赤ん坊のように直感を学ぶDeepMindの人工知能「PLATO」
今回は「赤ん坊のように直感を学ぶDeepMindの人工知能「PLATO」」についてご紹介します。
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「人間の直感」は、その定義上、人間と人工知能(AI)の間の壁を示す言葉だ。だからこそ人間には、論理では説明できない(時には衝動的な)直感的あるいは反射的な反応ができるのであり、これらは簡単にコンピューターで実現できるものではない。実のところ、人間が本能的に示す行動の理由を説明するのは難しい。では、それを組み込んだアルゴリズムを開発するにはどうすればいいのだろうか。
もし生命のように振る舞うAIが存在する世界を目指すのであれば、そのギャップを埋める必要がある。つまり、機械に直感の力を与える方法を見つける必要があるということだ。7月中旬、著名な論文誌の「Nature」に、このテーマを前進させる論文が掲載された。
Alphabet傘下のAI研究企業である英DeepMindの研究者らは、人間の幼児と同じように「直感物理学」を身に付けることができるAIシステムを開発した。直感物理学とは、この世界の物理学的な仕組みに対する常識的な理解のことだ。
このAIは、PLATO(Physics Learning Through Auto-encoding and Tracking Objects、自動エンコーディングおよびオブジェクト追跡による物理学の学習)と名付けられた。この名前は明らかに、知識や意味の本質を思考実験によって示した「洞窟の比喩」でよく知られている、ギリシャの哲学者プラトンにちなんだものだ。
研究者らは論文の中で、「現在のAIシステムは、直感物理学の理解において、非常に幼い子どもたちにも劣っている。本研究では、発達心理学の分野を知見を当てはめることによって、人間と機械の間にあるギャップを埋めた」と述べている。
幼児に赤いボールを見せてから、それを大きな本で隠すと、最初は「あのボールは消えたの?」などと思って驚くかもしれない。しかし、そのような状況に何度も接するにつれて、「目には見えないくても、ものはそこにある。ものが突然消えたりはしない。それが物理学だ!」と理解するようになる。
これは物体の永続性と呼ばれる概念で、この概念は、子どもが2歳になるまでの間に、私たちが「直感」と呼んでいるものに融合する。
そして一度大人になってしまえば、視界からものが隠されても、私たちはそれがそこにあるという事実を意識することさえなくなってしまう。そこにあることは考えるまでもないのだ。研究チームは、PLATOがこのような物理学を身に付けられるようにしたいと考えた。それがつまり直感物理学だ。
研究は次のような手順で進められた。
研究チームはまず、幼児が直感物理学をどのように身に付けるかについての、数十年にわたる発達心理学の研究を丹念に調べた。文献を熟読するに従って、共通のテーマが浮かび上がり始めた。DeepMindのLuis Piloto氏が記者会見で語ったところによれば、それは「物理学に対する理解は、世界を物体の離散集合に分割することによって支えられている」という考え方だ。
別の言い方をすれば、幼児は、物体が動き回ったり、落ちたり、相互作用したり、現れたり消えたりするところを観察することによって直感物理学を学んでいるようだということだ。とは言え、自分の目で確かめるまではそんなことは信じられない、という人もいるだろう。研究者らは、その原則に的を絞った深層学習モデルを開発した。それが、巨大なデータセットをベースとして、時間の経過とともにスキルを獲得し、自分自身のコードを修正していくことができるシステムであるPLATOだ。