ERP最大手のSAPに求めたい「ERPクラウド率推移の明示」
今回は「ERP最大手のSAPに求めたい「ERPクラウド率推移の明示」」についてご紹介します。
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本記事は、ZDNet Japan様で掲載されている内容を参考にしておりますので、より詳しく内容を知りたい方は、ページ下の元記事リンクより参照ください。
エンタープライズIT市場では今、デジタルトランスフォーメーション(DX)の重要な取り組みとして、既存の基幹システムの刷新が大きな課題となっている。中でも統合基幹業務システム(ERP)のクラウド化が注目されているが、その市場の実態がよく分からない。そこでERP最大手のSAPに求めたい。自社のビジネス動向を踏まえて「ERPクラウド率の推移」を示してもらえないか。
「クラウド事業は好調に推移している。2023年はさらなるクラウド化を実践する年にしたい」
SAPジャパン 代表取締役社長の鈴木洋史氏は、同社が先頃開いた事業戦略についての記者会見でこう明言した。「さらなるクラウド化」とは、とりわけSAPの主力分野であるERPを対象とした動きだ。日本企業はグローバル企業と比べてERPのクラウド移行が進んでいないともみられることから、鈴木氏は会見でその課題や対策について熱く語っていた(写真1)。
会見の内容については速報記事をご覧いただくとして、筆者が気になったのは、鈴木氏の話の根拠となる「日本企業のERPクラウド率」が分からないことだ。調査会社の結果などでは20~30%あたりの比率も見受けられるが、信ぴょう性がない。また、インパクトの大きさを考えると、特に大手企業を中心としたエンタープライズ市場の動きが知りたいところだ。
その点、SAPは周知の通り、多くのエンタープライズ企業にERPを提供しており、その最新版でクラウド化に対応した「S/4HANA Cloud」の普及度合いが同社のビジネスだけでなく、ERP市場全体のクラウド率を推し測る上で最も重要な指標となる。
SAPの日本でのERPクラウド率はどれくらいか。上記の思いも込めて会見の質疑応答で聞いてみたところ、鈴木氏は次のように答えた。
「その数字については明示できないが、クラウド移行への勢いは加速している。例えば、2022年に当社のERP(S/4HANA)を採用した新規案件の9割はクラウド版だった。また、SAP ERPの日本でのユーザー会が昨年11月、会員を対象にS/4HANA Cloudへの移行について調査した結果でも、「導入済み」「導入中」「導入予定」を合わせると9割になった。ただ、これらの内容は、現時点ではプライベートクラウド版の割合が高いが、2023年はパブリッククラウド版が全体の半分を占めるように推奨していきたい」
SAPグローバルでの情報開示に制約があるので、数字が明示されることはないと分かっていた。だが、2022年以降のクラウド移行についての話だけでは、日本で今、ERPクラウドがどれだけ普及しているのか、その推移はどんな動きなのか、そして、それはグローバルと比べてどうなのか、といった市場の現状について捉える手掛かりが掴めない。SAPとしてもこうした市場全体を捉えたメッセージを発信することができれば、「ERPクラウドカンパニー」として一層ステータスが上がるところなのだろうが。