通信の世界も女性が当たり前に活躍する未来に–エリクソンの挑戦

今回は「通信の世界も女性が当たり前に活躍する未来に–エリクソンの挑戦」についてご紹介します。

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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 Graham Bellによる実用的な電話の発明によって生まれた通信業界は、100年以上の歴史を持つ男性主体の伝統的な技術産業の一つだろう。近年は、世界中の企業が多様性や平等性、包摂性(Diversity, Equity, and Inclusion:DE&I)を重要な経営課題に位置づけ、企業としての可能性を広げようとしている。

 通信インフラ大手スウェーデンのEricssonは、DE&Iに取り組み、自社のみならず通信業界全体の変革を推進しているという。同社でシニアバイスプレジデント 最高マーケティングおよびコミュニケーション責任者(CMO/CCO)を務めるStella Medlicott氏に、DE&Iの取り組みと現状、目標などを尋ねた。

 まずMedlicott氏は、DE&IをEricsson全社で推進すべき重要なテーマに位置づけていると話す。その理由は、DE&Iによって多様な人材が自身の能力をいかんなく発揮できるようになり、チームとしてのパフォーマンスが大いに高まることが明確であるからだという。個々の力が高まり、それらが結集するチームとしての可能性が飛躍的に向上する――企業としてDE&Iに取り組むことは自明の理だ。

 ただ、上述したように通信業界は技術産業でもあることから、伝統的に男性が多く、女性の進出が遅れていた。Medlicott氏は、「DE&Iのプロジェクトを行う必要がない、真にだれもが活躍できる理想的な状態の実現を目指しているが、そのためには、まず通信業界で女性が当たり前のように働いている状態に近づけていく必要がある。通信を含むSTEM(Science:科学、Technology:技術、Engineering:工学、Engineering、Mathematics:数学)の領域は、高等教育の段階でも女性が少ないため、教育から女性が参加しやすい環境づくりに取り組んでいる」と話す。

 具体的な取り組みの1つが、「Connect To Learn」と呼ぶプログラムになる。ここでは、(1)デジタル教育環境へのユニバーサルアクセスの確保、(2)世界中へのデジタルスキルの提供――の2つを柱として、前者では、2021年からUNICEF(国際連合児童基金)およびITU(国際電気通信連合)による「Giga」プロジェクトに協力し、世界中の学校にデジタル環境へアクセスするための通信インフラを提供している。これは、Ericsson単独ではなく同社パートナーも参加し、エンドツーエンドでデジタル教育が受けられるようにする取り組みだという。

 後者では、アクセスを含むデジタル教育環境を通じて、世界中の若者や女性がSTEMの学びができる場を提供している。Medlicott氏によれば、世界で40万人がConnect To Learnの対象になっているという。日本でも11~16歳の若者を対象にした「Connect to Learn:デジタルラボ・プログラム」を実施しており、ロボットプログラミングのコースを提供している。KDDIと協力したボランティアの取り組みでもあり、STEM教育のリソース不足に悩む教育の現場も支援している。

 「未来を担う子供たちにプログラミングへの興味を持ってほしいと思い、ロボットやプログラミング、オートメーションなどを体験できるトレーニングを提供している。若者や女性には、ぜひ通信業界に興味を持っていただき、この業界に来ていただきたい」(Medlicott氏)

 こうした同社の取り組みは、通信業界にも波及しつつあるといい、通信事業者を含む多くの業界内の企業がDE&Iを重要テーマに位置づけるようになった。「欧州の企業でも最高経営責任者(CEO)から幹部クラスに至るまで女性を登用することが当たり前となってきている。GSM Associationの技術会合においても女性が積極的に基調講演を務めるようになり、当社の技術者も女性の割合が高まっている」(Medlicott氏)

 Medlicott氏は、「当社にはシニアの女性技術者も数多く在籍している。技術者は“裏方”としてなかなか表側に出る機会が少ないが、業界の変革に向けて、テクノロジーのリーダーとして活躍ぶりを広く示していきたいとも考えている」と述べる。

 Ericssonでは、2030年までに女性社員の比率を30%以上に高める目標を設定しているという。また、ラインマネージャーにおける女性の比率を2021年の21%から2024年には23%にする取り組みを幹部職に求め、成果を報酬面にも反映するインセンティブを設定した。「これは女性が当たり前のように働いている職場にしていく上で重要な施策の1つになっている」とMedlicott氏は話す。

 同社日本法人のエリクソン・ジャパンは、一般的に女性が少ないとされるエンジニアやプロジェクトマネジメント、セールスなどの部署では25%に達し、全社での女性比率は22%とのこと。真に女性が活用する職場となるために、まず女性社員の比率を高める取り組みが着実に進展している。

 女性社員の増加により、同社でのキャリアを支援するグローバルプログラムにも取り組む。女性特有の事情などを踏まえながら優秀な人材の活躍を推進するもので、2021年ではプログラムに参加した女性社員の71%が、参加後の1年以内に自身のキャリアに適したポジションに異動した。このうち3分の1以上は昇進を伴う異動だという。

 また、エリクソン・ジャパンでも女性の活躍を推進する「Ericsdotter」というコミュニティー活動を行っている。もともと30年ほど前にスウェーデンで始まった取り組みで、女性社員同士がお互いに経験や情報を共有しながらキャリアの成長やリーダーシップ、チームワーク、テクノロジーやビジネス、健康といったさまざまなテーマでより良く働いていくためのコミュニティーになっている。

 エリクソン・ジャパンでも技術や営業、サポートなどのさまざまな部門で女性が活躍している。新卒入社の6割が女性で、女性が活躍している企業として認知されている。

 Ericsson全体では、DE&Iに取り組む「Employee Resource Groups」が26あり、女性の活躍を含めた多様性ある職場づくりが推進されているとのこと。経営層とも密接にコミュニケーションを図りながら、その進展状況を全社的に把握して着実な歩みを進めているという。

 「通信業界としても真にDE&Iを実現していくためには、まず教育の段階から取り組みを開始し、目標を定めて規模を拡大する必要がある。規模が大きくなれば、その後は自然にDE&Iの環境が拡大していくと期待している。それがいつなのかというのは難しいが、DE&Iが当たり前になる日をこれからも目指したい」(Medlicott氏)

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