ITとOTを知るフォーティネットの田井新社長–セキュリティ対策の相違点
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7月1日付でフォーティネットジャパンの社長執行役員に就任した田井祥雅氏は、製造業でキャリアをスタートし、IT業界で経験を重ねた。その田井氏に、同社のこれからの舵取りや日本のセキュリティ対策の特徴などを尋ねた。
田井氏は、1986年に東京工業大学工学部を卒業後、ソニーで開発や営業、企画を経てデジタル著作権管理(DRM)技術企画責任者として音楽配信の立ち上げに携わったという。さらに、IT業界でデータ分析や金融のコンサルティングを経験。その後にソフォスやマカフィー、シスコシステムズでセキュリティビジネスに従事している。
フォーティネットには、2020年11月に副社長兼メジャーアカウント統括本部長として参画し、今回の人事で日本法人の経営をけん引する形となった。製造とITで多様な領域を経験している同氏だが、「フォーティネットは、ネットワークの通信をクリーンにするという理念のもと、自社ASIC(特定用途向け集積回路)でネットワークセキュリティをけん引している。この分野では、汎用プロセッサーと独自のソフトウェアでソリューションを提供するベンダーが多いが、データが増え続ける中でセキュリティを担保するには、高性能なハードウェアが必須。この点がフォーティネットの最大の強みであり、これからも求められる中核になる」と話す。
同社の統合脅威管理(UTM)製品の「FortiGate」は、市場調査にもよるが、国内セキュリティアプライアンス市場で高いシェアを獲得し続けている。その顧客の多くが中小企業であり、田井氏は中堅~大企業顧客の開拓を課題に挙げる。この領域では、同氏が在籍したベンダーを含め競合が多い。「直接販売の営業体制を強化するとともに、お客さまのエグゼクティブ層を対象としたイベントの開催頻度を増やすなど、お客さまの声を直に聞き、当社への理解を深めていただく活動に注力していきたい」とする。
他方で、中小企業の顧客に対しては長年強力な関係を構築しているパートナーとの連携をさらに深めていく考えを示す。喫緊で取り組むべきことの1つに、顧客に対するサポートの充実化があるという。
というのも、コロナ禍では多くの企業が感染症対策としてリモートワークを導入し、自宅などからVPN(仮想私設網)を経由して業務システムにアクセスする環境を整備した。だが、VPN製品に存在する脆弱性がサイバー攻撃者に悪用され、システムやデータに侵入されてしまう被害が世界中で多発した。導入規模が大きい同社の製品も攻撃者のターゲットになり、同社としては脆弱性を修正するパッチを提供しているものの、それを適用していない顧客が被害に遭うケースが相次いだ。同社を含むVPN製品のアップデートの適用は、セキュリティ機関からも呼び掛けられている。
田井氏は、「メーカーとして迅速に脆弱性を修正したパッチを提供し、その情報の発信にも努めているが、当社だけではやはり限界がある。これまで全国展開するパートナー各社の力で数多くのお客さまに当社の製品をご利用いただいているため、より安全に活用していただくためにもパートナー各社と今まで以上に緊密に連携し、長期的な取り組みになるだろうが、お客さまの利用状況を把握して円滑にアップデートを適用してもらうための環境を整えていかなければならない」と話す。
また、製品・ソリューションの点では、特に「現実的なゼロトラストネットワークアクセス」を推進していくという。「ゼロトラスト」は、企業のIT環境がクラウド化し、従業員が働く場所も多様化する中で、「システムやデータを利用するユーザーやデバイスなどを常に検証して安全を確保する」というセキュリティ対策の考え方になるが、「あらゆることをクラウドに依存すれば、実際にはネットワークの帯域がひっ迫し、ランニングコストもかさんでいく。こうした現実に気付いた企業はハイブリッドクラウドを選択している」と田井氏は指摘する。
この点について田井氏は、FortiGateやメールセキュリティ、エンドポイント脅威検知・対応(EDR)、セキュアWi-Fi、仮想アプライアンスなどの同社の広範な製品ポートフォリオを生かしたソリューションを訴求していくという。
「ハイブリッドクラウド環境で、エンドユーザーがどこからどのようなデバイスでシステムやデータにアクセスしても安全を確保するには、共通のポリシーを適用することが鍵になる。われわれの製品はオンプレミスでもクラウドでも利用でき、その意味で共通したポリシーを適用しやすい。既に製品をご利用中なら、そこを起点にゼロトラストネットワークアクセスの環境を整備していくことがコスト面でも負担が小さく、お客さまにとって最も現実的な方法になる」