日本IBM、ラックマウント型メインフレームなど発表–技術者育成の新施策も
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日本IBMは4月4日、メインフレーム「IBM z16」および「LinuxONE 4」の新製品としてシングルフレームとラックマウントの2モデル4機種を発表した。また、若手のメインフレーム技術者を育成する「メインフレームクラブ」も創設する。
今回の新モデルは、2022年に発表したIBM z16とLinuxONE 4のラインアップを拡充するもので、いずれも米国時間5月17日に出荷を開始する。大規模トランザクション処理におけるリアルタイムなAI推論や耐量子暗号の高セキュリティ性といった最新モデルの特徴は同じだが、新たにサステナビリティー(持続可能性)への対応と、特にラックマウントモデルについてはデータセンターラックでのメインフレーム使用という新スタイルを特徴付けた。
記者会見した執行役員 テクノロジー事業本部 メインフレーム事業部長の渡辺卓也氏は、「IBMでは1970年代から環境に配慮した製品開発に取り組み、メインフレームでは優れたコア性能や高CPU使用率、専用コアのアーキテクチャーを生かしたワークロードの集約によるリソースの最適化を実現している」と説明。環境への配慮を重視する採用事例があるとし、欧州の金融機関では「Oracle Database」を稼働させていた16台のx86サーバーを1台のLinuxONEに集約し、消費電力を70%削減したとのこと。また、米Citiも「MongoDB」のシステムをLinuxONEへ移行して性能を15%向上させ、これが温室効果ガスの排出削減に貢献しているとした。
新たなラックマウントモデルは標準の19インチラックに実装でき、AIモデルの学習といった用途に対応しながら、「他のサーバーやスイッチなどと一緒にメインフレームをご利用いただける」(渡辺氏)とする。IBMの調査によれば、企業の77%がハイブリッドクラウドを利用し、80%が性能面やセキュリティを理由にパブリッククラウドからオンプレミスやプライベートクラウド環境へワークロードの移行するを検討しているという。
渡辺氏は、「オンプレミスか、クラウドかの議論ではなく、お客さまはハイブリッドクラウドの戦略を採用し、ここで安全・安心なシステムを求めている」と述べ、今回のラックマウントモデルがこうした顧客ニーズに応えるものだと強調した。
また、新たな取り組みとしてクラウドネイティブなDevOps環境をメインフレームで実現するという「メインフレームDevOpsソリューション」と、メインフレームクラブの創設も明らかにした。
メインフレームDevOpsソリューションは、クラウド環境のアプリケーション開発で人気の各種サービスや運用自動化技術などを組み合わせた体験を開発者に提供するといい、メインフレーム技能の継承と新たな進化を目的に、2023年第3四半期中の提供開始に向けて準備を進めている。
メインフレームクラブは、メインフレームユーザー企業の新たな技術者コミュニティーに位置づけられ、4月21日に東京・箱崎の本社オフィスで第1回会合を開く。「交流、体験の機会を通じて、世代や組織の垣根を超えた学びをできるようにしていく」(渡辺氏)という。
渡辺氏は、メインフレームを取り巻く現状について、「メインフレームはレガシーで塩漬けされるものという見方が聞かれるが、IBMのメインフレームの出荷処理能力は過去10年間で3.5倍に増えており、メインフレームはそういうものなら、このような実績にはならない」と語り、今後10年間で200億ドルの投資を行う計画であることや、2030年頃までに投入する3世代先の製品ロードマップも公開しているなど、IBMが今後もメインフレームに取り組む姿勢であることを強調した。
仮に、将来的にIBMが唯一のメインフレームベンダーとなってもビジネスを継続するかとの質問に渡辺氏は、「『永遠に』というのはなかなか難しいが、メインフレームは安心・安全な社会の実現を支えている非常に重要なインフラであり、IBMはそれを担う使命感を持ってメインフレームに取り組んでいる」と回答した。