第61回:レッドオーシャン企業のひとり情シス
今回は「第61回:レッドオーシャン企業のひとり情シス」についてご紹介します。
関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。
本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
「ひとり情シス」と一口に言っても、いつも余裕のある方もいれば、常に何かに追いまくられて忙しい方もいます。また、向上心の高さや謙遜もあると思うのですが、ひとり情シスの73.4%は自身のスキルを未熟だと感じています。そのため、未知の問題には都度調べたり勉強したりしながら対応していく必要があります。
しかし、自身のスキルや経験だけではどうにもならない部分もあります。それは、所属する会社による違いです。少し前になりますが、2015年ごろに「ブルー・オーシャン戦略」という経営学の書籍が世界的なベストセラーになりました。ブルーオーシャンとは、まだ競合が少なく、手つかずの市場が広がっている状態を指します。顧客にとって新しい価値を従来の製品やサービスに付加すること、すなわち「バリューイノベーション」を起こすことで、青い海にこぎ出そうというメッセージを発信していました。
日本の中堅中小企業の中には、売り上げが20億円以上でかつ営業利益率が30%を超える超優良企業があります。実際にそうした企業を訪問したことがあります。その企業は、特定分野で世界のトップシェアを誇り、持続的な技術革新を続けています。機能的で清潔感もあるオフィスからは、創業精神を大切にした企業文化が培われていると感じられました。言わずもがな、IT活用やデジタル化についても計画的に進められていて、ひとり情シスの環境も充実していました。
一方でレッドオーシャンとは、文字通り血で血を洗う「真っ赤な海」のような激しい競合関係の市場にある状態を意味します。競合企業との苛烈な価格競争があったり、異業種からの突然の参入で破壊的な市場変化が起きたり、そもそも市場規模が横ばいや先細りだったりする厳しい状況です。そうしたレッドオーシャンに身を置く企業では全社的にストレスがかかっていることは容易に想像ができます。
そんなレッドオーシャン企業の情シスにはスピーディーな働き方が求められます。出社すると次から次へと難題が発生するからです。「客先で見積りの原価を確認できるようにしてほしい」「利益計画について社内のデータでさまざまな分析を行って製品単位や顧客単位の損益分岐点を大至急知りたい」「緊急のプロジェクトでPCが必要なのですぐに準備してほしい」「当初予定していなかった利益が出そうなのでサーバーやストレージなどを急いで購入してほしい」などといった具合です。
また、市場競争力が低いということは、購買者の影響力が強い状態ですので、営業職や技術職は顧客から厳しい要求を常に突き付けられます。そのストレスを発散させるつもりはないのでしょうが、文句の言いやすいIT担当者に当たりがきつくなることも多いです。とても理不尽な話ですので、このような環境に耐えられない方も多いです。
転職をするならブルーオーシャン企業が望ましいかもしれません。しかし、そうした企業が情シスを募集すると何百人も応募があり、非常に狭き門となっています。とはいえ、ブルーオーシャン企業でなくても、企業の財務状況や期待される役割範囲、スピード感などを調べたり確かめたりすることは重要です。
また、レッドオーシャン企業が現有の技術や営業力では激しい競争関係にあるということは、デジタル活用によって他社に先んじる可能性が十分にあるということを意味しています。当初は無秩序なIT資産の数々や仕様書のないシステムなどによって混沌とした状態になっていることも少なくありません。しかし、情シス担当者の奮闘によって徐々に整備され、デジタル面で競争力を持つ企業に変貌する可能性を秘めています。実際のところ、これを体現したひとり情シスの方も多いです。
「ブルーオーシャン戦略」はレッドオーシャン企業がブルーオーシャン企業に変貌していくためのハウツー本ですが、そのための手段としてITやデジタルなどのテクノロジーが必要であるとは記述されていません。むしろ、テクノロジーは決め手ではないと断言しています。
あくまでもITは補足的なものであり、目的ではないと戒めています。今、活躍しているひとり情シスにもレッドオーシャン企業の出身者が多いです。ビジネスの本質とITの効用について何度も考えたことが経験になっているようです。