サッポロビールと日本IBM、商品開発を支援する新システム–原料検討時間を約75%削減
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サッポロビールと日本IBMは、人工知能(AI)を活用した商品開発のシステム「N-Wing★(ニュー・ウィング・スター)」をサッポロビールの開発システムとして本格実装させる。日本IBMが11月28日に発表した。N-Wing★はReady to Drink(RTD:栓を開けてそのまま飲める低アルコール飲料)を対象としており、サッポロビールは同システムを活用して2023年夏以降にRTD基軸ブランドで新商品の開発を目指すという。
これまでサッポロビールのRTD新商品開発では、サプライヤーから得た原料情報を基に過去のレシピなどを参照し、長年経験している開発者から情報収集するなど、試行錯誤して取り組んでいた。
N-Wing★は2021年11月にテスト運用を開始し、本格実装に向けて協議・検証を続けてきた。同システムは、これまで商品化された約170商品で検討された約1200種の配合や約700種の原料情報を含むレシピを学習している。これにより、新商品のコンセプトや必要な情報を入力すると、目標とする配合の骨格を基に原料の組み合わせや配合量を予測し、推奨する配合と香料で構成されるレシピを瞬時に出力する。
開発担当者は、出力されたレシピを参考に必要な原料を調達し、試作品の開発を行う。レシピは、AIアルゴリズムにより人間では思い浮かばないような配合が創出されることもあり、今後も新しい原料/開発情報を繰り返し学習させることでレシピ配合の予測精度向上が期待される。
また、これまで初回の商品開発にかかる総時間のうち、原料や配合の検討に多くの時間を要していたが、N-Wing★をテスト運用した結果、従来と比較して原料検討時間は約75%、配合検討時間は約50%削減できると分かった。試作時の手直し時間も約50%削減し、商品開発にかかる総時間は約半分になると見込まれる。開発担当者は、捻出された時間を新規原料・技術情報の探索や試験開発など新たな活動に用いて、市場創造型の新商品開発に取り組めるとしている。
商品開発においては、過去の配合/原料データなどの知見が属人化され、開発者の長年の経験による熟練技術を伝承することが課題となっていたが、N-Wing★に過去の実験データやレシピなどの匠(たくみ)の知見を集約・一元化することで、開発者が誰でも推奨香料と配合、過去の使用事例や原料関連情報などを効率良く検索・活用できるようになった。
日本IBMでは今回、さまざまな企業の商品開発のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援してきたデータサイエンティストやコンサルタントが、N-Wing★の施策策定、データ活用/分析のロジック、アルゴリズムの作成、AI予測エンジンの開発を担った。同社は今後もサッポロビールと共に、レシピの精度向上や技術伝承、業務の効率化による商品開発のDXを推進する。
同システムについて、日本IBMは「AIを通して迅速に過去情報を活用し、最新の原料や技術の活用については人間が探求・挑戦していく『人間とAIが協調した開発スタイル』の仕組みが構築され、研究開発部門でのDXの推進が期待される」と説明する。
サッポログループは、2023年に開始される中期経営計画の基本方針に「Beyond150~事業構造の転換と新たな成長へ」を掲げており、事業戦略、財務戦略、サステナビリティーを支える経営基盤を強化する重点施策の一つとして「DX・IT戦略の推進体制構築」に取り組むとしている。