「ひとり情シス大学1日コース」開講報告(3)–製造業のひとり情シスがデジタル化を加速

今回は「「ひとり情シス大学1日コース」開講報告(3)–製造業のひとり情シスがデジタル化を加速」についてご紹介します。

関連ワード (「ひとり情シス」の本当のところ、運用管理等) についても参考にしながら、ぜひ本記事について議論していってくださいね。

本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。


 2022年11月22日に、大阪府工業協会とひとり情シス協会が共同で開催した「ひとり情シス大学1日コース」(第1回、第2回)は、工業会系の業界団体との共催ということもあり、必然的に製造業を対象にした講義になりました。

 経済産業省が発表した「平成24年経済センサス」によると、製造業は国内の全企業数の16.15%を占めます。ひとり情シスは全ての業種に存在しますが、「ひとり情シス実態調査」の回答者の3割は製造業に属しています。また現在活躍されているひとり情シスも製造業に多く、他業種よりも定着率が高い印象があります。厚生労働省が発表した「令和2年上半期雇用動向調査結果」によると、製造業の離職率は低く5.1%ですが、サービス業はその倍の11.0%と報告されています。製造業では社員全員で製品を生産しているという意識があるため、一体感が強いのかもしれません。

 今回の開講を決めたのは、製造業でのひとり情シスの成功事例が多くあることも決め手の一つになりました。国内生産額の30.8%を製造業が占めることからも、日本がものづくり大国であることは間違いありません。その製造業のデジタル化を支援したいという思いもありました。

 製造業にもITに不慣れな人は少なくありません。しかし、技術に関しては何か一言でも言わなければ気が済まない人も多くいます。講義では、そうした人たちには論理立てて説明したり、製造現場で目にする「なぜなぜ分析」なども交えたりしながら、共通言語で会話をする重要性が説かれました。また、時にはうるさいユーザーに厳しく対応する方法なども紹介され、会場は大いに盛り上がりました。講義後のアンケートにも「社内コミュニケーションの仕方が参考になった」という意見を多くいただきました。

 製造業のIT担当者は、CAD/CAM(Computer Aided Design/Computer Aided Manufacturing)から工場内にある工作機械のネットワーク構築まで守備範囲がとても広いです。また、最近では人手不足の対応策としてさまざまな自動化が検討されています。講義の最後には、「製造業の情シス担当者ならではの悩み」として、「RPA(ロボティクスプロセスオートメーション)の使いどころ」「AI(人工知能)技術の変化を知る」「IoT(モノのインターネット)の現実 – 言葉と幻想」などを説明しました。

 既に社内でAIの活用を始めている受講者も多く、デジタル化の加速が進んでいる実感を得ました。それを踏まえて、今や単なるバズワードに近くなっているデジタル変革(DX)の意味や実態について、現在地点を慎重に解説しました。講師が実際に取り組むDX事例や、DXの言葉の意味を社内に浸透させる方法には受講者の深いうなずきを多く見かけました。

 ITベンダーもビジネスなので仕方ないと言えますが、目に余る事例も少なくありません。5年ほど前には、高齢者向けにスマートフォンやPCのサポートサービスを過剰に押し売りする営業行為が問題になりました。不要なソフトウェアも含まれた端末の販売や必要のないサポートサービスの契約、そして解約時には高額な違約金が請求されるといったトラブルが起きました。現在でも、IT商材の販売では似たような事例が発生しています。2022年には、公正取引委員会が下請けへの買い叩きなどの法令違反が多発するIT業界に対し、監視を強める方針を打ち出しました。情報サービス業が45業種の内で最も悪質だと、中小企業庁と公正取引委員会が認定しているのです。

 中小企業のIT経験の低い担当者は、いわゆる情報弱者です。本来ならばいろいろと支援すべき存在ですが、ビジネスの世界なので無償での対応に限界があることは当然です。しかし、情報弱者の弱みに付け込み、不要なものを提案することは看過できません。引き継ぎがないまま丸投げされた新任の担当者がIT資産を調べてみると、未使用のものが大量にあったり、不明なソフトウェアの保守契約があったりすることも多く、どうしたらいいかという相談をよく受けます。

 これはいわゆる「抱き合わせ販売」の弊害です。そうした実態が白日の下にさらされると、いわれのない新任担当者が経営層から厳重注意を受けることもあるでしょう。そこで、PCの購入の仕方やノウハウ、さまざまな場面別の対応方法なども講義しました。

 ITベンダーとの付き合い方は慎重な判断が重要である一方で、少人数の情シス部門はITベンダーなしに業務が回らないことも事実です。中には、カスタマーハラスメントに近いレベルで、ITベンダーにさまざまな要求をしてしまうケースもあります。その結果、ITベンダーから取引中止を言い渡されることもあります。そのため、ITベンダーと良好な関係構築する方法も経験談を交えて説明しました。単に販売業者と捉えるのではなく、掛け替えのないパートナーとして、IT担当者もオープンマインドで歩み寄る姿勢が必要であるという話に、深くうなずく受講者の姿が見られました。

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