HPE、大規模/エッジ環境の機械学習を加速する新製品を発表

今回は「HPE、大規模/エッジ環境の機械学習を加速する新製品を発表」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 日本ヒューレット・パッカード(HPE)は5月25日、人工知能(AI)開発を加速する新製品「HPE Machine Learning Development System」と「HPE Swarm Learning」を発表した。同日に提要を開始している。本稿では、製品発表の記者会見で示されたITの進化や今後の方向性に関する同社の認識について、まず紹介したい。

 HPC&AI・MCS事業統括 執行役員の根岸史季氏は会見の冒頭で、同社が標ぼうする「データファーストモダナイゼーション」という考え方について、その背景にある現状認識やソリューション開発の方向性について説明した。

 根岸氏が指摘するのは、「ITの進化はかつての分かりやすいものから多様化の段階に進んだ」という点だ。「分かりやすい進化」とはどういうものかという点について、同氏は「進化をリードする先駆者だけでなく、それに追従していくフォロワーにも『この道をたどっていけば進化の恩恵を受けることができる』というベクトルが分かっているもの」だとする。ITでいえば、これまではムーアの法則に従ってプロセッサー/ハードウェアが進化を続けていたことから、ハードウェアのリプレースというシンプルな手段で恩恵を得られた状況を指す。

 一方、現在は「進化のベクトルが多様化」している。ITの進化は、ハードウェアの進化が可能性を拡げ、ソフトウェアの進化がその可能性を実現して果実を得られるようにする、という両輪で成立するようになっていると根岸氏は言う。進化のベクトルが多様化している中、その全方位で果実を得られるように進化することはできなくなっているため、選択と集中が必要になっているというのがHPEの認識だ。

 根岸氏は「ある企業なり、団体なり、ユーザーがどういう方向性に進みたいかによって、『自分の進みたい道のソフトウェアだけ進化させる』という流れになる」と指摘する。

 主流になる技術と先細りになる技術が分かれていくというのは、これまでにも起こってきたことだが、現在はプロセッサーが新世代に移行すればあらゆるワークロードが劇的に高速化されるという状況ではない。プロセッサーの性能向上ペースが鈍化している一方、さまざまなアーキテクチャーのアクセラレーターが開発され、進化を続けているため、ユーザーのワークロードを高速化するためには、適切なアクセラレーターを選択し、そのアクセラレーターに最適化されたコードを書くという対応が普通に行われるようになってきている。

 HPEとしても同様で、あらゆる方向の進化に対応することはできないため、市場の動向やユーザーの声を見極めて方向性を選択し、そこに投資して進化を実現していく形になる。今後、ユーザー企業にとってもITベンダーにとっても、適切な技術を選んでいく目がますます重要になってくると言えるだろう。

 HPEが提唱するデータファーストモダナイゼーションでは、コンピューティング中心からデータ中心というトレンドの変化を語っていると同時に、その背後には従来のようにハードウェア/インフラの進化という分かりやすい方向性で進めば良かった段階から、多様化した進化の方向性から適切な方向を選んで、それに沿ったソフトウェアの進化を引き起こしていくという段階にシフトしたという認識が含まれている。

 そうした前提を踏まえれば、現在のHPEの人工知能/機械学習(AI/ML)への注力も単に流行というレベルの取り組みではなく、同社が選択した方向性なのだと理解することができるだろう。実際に今回の製品発表にあるHPE Swarm Learningなど、同社が率先して最先端領域を切り拓いているものだと位置づけることができるもので、同社によるソフトウェアの進化の実践例だと捉えられるのではないだろうか。

 なお、根岸氏が語るITの進化のもう一つの側面である、スケーリングの問題もポイントとなるだろう。規模の問題は単に拡大すれば解決できるものと考えられてしまいがちだが、同氏は「スケーリングの問題は本質的に一番のチャレンジで、高性能コンピューティング(HPC)など、その領域に専門で取り組む分野があるほどだ」と指摘する。

 ごく小さな規模であれば上手く回っていた処理が、規模を大きくしていくにつれてうまく回らなくなるというのは、さまざまなプロジェクトで直面する課題だろう。今回発表された新製品のうち、特にHPE Swarm Learningは「全体を統括して指示を与えるリーダーが存在しない状態で、個々のメンバーがそれぞれの行動を行うことで結果として群れ全体が上手く動いていく」という自然界の生物の群れ行動をヒントにしたもので、大規模なモデル学習の分散実行を可能にすることで、データが存在するエッジでそれぞれ学習を行い、その結果を統合して大規模モデルを進化させていくという仕組みになる。スケーリングという本質的な問題に対する新たなアプローチとして注目される。

 新製品については、HPC&AI・MCS事業統括 AIビジネスデベロップメントマネージャーの山口涼美氏が説明した。まず、HPE Machine Learning Development Systemは、既に発表済のソフトウェア製品「HPE Machine Learning Development Environment」を動かすためのインフラ/サービスを含めて提供するターンキーソリューションになる。

 ハードウェアは「HPE Apollo 6500 Gen10 Plus System」を使用し、アクセラレーターとして「NVIDIA A100 80GB GPU」を32~256GPUの構成で利用できる。管理用サーバーとして「HPE ProLiant DL325」と「1Gb Ethernet Aruba CX 6300スイッチ」「NVIDIA Quantum InfiniBandネットワーキングプラットフォーム」が、ソフトウェアとしてHPE Machine Learning Development Environmentや管理ソフトウェア「HPE Performance Cluster Manager」が組み合わされる。

 HPE Swarm Learningは、非中央集権型の機械学習ソリューションで、データのプライバシーを侵害することなく、エッジあるいは分散した拠点で学習結果の共有を実現する。エッジでの学習結果をブロックチェーン技術を活用して共有することで、データのプライバシーを損なわずに大規模なトレーニングデータセットを活用できるという。

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