第2回:DXを実現するECプラットフォームの要件とは

今回は「第2回:DXを実現するECプラットフォームの要件とは」についてご紹介します。

関連ワード (ECから始めるDX、マーケティング等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 前回は電子商取引(EC)を取り巻く現状から、ECを起点としたデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みが不可欠という話をした。第2回では、国内企業のDX化の現実を見据えつつ、DX化がなかなか進まない原因について見ていきたい。そしてDXの阻害要因を理解した上で、DXを実現するECプラットフォームに欠かせない要件について解説する。

 第1回は、ECに対する需要の高さや環境変化を中心にEC刷新を見てきたが、第2回ではDXの観点からEC刷新のポイントを深掘りしていこう。

 DXを実現するには次の3つのステップが必要だといわれている。

 第1段階は、アナログで回っていた作業をデジタル化する「デジタイゼーション」。紙書類を電子化したり、会議や商談をオンラインに移行したりするなど、業務そのものではなく周辺の作業をデジタルに置き換えていく取り組みだ。

 第2段階は業務フローをデジタル化する「デジタライゼーション」だ。ワークフロー全体をデジタルに移行することで、定型業務であればロボティックプロセスオートメーション(RPA)を導入して自動化を進めたり、業務システムとデータを活用した高度な営業活動を展開したりするなど、デジタイゼーションから一歩進んで業務そのものを変革していく取り組みといえる。

 例えば、デジタイゼーションで契約書など紙文書のデジタル化を進めた後、実際の契約プロセスでは電子署名を活用して契約を締結、その後の契約書の保管まで一連のフローをデジタル化することで、効率性・生産性を高めるといった施策がある。また営業・マーケティング活動も、マーケティングオートメーション(MA)を活用して見込み顧客とコミュニケーションを取り、その反応をデータで把握しながらニーズが成熟したタイミングで適切な営業活動をかけるなど、ツールとデータを活用しながら効果的な活動を展開していく取り組みを意味する。

 そして最後の第3段階がDXだ。これはトランスフォーメーションという言葉に表れている通り、デジタル基盤で変化や変革を起こすことに当たる。ワークフローをデジタル化するだけでなく、その過程で収集したさまざまなデータを全社的なデジタル基盤に集約して新たなサービスや商品、ビジネスを生み出したり、それまでとは異なる新しい市場を切り開いたりすることを指す。

 コロナ禍を機に、日本企業もDXに向けて取り組み始める企業が増えた。しかし多くの事例は「デジタイゼーションないしはデジタライゼーション」との評価で、本当にDXに向けて取り組んでいる企業はわずかだと言われている。

 なぜDXが進まないのか。それはDXの前提に「既存のものを壊す」という概念が入っていることが大きい。既存のものがあっても壊して新しく始めた方が膨大なメリットがあるからだが、多くの日本企業には継承というカルチャーがある。システムにしても事業にしても、既存のものがあるのならば、それを壊して新たに組み立てるのではなく、「追加」や「バージョンアップ」で対応しようとする。そのため、得られるメリットをなかなか享受できないという状態が続いている。

 ここでもう1つ、DXに必要かつ不可欠な要素として、「変化し続けるための柔軟性」を挙げたい。ここで言う柔軟性には2つの意味がある。1つは、DXを実現するIT基盤そのものの柔軟性だ。なぜならDXは構築して終わりではなく、常に変化し続けるものなのだからだ。その変化に応じ、アジャイル(俊敏)に対応できる柔軟なIT基盤が求められる。

 もう1つは「変化を受け入れる」という柔軟な考え方や組織のカルチャーだ。いま起こっているECの変化を考えると、BtoB(法人市場)にしろBtoC(個人市場)にしろDXへ取り組まざるを得なくなる。実際にそれを理解している企業は、既にDXに向けてECの整備を進めている。

 将来のDXを見越した取り組みを進めている企業の1つにカシオ計算機(以下カシオ)がある。もともとは機械式計算機や電卓を提供していたメーカーだったが、現在は時計や電子辞書、電子楽器など数多くの製品を開発・提供している。

 そんなカシオ製品の中でも特に人気を集めているのが、高い耐衝撃性能を備えた腕時計ブランド「G-SHOCK」だ。このG-SHOCKを多くのユーザーにより楽しんで使ってもらい、ファンになってもらうために2021年10月にスタートしたのが、自分好みにG-SHOCKをカスタマイズできるウェブサービス「MY G-SHOCK」だ。

 普通の量販店やECサイトだとカスタマイズできないが、MY G-SHOCKではバンドやベゼル(腕時計の文字盤外周部分)などのパーツを自由に選ぶことができ、最大で約4億8000万通りの組み合わせから自分だけのモデルを制作・購入することができるという。

 このMY G-SHOCKについて、カシオでは「不安定な時代だからこそ、消費者に寄り添い新たな付加価値提供につなげていくプラットフォーム」と考えている。単に商品を販売して終わりではなく、唯一無二のG-SHOCKを選ぶ楽しさや、自分がカスタマイズした時計が3次元(3D)で画面に表示される時の期待感、そして実際に商品が届いて使う時の高揚感を提供し、その体験をデータとして収集してさらに顧客体験の改善を進めることで、より付加価値を高める新しい試みだ。つまりECは、モノを売る場ではなく、新たな付加価値創造のプラットフォームとして機能しているわけだ。

 その付加価値を実現するには、カスタマイズに合わせて商品の3D画像をレンダリングするコンテンツの制作・配信機能が必要であり、顧客体験を管理して最適化する仕組みも備えていなければならず、もちろん商品を販売・決済する機能は必須となり、膨大な画像コンテンツを適切に管理しなければならない。こうなると、単にEC構築パッケージを並べて備えている機能をマルバツで比較評価するだけのEC刷新プロジェクトとは全く内容が異なってくる。

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