パナソニック、サプライチェーン最適化の取り組みを発表
今回は「パナソニック、サプライチェーン最適化の取り組みを発表」についてご紹介します。
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パナソニック コネクトは5月24日、中核事業のサプライチェーン(供給網)最適化に向けた取り組み状況を発表した。ここでは買収したBlue Yonderを活用しており、一定の成果が出始めているという。
同社は4月に発足したが、以前のパナソニック コネックテッドソリューションズ社として、2021年9月にサプライチェーン管理(SCM)ソフトウェアのBlue Yonderを買収。Blue Yonderのソリューションを利用した製造業を中心とする現場業務の変革とその支援を中核事業に位置付けており、パナソニックグループとしても利用している。この日はその取り組み状況と、顧客企業にソリューションを紹介する新たな「カスタマーエクスペリエンスセンター」を報道機関に披露した。
まず同社の取り組みについて、現場ソリューションカンパニー エグゼクティブコンサルタント エバンジェリストの一力知一氏が説明した。同氏は、キーワードとして「オートノマスサプライチェーン」を挙げ、業務の現場から発生するデータから活用してサプライチェーンが自律的に最適化されていくことがコンセプトであるという。
その実現に向けた仕組みは、多様な家電製品や業務用システムを手がけるメーカーとしての同社の経験やノウハウ、現場業務の状況をデータとして収集するセンシング技術やデバイス、データを転送するネットワーク、収集したデータの処理、分析、可視化、シミュレーション、改善提案などを行うBlue Yonderで構成される。
同社のサプライチェーンが抱える課題は膨大で多岐にわたるというが、一力氏によれば、同社として大きく「製造」「物流」「流通」のフェーズに分けて最適化に取り組んでおり、フェーズごとの個別最適化をBlue Yonderのソリューションでつなぎ合わせることで、サプライチェーン全体の最適化を実現するアプローチを採っているという。
課題は、「製造」では在庫の最適化やリードタイムの短縮、「物流」では最適なリソースによる効率的な輸送、「流通」では販売機会の逸失防止や廃棄ロスの削減による売上拡大がある。しかし現実には、「製造」では正確な需要予測が難しいために余分に商品を生産してしまうことがあり、「物流」でも輸送量の変動の予測が難しいために余分にトラックを確保するなどのことがある。「販売」でも商品の売り切れを防ぐために発注量を多めにしてしまう。これらの問題が積算した影響がもたらす損失は大きく、それ故に個別最適から全体最適につなげることが現実的なアプローチとなる。
技術研究開発本部でソリューション開発研究所長など務める安達久俊氏によると、例えば、「Let’s note」などPC製品では、ベースモデルと顧客が選択するカスタマイズにより約6万もの品番があり、2017年頃は世界各地の拠点から収集する月次の需要予測をExcelベースで管理し、これを基に神戸や台湾の工場で生産や出荷の計画を立案・調整していた。ただし、PCを構成する各種部品は前もって供給元から一定量を確保しておく必要がある。また、各地の販売拠点としての販売計画があり、販売動向を見ながら商品の納期確認などを生産側に行う。それぞれのフェーズに携わる担当者の負担は大きく、その時々の経済情勢をはじめとする外的要因によってサプライチェーンが計画通りに機能しないことも少なくない。
同社では、最適化に向けて各種業務プロセスの実態把握と標準化を進めており、そこで発生する膨大なデータをBlue Yonderに取り込み、改善策を試行錯誤しているとのこと。現時点で、需要予測の集計から各種計画の立案に要する作業時間が約1週間から1時間程度にまで短縮されており、在庫量も5年間で1割削減された。長期的な生産計画も従来は将来の変動要因が大きいとして2カ月先までした立案できなかったが、現在では12カ月先まで可能になっているという。
一力氏は、現状の取り組みが道半ばであり、現場業務の可視化まではおおむね実現されつつあると説明した。今後はデータの活用が焦点になっていくといい、人工知能(AI)などを利用して高精度なシミュレーションに行ったり、実際に有効性のある改善提案を行えるようにしたりするなど、サプライチェーンのさらなる最適化を図っていくと述べた。
また、「カスタマーエクスペリエンスセンター」は2019年に開設されたもので、今回はサプライチェーン最適化のソリューションを企業顧客に体験型で提案する構成としてリニューアルを行った。新たな展示では、上述した同社自身の取り組みで使用している技術などを紹介している。