と述べている。これはつまり、これからのオフィスは、「自宅には果たせない役割を果たす」必要があるということだ。
今後の本当の課題は、それが具体的にどういうものであるかを見極め、上司とスタッフの矛盾する要求のバランスを取ることになるだろう。