レガシーからの脱却と尊重–トヨタが挑む、“北極星”を定めたデジタル化
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日本オラクルは4月14日、世界5都市で展開するイベントシリーズの一環として「Oracle CloudWorld Tour Tokyo」を都内ホテルで開催した。同シリーズは、2022年10月に米ラスベガスで開催した「Oracle CloudWorld 2022」で紹介された内容を軸に、Oracle全体の方向性を示している。
基調講演は「変化の激しい世界でビジネス成果を上げるために」と題し、日本オラクル 取締役 執行役 社長の三澤智光氏が顧客と対談するとともに、Oracle レベニュー・オペレーション担当 エグゼクティブ・バイスプレジデントのJason Maynard(ジェイソン・メイナード)氏がグローバルでの活動を解説した。本記事では、トヨタ自動車(トヨタ)におけるデジタル化への取り組みを紹介する。
トヨタの前取締役社長で現在は取締役会長を務める豊田章男氏は、2021年の労使協議会で初めて自社のデジタル化に言及。「この3年間で、世界のトップ企業と肩を並べるレベルまで一気に持っていきたい」と発言し、同社の取り組みが本格的に始まった。
三澤氏と対談した情報システム本部 IT変革担当CPL(チーフプロジェクトリーダー)の岡村達也氏は「コロナ禍に入って約1年。リモートワークや紙/ハンコ文化など、いろいろな課題がある中、何らかの発言があるとは聞いていたが、『世界のトップ』という発言には正直驚いた」と当時を振り返った。その際、豊田氏は「デジタル化で情報格差をなくし、自動車産業で働く約550万人の仲間が同じ方向を向いて仕事に打ち込める環境を整備したい」と宣言したという。
豊田氏は「デジタルネイティブの従業員の自由な発想で、社内のデジタル化をやらせてみよう」とアドバイスした。その頃トヨタは、社内のデジタル化を進める組織を編成しているところで、同氏の助言もあり「メンバーは社内公募。上司の承認も不要」とした。
「これで人が集まるのかと正直不安だったが、ふたを開けてみると150人以上の従業員が手を挙げてくれた。『会社を変えたい』というチャレンジ精神にあふれたメンバーが集まった」と岡村氏。一方、各ビジネス部署でも「DXリーダー」を任命してもらい、全社公募の「デジタル変革推進室」、DXリーダー、情報システム本部の三位一体でデジタル化を進める体制を構築した。
トヨタではデジタルネイティブを後押しする活動に加え、デジタル化になじめず困っている従業員への支援も行っている。例えば、他業務と掛け持ちしている非専任人材向けには「今さら聞けないTeams塾」を開催。「Microsoft Teams」の利用方法を基本から応用までハンズオンで教え、役員、部長、工場の課長クラスが参加しているという(図1)。そのほか、ローコードツール「Microsoft Power Apps」などを活用した市民開発に注力しているといい、「当社の強みはやはり現場。現場を一番知っている人々がソフトウェアを開発し、仕事の変化に合わせて自分たちで直していく。市民開発はわれわれの“改善文化”にも合っていると思う」と岡村氏は語った。
DXリーダーが各自の部署でデジタル化における課題を集めたところ、案件は1600件を超え、現在も追加されているという。トヨタには、生産ラインの無駄を徹底的に排除し、生産性を高める独自の方式「TPS(トヨタ生産方式)」がある。デジタル化への取り組みが始まる少し前から、同社は事務や技術の部署にもTPSの思想を取り込み、さまざまなプロセスを見直す活動を行っていた。TPS活動とデジタル化を同じタイミングで始めたことで、相乗効果が生まれているという。
これまでは研究開発(R&D)、製造、営業などの各部門がそれぞれの予算内でデジタル化を推進してきたが、こうした取り組みを加速すると予算の不足が予想される。そこで同社は予算を一元管理し、会社全体で優先順位を付ける形とした。「全てのプロジェクトを可視化することで、サイバーセキュリティリスクの抑止にもつながっていると思う」と岡村氏は述べた。