教育現場で進むデジタルツールとデータの活用–マイクロソフトが説明
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日本マイクロソフトは12月12日、文部科学省が2019年に打ち出した「GIGAスクール構想」から数年が経過したことを踏まえて説明会を開き、教育データの活用が顕著な自治体の事例や、「Microsoft 365 Education」の機能などを紹介した。企業の活動データと同様に教育データも慎重な扱いを求められるが、「当社のスタンスは顧客のデータを預かっているが所有権は顧客自身」(執行役員 パブリックセクター事業本部 文教営業統括本部長の中井陽子氏)との姿勢を強調した。
GIGAスクール構想は、1人1台のデバイスを用意し、柔軟なICT教育の実現を目指す取り組みだが、文部科学省が211月に公表したデータによれば、利用率は自治体によってばらつきがある。例えば、都道府県別の小学校で見ると、デバイスをほぼ毎日使用する割合は全国平均で55.4%だが、岩手県は22.7%、島根県は30.1%と、平均を大きく下回る。一方で、山口県は78.3%、東京都は73.5%とデバイスの授業利用率が高い。
各自治体で大きな差が生じる理由について日本マイクロソフトの中井氏は、「(現場の)教員だけが頑張るのではなく、校長や教育委員会(など上位担当者および組織)がICT活用の推進に積極的。教員の負担軽減や評価する仕組みを用意している」と、ある種の温度差が生じている状況を説明した。
それでもICT教育に積極的な自治体は多い。岐阜市は、生徒に配布した「iPad」と教員用の「Windows」のPCを「Microsoft Teams」でつなぎ、コロナ禍を経てオンライン授業を定着化させた。富山県高岡市は、「Microsoft OneNote」に課題の録音データや画像ファイルを貼り付け、共有したページに担任がコメントやデジタルペンで応答して、教員たちは「生徒たちのやる気向上を実感している」(中井氏)との感想を同社に寄せている。
さいたま市立大成中学校は、教員と生徒間で日々の課題提示や提出にMicrosoft Teamsを使用しており、教員側では生徒の一覧ページから出欠確認と欠席記録を確認し、提出された課題の再表示や教員側の評価、生徒側の振り返り活動に用いているという。愛媛県の松山市立椿小学校もMicrosoft OneNoteを使用している。同級生が撮影した画像や動画をページ内に貼り付け、体育の授業を振り返り活動に利用中だ。生徒側は教員や家族からのコメントを付与して、「デジタルノートをeポートフォリオとして生かしている」(中井氏)という。
東京都立光明学園の特別支援学級では、生徒への情報伝達を全てMicrosoft Teams経由でしており、クラス内の意見共有にも利用中だ。椿小学校では、コミュニケーション活動に「Microsoft Viva」インサイトを用いており、教員から生徒もしくは生徒同士で、称賛の反応やコメントを付与し、コミュニケーションの醸成に取り組んでいる。
教育機関向けソリューションの「Microsoft 365 Education」は、Microsoft Teamsを用いたオンライン学習のログや、活動履歴を教育データとして自動収集する機能を標準で備えてきた。Microsoft Teamsのアプリケーションとして、「Education Insights」を追加すると、教員・生徒間の課題やファイル、生徒向けアプリケーションの「OneNote Class Notebook」データなどを収集し、生徒の参加率や状況の可視化のみならず、後述する「Reflect(リフレクト:気持ちの変化)」機能や、「Reading Progress(リーディングプログレス:音読の練習)」に利用する。
まずEducation Insightsは、教員が注目すべき活動をダッシュボードで確認する機能だ。生徒に出した課題の取り組み状況や音読の練習状況、生徒の気持ち、チャットの投稿数をドリルダウンで確認し、支援が必要な生徒をいち早く確認できる。Reflectでは、生徒が当日の気分をアンケートや絵文字を通じて回答し、教員はクラスの状況を把握する機能になる。
中井氏は、「Microsoft Teams内で教員・生徒間の感情的なつながりを醸成し、生徒の気持ちをいち早くキャッチできる」と、概要を説明した。Reading Progressは、日本語を含めた多言語対応の音読練習サービスで、この機能で録音した内容をクラウド上で自動採点し、生徒に返却される仕組みだ。教員が参照するダッシュボードは教員の指導を支援するため、生徒がつまずいた単語を抽出して表示する機能も用意する。いずれの機能もクラス単位では無償利用できるが、学校全体や教育委員会で使用する際は「Education Insights Premium」の契約が必要だ。
茨城県のつくば市教育委員会は、生徒一人一人の考え方を理解するため、教育データの利用に取り組んでいる。市内5校で「Microsoft Power BI」を用いて構築した教育ダッシュボードをテスト運用中だ。東京都渋谷区も生徒の幸福を目標に掲げつつ、学校の満足度向上に努めている。学校・クラス・生徒個人別のシートを用意し、クラス運用状況の可視化や教員指導の試案に活用中だ。日本マイクロソフトの担当者によれば、「教育データは生き物」であり、5~10年で作り直しが発生しない、必要最低限で運営できる基盤だと説明する。渋谷区の担当者がデータを必要に応じて抽出する内製化を強く意識しているとした。
日本マイクロソフトは、生徒の名簿や成績、教材の相互運用を行い、直近では「OneRoster 1.2 CSV」に対応した「School Data Sync」も以前から提供している。自治体や学校のアカウントをMicrosoft 365と同期して、生徒一人一人と関連情報をひも付け、学年単位や学校単位の学習データ分析を実現可能だが、前述したEducation Insights Premiumの契約が必要だ。
同社では、教育データを活用するパートナー企業を広く募集しており、現時点で36社が賛同しているとのこと。Microsoft 365とのシングルサインオンやMicrosoft Teamsで連携するパートナーは、22社27ソリューションを提供している。中井氏は、「蓄積した教育データを分析し、教育の可視化構築に努めている」と述べつつ、アバナードやエーティーエルシステムズ、ジール、内田洋行などが主要なパートナーだという。