NECと慶應義塾、将来のCO2抑制量を金融商品化する「潜在カーボンクレジット」を共創

今回は「NECと慶應義塾、将来のCO2抑制量を金融商品化する「潜在カーボンクレジット」を共創」についてご紹介します。

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 NECと慶應義塾は2月6日、産学連携を通じたオープンイノベーションによる脱炭素社会の実現に向けて、防災・減災による将来の二酸化炭素(CO2)の抑制量を算出・可視化し、金融商品化(クレジット化)することで市場取引を実現する新たなアプローチとして「潜在カーボンクレジット」を共創し、社会実装に向けて推進していくと発表した。

 NEC 代表取締役 執行役員社長 兼 CEOの森田隆之氏は記者会見で、「気候変動対策は、温室効果ガスを減らす『緩和』と気候変動の影響に備える『適応』の両輪で進める必要がある。緩和の領域についてはCO2排出量削減に向けた取り組みが進みつつある一方で、適応の領域については世界的に議論の途上にあり取り組みのさらなる加速が必要」といい、適応をより一層進める上で、情報通信技術は大きな役割を果たすと強調した。

 昨今、地球温暖化により水害や森林火災をはじめとする自然災害が激甚化・頻発化し、自然環境と社会経済の両面で日本のみならず世界中に大きな影響を与えている。自然災害においては森林火災などの発生時のCO2排出だけでなく、津波や洪水などによる被災後のインフラ・建築物の再建などでも大量のCO2が排出されており、「災害による自然・インフラ・建築物の破壊と再建に伴うCO2排出量は全体の10%以上を占める」(森田氏)

 こうした中、再生可能エネルギーの導入や省エネルギー対策によって地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出を削減・抑制する緩和への対応だけでなく、気候変動の影響に備える適応への対応も脱炭素社会に向けた取り組みとして重要となっている。

 現在、炭素の含有量に応じて税金を課す炭素税や、国や企業ごとに定めた温室効果ガスの排出枠を取引する排出量取引制度が欧州をはじめ各国に広がりを見せる一方で、自然災害による将来のCO2排出を想定した抑制量に対するインセンティブの仕組みの検討が進んでおらず、企業や政府、自治体などによる防災・減災を目的とした先進技術の開発やインフラや建築物の整備・導入、それらを下支えする積極的なESG(環境・社会・企業統治)投資につながりにくい状況にある。

 「防災・減災領域でのイノベーションは一定の進展がある一方で、資金調達が進みにくいことが課題となっている。防災・減災の取り組みを社会実装し、持続可能なものとするためには、自治体や企業に資金が回る仕組みが必要だった」(森田氏)

 こうした中、NECと慶應義塾は、産学連携を通じたオープンイノベーションにより世界的な社会課題の解決に向けた共創活動を2021年から取り組む中で、「防災×カーボンニュートラル×工学」による新たなアプローチとして潜在カーボンクレジットの検討を進めてきた。

 潜在カーボンクレジットは、NECが取り組む「リアルタイム津波浸水・被害推定システム」や「インフラ監視技術」などの防災ソリューションの技術開発を通じて培ってきた実績・ノウハウと、慶應義塾の学術的知見と学際的な活動を組み合わせることで、「自然災害の被害発生率」や「被災による構造物の被害額」「防災ソリューションによる減災率」などから将来のCO2排出の抑制量を算出・可視化し、現在の価値として金融商品化することで資金循環を可能とする新たなアプローチになる。

 これにより、例えば、津波や洪水などの水害に対する防災ソリューションと、被災エリアの建造物の健全度などの情報を組み合わせてシミュレーションすることで、建造物の倒壊・再建の回避に伴う将来のCO2抑制量を可視化することが可能になるという。これらの算出・可視化したCO2抑制量に対して、インセンティブが働くようにファイナンスの仕組みで金融商品化する取り組みを進めていくことで、企業や政府、自治体などによる脱炭素に向けたESG投資と防災・減災対策を目的とした投資活性化を推進していく。

 NECと慶應義塾は今後、津波や洪水などの水害や、地震や森林火災などの自然災害への潜在カーボンクレジットの適用について検討を進めていくとともに、防災ソリューションの拡充やCO2抑制量の客観性・透明性を確保するための研究、カーボンクレジット市場取引のための金融商品化の整備などを加速するため、業種・分野の枠を超えた企業や大学、政府、自治体などのパートナーとともに2023年度のコンソーシアムの設立を目指す。

 同コンソーシアムにおいては、早期に実証活動が実施可能な体制を構築し、各地の自治体と共に将来のCO2抑制量の検証を進め、金融商品の開発を推進していくとしている。

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