【コラム】完全自律運転車の航続距離を伸ばす鍵は「光」だ
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本記事は、TechCrunch様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
編集部注:本稿の著者Nick Harris(ニック・ハリス)氏は、科学者でエンジニア、そしてフォトニックプロセッサーを製造するLightmatterの創業者兼CEO。
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先進運転支援システム(ADAS)は計り知れない可能性を秘めたテクノロジーだ。ニュースの見出しを見ていると、自律運転車の将来は暗いのではないかと時折思うことがある。自律運転車に関する事故、規制、企業の過大な評価額が過大評価されているという意見るためだ。これらはどれもそれなりの根拠に基づく報道なのだが、自律運転車の世界が持つ驚くべき可能性を見えにくくしている。
自律運転車のメリットの1つが環境負荷の軽減であることは一般的に認められている。なぜなら、自律運転車のほとんどは電気自動車でもあるからだ。
業界アナリストによるレポートでは、2023年までに730万台(市場全体の7%)が自律運転機能を搭載するため、15億ドル(約1649億円)相当の自律運転専用プロセッサーが必要になると試算されている。さらに、2030年までに自動車販売台数の50%が米国家道路交通安全局(NHTSA)によって定義されたSAEレベル3またはそれ以上の自律運転機能を備えるようになった場合、必要とされる自律運転専用プロセッサーは140億ドル(約1兆5390億円)相当まで増加する見通しだという。
自律運転電気自動車(AEV)が消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。
光チップの方が高速でエネルギー効率も高いため、SAEレベル3に達するのに必要なプロセッサーの数は少なくなる。しかし、光チップによるコンピューティング性能の向上がSAEレベル5の完全自律運転車の開発と実用化を加速させるだろう。そうなれば、2030年までに自律運転用の光チップの市場規模は、現在予測されている140億ドル(約1兆5390億円)をはるかに上回る可能性がある。
AEVは非常に幅広い用途で使用できる可能性がある。例えば、大都市でのタクシーサービスやその他のサービス、高速道路専用のクリーンな輸送車両などだ。このテクノロジーが、環境にすばやく大きな影響を及ぼし得ることを、我々は目にし始めている。実際に、このテクノロジーは今、人口密度も汚染度も非常に高い一部の都市で大気汚染の軽減に寄与している。
問題は、AEVが現在、サステナビリティ面での課題に直面しているということだ。
AEVが効率よく安全に走行するには、気が遠くなるような数のセンサーを駆使する必要がある。カメラ、LiDAR、超音波センサーなどはその一部にすぎない。それらのセンサーが連携して作動し、データを集めて、リアルタイムで検知、反応、予測することにより、いわば自動車の「目」になるのだ。
効果的かつ安全な自律運転に必要なセンサーの具体的な数についてはさまざまな意見があるが「自律運転車は膨大な量のデータを生成する」ということに異議を唱える者はいない。
それらのセンサーによって生成されたデータに対して反応するには、それがたとえシンプルな反応だとしても、多大なコンピューティング能力が必要とされるし、いうまでもなくセンサー本体を動かすためにもバッテリー電力が必要だ。さらに、データの処理と分析には、カーボンフットフリントがけた外れに大きいことで知られる深層学習アルゴリズムが使われる。
AEVがエネルギー効率の面でも経済的な面でも実現可能な代替輸送手段となるには、ガソリン車と同レベルの航続距離を実現する必要がある。しかし、AEVが走行中に使用するセンサーやアルゴリズムの数が増えれば増えるほど、バッテリーの持続時間、つまり航続距離は短くなる。
米エネルギー省によると、現在、電気自動車が充電なしで走れるのは300マイル(約483キロメートル)がやっとだ。一方、燃焼機関を搭載した従来型の自動車は、燃料タンクを1度満タンにすれば412マイル(約663キロメートル)走行できる。このうえ自律運転をするとなれば、航続距離の差はさらに広がり、バッテリーの劣化が加速する可能性もある。
Nature Energy(ネイチャー・エナジー)誌に最近掲載された論文によると、AEVの航続距離は都市部の走行時で10~15%短くなるという。
2019年にTeslaが開催したイベント「Tesla Autonomy Day」では、都市部の走行中にテスラの運転支援システムが作動すると航続距離が最大で25%短くなることが明らかになった。つまり、電気自動車の一般的な航続距離が300マイル(約483キロメートル)ではなく225マイル(約362キロメートル)になるということだ。これでは消費者が魅力を感じる航続距離に達しない。
第一原理解析を行うともっと詳しく理解できる。NVIDIA(エヌビディア)のロボタクシー向けAIコンピューティングソリューションであるDRIVEの消費電力量は800ワット、テスラのModel 3のエネルギー消費率は100キロメートルあたり11.9キロワットである。大抵の都市部で制限速度とされる時速50キロメートルで走行した場合、Model 3が消費するエネルギーは約6キロワットだ。つまり、AIコンピューティングだけで、自動車の走行に使われる総バッテリー電力の約13%を消費していることになる。
この例は、AEVに搭載されるコンピューティングエンジンを動かすには多大のエネルギーが必要であり、そのことが、バッテリー持続時間、航続距離、消費者に受け入れられるかどうか、という点を左右する非常に大きな問題になっていることを示している。
この問題は、現在の先進AIアルゴリズムに使われる電力大量消費型の現世代コンピューターチップを冷却するためにも電力が必要であるという事実によってさらに複雑化する。大量のAIワークロードを処理すると、半導体チップアーキテクチャは大量の熱を発生させるからだ。
このようなチップでAIワークロードを処理すると熱が発生し、その熱によってチップの温度が上がると、チップのパフォーマンスが下がる。そうすると、その熱を冷やすためにヒートシンク、ファン、その他の冷却機能が作動する頻度が増えて、そこでエネルギーが浪費され、バッテリー残量は減り、結果的に電気自動車の航続距離は短くなる。自律運転車の業界は進化を続けているが、AIコンピューティング用のチップが発する熱に関するこの問題を解決する新たなソリューションが緊急に必要とされている。
何十年もの間、我々はムーアの法則と、そこまで有名ではないスケーリング則であるデナード則を頼りに、フットプリント(専有面積)あたりのコンピューティング能力を毎年向上させてきた。現在、電子コンピューターのワットあたりの性能を大幅に向上させることはもう無理だということは広く知られており、世界中のデータセンターがオーバーヒートしている。
コンピューティング性能をもっとも大幅に向上させるには、チップのアーキテクチャから見直す必要がある。具体的には、特定のアプリケーションに特化してチップをカスタマイズする必要がある。しかし、アーキテクチャ面でのブレイクスルーは1回限りの手品のようなもので、コンピューティングの歴史においてブレイクスルーがいつ達成されるのかを予測するのはまったく不可能だ。
現在、AIアルゴリズムのトレーニングと、その結果として作られるモデルに基づく推論に必要とされるコンピューティング能力は、ムーアの法則下における増加率の5倍という指数関数的な速度で増加している。その結果、大きな経済的メリットがもたらされる程度までAEVを普及させるために必要なコンピューティング能力と、現在のコンピューティング能力との間に、巨大な差が生まれている。
AEVは、バッテリー航続距離と自律運転に必要なリアルタイムのコンピューティング能力とを両立させる点で苦戦を強いられている。
AEVが消費者を満足させる航続距離、安全性、パフォーマンスを提供して期待に完全に応えるには、コンピューティングとバッテリーに関するテクノロジーを根本から革新することが必要かもしれない。量子コンピューターが近い将来に、あるいは中期的にでも、AEVが抱えるこの難題の解決策になるとは考えにくい。しかし、今すぐブレイクスルーを達成できる、もっと現実的な別の解決策がある。それは、光コンピューティングだ。
光コンピューティングでは、電気信号の代わりにレーザー光を使ってデータの計算と伝送を行う。その結果、電力消費量は劇的に減り、クロック速度やレイテンシーなどの重要な処理能力パラメータは向上する。
さらに、光コンピューティングでは、多数のセンサーからのインプットを同時に1つのプロセッサーコアで処理して推論タスクを実行できる(各インプットには一意の色によって記号化されている)。一方、従来のプロセッサーは一度に1つのタスクしか処理できない。
ハイブリッド型の光半導体が従来の半導体アーキテクチャと比べて優れている点は、光そのものが持つ特異な性質にある。各データインプットは異なる波長、つまり「色」でコード化され、同じ神経回路網モデルを通る。つまり光プロセッサーは電子プロセッサーに比べてスループットが高いだけでなく、エネルギー効率も大幅に良いということだ。
光コンピューティングは、極めて高いスループットを低いレイテンシーと比較的少ない電力消費量で実現することが求められる応用分野で力を発揮する。例えば、クラウドコンピューティングだ。将来的には自律運転で応用できる可能性もある。自律運転では、膨大な量のデータをリアルタイムで処理することが求められるからだ。
光コンピューティングは現在、商用化の一歩手前まで来ており、自律運転に関する今後の見通しをさらに有望なものに変え、同時にカーボンフットプリントを減らす可能性を秘めている。自律運転車のメリットがますます注目を集めており、消費者が間もなく自律運転車を求めるようになるのは明らかだ。
そのため、自律運転によって変容する業界や路上における安全性について検討するだけでなく、自律運転が環境面でサステナビリティを確実に実現できるように取り組む必要がある。つまり、今こそAEVに「光を当てる」べきだ。
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画像クレジット:5m3photos / Getty Images
【原文】
Advanced driver assistance systems (ADAS) hold immense promise. At times, the headlines about the autonomous vehicle (AV) industry seem ominous, with a focus on accidents, regulation or company valuations that some find undeserving. None of this is unreasonable, but it makes the amazing possibilities of a world of AVs seem opaque.
One of the universally accepted upsides of AVs is the potential positive impact on the environment, as most AVs will also be electric vehicles (EVs).
Industry analyst reports project that by 2023, 7.3 million vehicles (7% of the total market) will have autonomous driving capabilities requiring $1.5 billion of autonomous-driving-dedicated processors. This is expected to grow to $14 billion in 2030, when upward of 50% of all vehicles sold will be classified as SAE Level 3 or higher, as defined by the National Highway Traffic Safety Administration (NHTSA).
Fundamental innovation in computing and battery technology may be required to fully deliver on the promise of AEVs with the range, safety and performance demanded by consumers.
While photonic chips are faster and more energy efficient, fewer chips will be needed to reach SAE Level 3; however, we can expect this increased compute performance to accelerate the development and availability of fully SAE Level 5 autonomous vehicles. In that case, the market for autonomous driving photonic processors will likely far surpass the projection of $14 billion by 2030.
When you consider all of the broad-based potential uses of autonomous electric vehicles (AEVs) — including taxis and service vehicles in major cities, or the clean transport of goods on our highways — we begin to see how this technology can rapidly begin to significantly impact our environment: by helping to bring clean air to some of the most populated and polluted cities.
The problem is that AEVs currently have a sustainability problem.
To operate efficiently and safely, AEVs must leverage a dizzying array of sensors: cameras, lidar, radar and ultrasonic sensors, to name just a few. These work together, gathering data to detect, react and predict in real time, essentially becoming the “eyes” for the vehicle.
While there’s some debate surrounding the specific numbers of sensors required to ensure effective and safe AV, one thing is unanimously agreed upon: These cars will create massive amounts of data.
Reacting to the data generated by these sensors, even in a simplistic way, requires tremendous computational power — not to mention the battery power required to operate the sensors themselves. Processing and analyzing the data involves deep learning algorithms, a branch of AI notorious for its outsized carbon footprint.
To be a viable alternative, both in energy efficiency and economics, AEVs need to get close to matching gas-powered vehicles in range. However, the more sensors and algorithms an AEV has running over the course of a journey, the lower the battery range — and the driving range — of the vehicle.
Today, EVs are barely capable of reaching 300 miles before they need to be recharged, while a traditional combustion engine averages 412 miles on a single tank of gas, according to the U.S. Department of Energy. Adding autonomous driving into the mix widens this gap even further and potentially accelerates battery degradation.
Recent work published in the journal Nature Energy claims that the range of an automated electric vehicle is reduced by 10%-15% during city driving.
At the 2019 Tesla Autonomy Day event, it was revealed that driving range could be reduced by up to 25% when Tesla’s driver-assist system is enabled during city driving. This reduces the typical range for EVs from 300 miles to 225 — crossing a perceived threshold of attractiveness for consumers.
A first-principle analysis takes this a step further. NVIDIA’s AI compute solution for robotaxis, DRIVE, has a power consumption of 800 watts, while a Tesla Model 3 has an energy consumption rate of about 11.9 kWh/100 km. At the typical city speed limit of 50 km/hour (about 30 mph), the Model 3 is consuming approximately 6 kW — meaning power solely dedicated to AI compute is consuming approximately 13% of total battery power intended for driving.
This illustrates how the power-hungry compute engines used for automated EVs pose a significant problem for battery life, vehicle range and consumer adoption.
This problem is further compounded by the power overhead associated with cooling the current generation of the power-hungry computer chips that are currently used for advanced AI algorithms. When processing heavy AI workloads, these semiconductor chip architectures generate massive amounts of heat.
As these chips process AI workloads, they generate heat, which increases their temperature and, as a consequence, performance declines. More effort is then needed and energy wasted on heat sinks, fans and other cooling methods to dissipate this heat, further reducing battery power and ultimately EV range. As the AV industry continues to evolve, new solutions to eliminate this AI compute chip heat problem are urgently needed.
The chip architecture problem
For decades, we have relied on Moore’s law, and its lesser-known cousin Dennard scaling, to deliver more compute power per footprint repeatedly year after year. Today, it’s well known that electronic computers are no longer significantly improving in performance per watt, resulting in overheating data centers all over the world.
The largest gains to be had in computing are at the chip architecture level, specifically in custom chips, each for specific applications. However, architectural breakthroughs are a one-off trick — they can only be made at singular points in time in computing history.
Currently, the compute power required to train artificial intelligence algorithms and perform inference with the resulting models is growing exponentially — five times faster than the rate of progress under Moore’s law. One consequence of that is a huge gap between the amount of computing needed to deliver on the massive economic promise of autonomous vehicles and the current state of computing.
Autonomous EVs find themselves in a tug of war between maintaining battery range and the real-time compute power required to deliver autonomy.
Photonic computers give AEVs a more sustainable future
Fundamental innovation in computing and battery technology may be required to fully deliver on the promise of AEVs with the range, safety and performance demanded by consumers. While quantum computers are an unlikely short- or even medium-term solution to this AEV conundrum, there’s another, more available solution making a breakthrough right now: photonic computing.
Photonic computers use laser light, instead of electrical signals, to compute and transport data. This results in a dramatic reduction in power consumption and an improvement in critical, performance-related processor parameters, including clock speed and latency.
Photonic computers also enable inputs from a multitude of sensors to run inference tasks concurrently on a single processor core (each input encoded in a unique color), while a traditional processor can only accommodate one job at a time.
The advantage that hybrid photonic semiconductors have over conventional architectures lies within the special properties of light itself. Each data input is encoded in a different wavelength, i.e., color, while each runs on the same neural network model. This means that photonic processors not only produce more throughput compared to their electronic counterparts, but are significantly more energy efficient.
Photonic computers excel in applications that require extreme throughput with low latency and relatively low power consumption — applications like cloud computing and, potentially, autonomous driving, where the real-time processing of vast amounts of data is required.
Photonic computing technology is on the brink of becoming commercially available and has the potential to supercharge the current roadmap of autonomous driving while also reducing its carbon footprint. It’s clear that interest in the benefits of self-driving vehicles is increasing and consumer demand is imminent.
So it is crucial for us to not only consider the industries it will transform and the safety it can bring to our roads, but also ensure the sustainability of its impact on our planet. In other words, it’s time to shine a little light on autonomous EVs.
(文:Nick Harris、翻訳:Dragonfly)
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