NEC、生産計画での量子アニーリング技術の適用を実証

今回は「NEC、生産計画での量子アニーリング技術の適用を実証」についてご紹介します。

関連ワード (ビッグデータ等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 NECは、6月22~24日に東京ビッグサイトで開催された「設計・製造ソリューション展」で、量子アニーリング技術を工場の生産計画の最適化に活用する実証結果を参考出品した。量子アニーリング技術の新たなユースケースとして注目される。

 量子アニーリングは、量子コンピューティングに着想を得た技術で、特に経路最適化問題での計算に強く、例えば、最適な配送ルートの算出といったユースケースでの実用化が進んでいる。今回の取り組みについて先端プラットフォーム事業部門 量子コンピューティング事業統括部の遠山美樹氏は、「これまで荷物輸送や倉庫内におけるAGV(無人搬送ロボット)のルート設計、ピッキング手順の最適化といった事例が多く、生産計画への適用例は他にあまりないのではないか」と話す。

 実証は、サーバーや通信機器などの生産を手掛けるNECプラットフォームズの福島事業所で実験を行った。例えば、発注先から納期の1日前倒しを求められるといった急な変更への対応において、従来は熟練者の作業で1時間ほどを要した生産ラインの計画変更のシミュレーションを数秒程度で実施できることが確認された。これにより、急な変更でも納期を順守しつつ、追加コストの発生などを最小限に抑制する効果が期待されるとしている。

※訂正:初出時に「掛川事業所」と記載しましたが、正しくは「福島事業所」です。お詫びいたします。

 遠山氏によると、量子アニーリング技術の生産計画への適用は、配送ルートの計算といったユースケース以上に複雑な条件を伴うため、アルゴリズムの開発が難しいとされる。特に、複数の生産ラインにまたがる場合の生産計画の変更対応は極めて難しく、必ず2人1組で行うという治工具の配置場所や稼働内容、スケジュールの組み替えパターンは無数に存在し、実作業を無駄なく最短で実施できる新たな計画を短時間に算出しなければならず、これには熟練者の豊富な経験が必須になる。

 「実証では、現場の協力を得ながらヒアリングを通じて開発を行ってきた。その他にも熟練者だからこそ知る配送時の道路状況や配送先での作業の注意点といった要素もあり、こうした暗黙知を反映させることに注力した」(遠山氏)という。

 昨今では、半導体などの電子部品材料の供給状況も極めて不安定になっていることから、生産計画の変更が高頻度に発生している。今回の成果は実証レベルだが、実際には本番運用できる水準にあるといい、同社では既に現場への導入準備を進めている。

 また、NECを含む製造各社は、熟練者の定年退職や労働人口の減少に伴う技能伝承という課題を抱える。今回の生産計画のように熟練者でなければ遂行が困難な業務での後継者の育成では、テクノロジーが解決の一助として期待される。

 今回同社は、「人作業ナビゲーション」というソリューションも出展。作業手順や指示などのドキュメントをベースに、作業者が装着するウェアラブルデバイスを通じて作業を案内するとともに、作業内容や動作などの実績を記録する。その情報を分析して作業の効率化や品質の安定化、技能伝承に活用する。

 製造ソリューション事業部門 スマートインダストリー統括部戦略グループの吉村槙浩氏は、こうした取り組みついて、最終的に人間でなければできない業務にリソースを最適化し、現在の製造業が抱えるさまざまな人材に関する課題の解決を目指しているとし、「現在は、人工知能(AI)などのテクノロジーを利用して現場で発生するインシデントの99%を解決することができるが、AIの学習経験がない未知のインシデントは、1%未満であっても人間にしか対応ができない。量子アニーリングのようなテクノロジーも人の判断を支えるために活用するものになる」(吉村氏)という。

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