クラウドは変革にスピードを提供、スタートアップの新支援も–AWS Summit基調講演
今回は「クラウドは変革にスピードを提供、スタートアップの新支援も–AWS Summit基調講演」についてご紹介します。
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アマゾン ウェブ サービス ジャパン(AWSジャパン)は5月25日から2日間、年次イベントの「AWS Summit Online 2021」を開催。初日の基調講演に登壇した代表執行役員社長の長崎忠雄氏は、クラウドが企業・組織に変革への挑戦とスピードを提供する存在と位置付け、現在の状況を紹介した。
同イベントは日本での開催が11回目を数え、長崎氏によれば、2021年までに延べ18万7000人が参加したとのこと。AWSの2022年第1四半期のビジネスは、前年同期比で37%成長しており、企業・組織にとってクラウドサービスは、もはや当たり前の存在と言える。
だが長崎氏は、「コロナ禍を通じてクラウドがITインフラの“ニューノーマル”となっても、ある調査ではワークロードの5~12%しかクラウドに移行していない」と述べる。同氏は、企業・組織のIT環境全体においてクラウドの存在感が、まだまだ小さいものに過ぎないと見ているようだ。
2022年のイベントテーマは「変革への挑戦」になる。企業や組織で「デジタルトランスフォーメーション(DX)」が流行している昨今、長崎氏は「変革への意識は既に醸成されている。変革を推進する鍵になるのが、良いプロセスと人材。この両輪で正しい結果を得られることが分かっている」と語った。“DXブーム”の陰で「DX疲れ」なる状況も表れ出した今、DXに対する情熱だけでDXの取り組みを推進することは、もはや限界に来ているという。
そこで長崎氏は、「Working Backwards」という同社のアプローチを紹介した。これは、同社が取り組みを開始する際に、まず「顧客にとってメリットあるものを提供する」ゴールをはっきりさせて、そこから逆算して進めていくもの。最初に「誰が顧客なのか?」「顧客体験がどう変わるのか?」などの5項目で議論し、これらを固めてプレスリリース(報道機関などに提供する情報をまとめたもの)を作成する。プレスリリースに関する質問と回答を整備し、取り組む内容を精査して設計、開発、リリースし、さらに改善する。
長崎氏は、代表例に「Amazon Prime」を挙げ、「注文即配送」により顧客がほしい商品を可能な限り最短で手にできるという新しい体験を実現するために、月日をかけて在庫から出荷、物流に至るサプライチェーン(供給網)を構築、整備を進め、その中で幾多のデジタル技術を開発、利用してきたとする。
顧客ニーズを事前に高精度で予測、把握するためのビッグデータの収集と分析、シミュレーションにクラウド基盤や人工知能(AI)を利用して在庫の配置と量などを最適化し、出荷を最速化するために映像解析やロボット技術などを利用し、顧客の手元へ各日に商品に届ける「ラストワンマイル」でドローンや自動配送車などを開発する。2015年に導入したディープラーニングでシミュレーション精度は15%向上し、受注から発送までの時間は平均29分になっているという。
「利便性を求める顧客の期待が現在から後退することはない。Amazonは『顧客は常により良い体験を求める』ことを前提にして、変革への取り組みを続けている」と長崎氏。企業や組織のDXの取り組みでは、目的を実現する手段であるはずのデジタル技術を利用すること自体が目的化してしまう問題が時折指摘される。長崎氏が取り上げた内容は、そうした事象への“戒め”とも言える。
Working Backwardなどのアプローチで顧客のDXを推進する取り組みとしては、伴走型の「デジタルイノベーションプログラム」があり、人材育成の支援としては「AWS Skills Guide」を提供する。顧客の経営層と目的を合意形成した上で、顧客に応じた人材育成計画を立案し、スキル定着までの継続的なカスタマイズトレーニングを行う。