NECら、量子セキュアクラウドシステムを使った次世代レーザー設計の最適化処理などを実現
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NEC、情報通信研究機構(NICT)、京都大学、慶應義塾大学の4者は、量子暗号技術と秘密分散技術を用いた「量子セキュアクラウドシステム」の検証試験を行い、スマート製造分野での設計情報の最適化処理・高秘匿伝送・分散保管に成功した。
この検証試験は、内閣府が主導する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「光・量子を活用したSociety 5.0実現化技術」の一環として実施された。
検証試験では、量子計算技術を利用した次世代アクセラレーターによって最適化された次世代レーザー(フォトニック結晶レーザー)の高度設計情報を、今回初めてインターネット回線を用いて離れた拠点間で安全に伝送できることを確認した。
今回の検証結果から、将来のスマート製造の核となると期待されるフォトニック結晶レーザーの重要な設計情報である最適設計パラメーターを量子計算によって導く際に、量子セキュアクラウドシステムの適用可能性が実証できたことになる。
京都大学と慶應義塾大学では、製造分野の最適化問題の具体的な例題として、将来のスマート加工用レーザー光源として普及が期待されるフォトニック結晶レーザーの量子最適化問題に連携して取り組んでいる。
フォトニック結晶レーザーは、2次元フォトニック結晶(2次元状に波長程度の周期的屈折率分布をもつ光ナノ構造)を内蔵した面発光型の半導体レーザーのこと。従来の半導体レーザーと比較して10000倍以上大きな発光面積でも単一モードで動作可能であり、高出力かつ高ビーム品質なビームを実現可能だ。この技術は日本発の独創的な技術であり、その設計パラメーターや解析プログラムは確実に守る必要がある重要な技術情報となる。
現在、日々巧妙化する組織化されたサイバー攻撃への懸念が、サイバー空間(仮想空間)とフィジカル空間(現実空間)を高度に融合させたシステムの実現を阻んでおり、最近では既存の暗号を高速に解読できることが知られている量子コンピューター技術の研究開発が急速に進展するなど、潜在的な脅威もますます高まっている。
そこで経済安全保障の観点からも、日本の製造業の持続的な競争力の強化に寄与する技術情報や設計情報など価値の高い機密情報を安心して流通・保管・活用できるオンプレミスのシステム整備が求められている。
量子セキュアクラウドシステムは、量子暗号技術と秘密分散技術を融合したクラウドシステムで、データの安全な流通・保管・活用を可能とする。量子コンピューターとの連携により、改ざん・解読が不可能な高いセキュリティ性を担保するだけでなく、例えば、金融、製造、交通・物流、管理、創薬、化学分野で蓄積された個人情報や企業情報など秘匿性の高いデータの分析・処理を含めた利活用が期待されている。
次世代アクセラレーターは、一部の計算処理に対して高効率に実行することが期待されているコンピューターのことで、イジングマシン、ゲート式量子コンピューターなどを指す。
今回の検証試験では、NECとNICTが、製造分野への量子計算技術の適用可能性の検証を進めている京都大学および慶應義塾大学の間に、インターネット回線も用いて構成した量子セキュアクラウドシステムを構築した。
NECの回線暗号装置「COMCIPHER-Q」をNICT、京都大学、慶應義塾大学の計3拠点に設置し、専用回線を新たに敷設することなくインターネット回線上に、量子鍵配送装置で生成した暗号鍵を用いて仮想的な暗号回線を構築した。
今回、同環境下で異なる組織の3拠点間で安全にデータを伝送できることを確認し、さらにNICTからTokyo QKD Network上に形成した秘密分散システムへ接続し、秘密分散保管を行った。
Tokyo QKD NetworkはNICTが2010年から東京圏に構築・運用を続けている量子鍵配送(QKD)ネットワークのテストベッド。
今回の検証では、NECが量子セキュアクラウドシステムと連携するネットワークの構築・運用を担当し、NICTは秘密分散システムの提供を担当した。京都大学はユーザー環境の提供、フォトニック結晶レーザーの設計パラメーターおよび性能評価プログラムの提供を行い、慶應義塾大学はユーザー環境の提供、次世代アクセラレーターによる構造最適化の実施、最適化した設計パラメーターの提供を行った。