日立と山形県東根市、洪水の事前予測で避難・緊急活動への効果を実証
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日立製作所は12月19日、山形県東根市と共同で行ったリアルタイム洪水予測と避難・緊急活動へのシミュレーション技術活用について効果を確認したと発表した。同社は、今回活用したデジタル技術を総合治水対策ソリューションとして実用化し、自治体に広く展開することで大規模水害による被害軽減への貢献を目指すとしている。
この実証では、2020年7月に発生した「令和2年7月豪雨」による最上川流域の浸水被害を基に、日立パワーソリューションズのリアルタイム洪水シミュレーター「DioVISTA/Flood」で東根市周辺の浸水を予測し、その結果と実績を比較した。さらに、日立がプロトタイプとして開発した「避難・緊急活動支援システム」とDioVISTA/Floodのデータを連係させ、浸水による影響の確認や避難誘導計画を検討した。
東根市は山形県最上地方に位置し、令和2年7月豪雨では市内を流れる一級河川の堤防の一部が破堤して、一部地域が浸水するなどの洪水被害が発生した。災害発生時は現地が暗くなっており、水位計や気象台などの情報を基に避難指示などを準備していたところ、水位が急変して避難指示を急遽発出した。その後に最上川の水位が急上昇して支流へのバックウォーターが発生。人的被害はなかったが、堤防が破堤して住宅地や農地の浸水被害が発生した。この経験から、避難を呼びかけるタイミングと高度な情報入手の重要性を実感し、近隣市町との避難指示にも多少のタイムラグが発生して市民から苦情が寄せられるなど、浸水状況などの情報を広域から時系列に収集する必要性を痛感したという。
実証では具体的に、国土交通省東北地方整備局と山形県の最上川流域における河川データや水位データと、2020年7月27~31日の予測降雨データを用いて、DioVISTA/Floodで浸水の予測を再現した。その結果、約1.5日前の時点で東根市内における浸水の発生を予測でき、浸水発生の6時間前時点における予測浸水範囲が実際の浸水範囲(国土地理院が2020年7月29日午後8時に作成した最上川水系最上川の浸水推定図を用いた25メートルメッシュでの比較)の再現率97%、予想範囲において実際に浸水した範囲(適合率)は56%だった。さらに、実績の降雨データを与えた場合では再現率が97%、適合率は78%に向上したという。
またプロトタイプの避難・緊急活動支援システムは、河川の遠隔監視や各種の地図情報、DioVISTA/Floodのシミュレーションデータを連係させ、浸水の影響を受ける人口の推計や道路の通行規制箇所の予測、避難所情報などを画面上に表示して、避難・緊急活動を支援する。東根市でこのシステムを検証したところ、浸水予測や各種施設の情報を組み合わせて流域自治体関係者で共有することにより、災害対応行動の検討に有用となることを確認したという。
実証結果について東根市の総務部危機管理室は、「雨雲レーダーや雨量情報から河川の水位予想をシミュレーションで立てることができ、洪水発生を予測できることで、行政として避難指示などの避難情報を発出するためのトリガーの一つとなるという有効な結果だった。また地図情報と連係し、避難が必要な人数や通行規制箇所を予測できるなど、避難者支援に大きく寄与するものと思う」とコメントしている。